天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2006-05-01から1ヶ月間の記事一覧

挨拶句

「古志」六月号の長谷川主宰の句から。 雪国の花もよきころ山葵漬 *雪国、花と書かれると、雪と桜花とが同時にイメージされる。なんとも静かで豪華。だが、作者はその現場にはいない。どこにいるのか? 家にいてあの雪国で作られた山葵漬を食べているのだ。…

思想短歌?

角川「短歌」六月号で、「近藤芳美の歌に学ぶ」という特集が掲載されている。戦後の短歌界のリーダとして近藤は高く評価されているが、全く理解できなかった。いまだに敬遠したい歌人である。昔、「新しき短歌の規定」を読みかけたが、途中で投げ出してしま…

全歌集の読み方

先日購入した『岡井隆全歌集』をどう読むか考えている。全集付録の解題から入るのがよさそう。 解題とは、書物や作品の著作者、著作の由来・内容、出版の年月などについての解説である。 というわけで小池光が書いた『マニエリスムの旅』について読んだ。ま…

極楽寺坂

鎌倉七口と言われる切通しのひとつに極楽寺坂がある。この近辺は月影ヶ谷という美しい名前の谷戸であった。先に触れた冷泉為相と訴訟問題で鎌倉に下ってきた阿仏尼はここに滞在したらしい。 彼女の「十六夜日記」に、次の記載がある。 「 東にて住む所は、月…

走り梅雨

梅雨の先駈けを走り梅雨という。ポピーの花が盛りというので、久里浜の花の国公園に行く。電車の中で、『岡井隆全歌集』別冊・「岡井隆資料集成Ⅰ」の中の佐佐木幸綱の評論を読んだ。二十年くらい前のものであろうが、論旨明快で大変わかりやすい。短歌を作る…

量の威力

「短歌研究」六月号を拾い読みしていたら、量の面から偉い仕事をしている人がいることを知った。久保田淳著『藤原定家全歌集』上巻・下巻は、定家の『拾遺愚草』の「正編」「外編」「補遺編」に加えて、発見された歌を補い、合計四六0八首の全てに訳注を加…

現代歌言葉

本屋でためつすがめつした末、思い切って『岡井隆全歌集』思潮社、Ⅰ、Ⅱを買った。新品なので、定価どうり税込み一万五千七百五十円であった。インターネットで古本も見てみたが、全く安くなっていなかった。こうした全集を購入するのをためらうのは、筆者が…

切通し

鎌倉七口と言われる切通しがある。亀ヶ谷坂、朝比奈切通、巨福呂坂、化粧坂、大仏切通、名越切通、極楽寺坂 の七箇所である。切通とは、山の尾根部分を掘り下げて通行可能にすると同時に、敵の侵入に対する防御施設である。今日は、北鎌倉駅から亀ヶ谷坂、海…

映画版「ダ・ビンチ・コード」

今日は代替休暇をとった。雨もよいでもあり、平日なので映画館も空いているはず。20日に全世界同時封切になった映画「ダ・ビンチ・コード」を見に行く。映画と小説の違いは、小説では同時発生の出来事も順番に記述しなければならないが、映画では工夫によ…

新しい感覚

六月号の雑誌「歌壇」は特集=歌ことばを耕すーより深く豊かに が面白い。 特に吉川宏志の「ルビ・造語がひらく新しい感覚」に注目。ルビにせよ造語にせよ、要は常識的な規範に縛られるのではなく、効果がでれば積極的に使用すればよい、ということ。ただし…

稲村ヶ崎

太平記に現れる鎌倉の名場面のひとつに稲村ヶ崎がある。古くは見越崎と言った。新田義貞が黄金作りの太刀を龍神に捧げ、その助けで引潮に乗じてこの難所を廻り込み、鎌倉に攻め入って北條氏を滅ぼした伝説で有名。大正六年三月、鎌倉町青年会が建てた次の碑…

伊太利亜(3)

一晩考えて、18日の考察を少し丁寧に書き換えておいた。次に単語を同じ一行に入れ,句切れも整えた例を「2 空港までの彷徨」からあげる。 G 困難なたたかひの前の くつろぎの ロイズクリオロチョコの 一片 H これは かはいい わたしの 龍よ といふやうな …

伊太利亜(2)

意図が分かりやすく読みやすい構成例もある。「1 旅の前の落ち着かぬ時」から。 D 副腎腫瘍(Pheochromocytoma) をも発症せず 色情狂(Nymphomania) にもならず 老いゆく E 一国が潰されるのを 一国がよみがへるとも いふぞ たのしき F 手を深くポッケに容れて…

伊太利亜(1)

出張先のパソコンを借りて昼休みにブログに入力できたので,休みにしなくてすみそう。 先日,インターネット経由で買った岡井 隆の歌集『伊太利亜』を読み始めた。これは,2002年5月30日から6月9日まで,北イタリアの諸都市を,NHK学園の海外研修の旅に講師…

鎌倉宮

というわけで、今日はあらためて鎌倉の宝戒寺、北條高時の腹切りやぐら、鎌倉宮、護良親王墓などを訪ねた。鎌倉幕府の政治に不満を抱いていた皇族公家が、足利尊氏、新田義貞などの武力を利用して、政権を奪取したのが建武中興であった。だが、やはり天皇公…

太平記

五月の連休で奈良県吉野にいったのだが、動機は再び西行、義経、南朝などの跡を見たいと思ったからであった。南北朝の歴史については、あらかじめ『太平記』を読んでおくべきであったのだが、結局旅から帰って解説書を買った。松尾剛次著『太平記』(中公新…

老境の歌(4)

高松秀明さんの歌集『旅立ちて、今』より、老境というにふさわしい歌を挙げよう。 眼鏡などかけなくていい眼底は仏いだけるうす闇を持つ 紅葉に心さそはれここらあたり他界ならむと岩に胡坐す 障子はり紅葉一葉止めおくにその葉脈もかすむ眼となる 目つむれ…

ヨットハーバー

今日は少し晴れ間がのぞいた。けだるく眠たいので遠出はできない。江ノ島の児玉神社からヨットハーバーへ出て時間を費やす。ヨットハーバー周辺では、ハマナス、ハマヒルガオ、シャリンバイ、ノカンゾウなどの花を見た。 ハマナスは北国の海岸に生える野生の…

五月雨

このところ梅雨のような毎日である。菜種梅雨の時期は過ぎているので五月雨というべきか。テレビでどこだったかの藤が満開だというのを見て、小田原城に行った。樹齢約二百年の「御感の藤」があるからである。天守閣広場から報徳二宮神社を回り、南木戸口の…

老境の歌(3)

高松秀明『旅立ちて、今』(ながらみ書房)を読み終えた。今回は、惹かれるのだが、よく理解できない歌をあげる。 独り夜は始祖鳥と飲む黒麦酒 身を清むるといふにあらねど *「始祖鳥と飲む」が分らない原因である。始祖鳥は世界で七例 しか発見されていな…

任地からの便り

連休があったので忘れていたが、昼休みに靖国神社に行って五月の拝殿社頭掲示のパンフレットをもらってきた。明治四十年の明治天皇御製が初めに書かれている。 あさなあさな みおやの神に いのるかな わが国民を 守りたまへと 任地からの便りという表題であ…

横浜開港資料館

今日は久しぶりに横浜開港資料館に行った。中庭の玉楠の木に惹かれるのである。日米和親条約締結の場面を見ていた木の子供である。関東大震災で焼けてしまったが、根株から、今の木が芽吹いた。玉楠は、タブノキの老樹の木理が巻雲紋を呈するものをいう。「…

老境の歌(2)

高橋さんは、仏像に惹かれるらしい。歌集には、「円空仏巡礼」という章があって南から北へ寺々に円空仏を訪ねて歌を詠んでいる。個々の仏像の特徴を詠み込むことになるが、難しいのは、読者にとってリアリティが感じられないとか作り物の感じがする点にある…

老境の歌(1)

高松秀明という歌人の『旅立ちて、今』という歌集を頂いて読んでいる。八十歳を越えておられるようであるが、一時期「短歌人」の編集委員であったらしい。現在は、結社「木立」の代表とのこと。戦中に短歌入門、以来六十余年が過ぎた、少し長く生きすぎたよ…

青嵐

連休の旅行で疲れが出たか今日は小雨ながら風が強く、どこにも出歩く気になれない。ただ明日の湘南ライナーの切符を買いに藤沢駅まで行くついでに江ノ島まで足を伸ばした。青嵐は、青葉の茂るころに吹くやや強い風で、夏の季語になっている。まだ青葉とまで…

ダ・ビンチ・コード(続)

旅路の終わりの新幹線で『ダビンチ・コード』の中巻を読み終えた。いよいよクライマックスへきた。聖書の歴史を読み解く方法として、レオナルド・ダ・ビンチの絵画にこめられたメッセージがあることを知って驚いている。最後の晩餐に、はたまたモナリザの絵…

名古屋城

名古屋城は、徳川家康が慶長十四年(一六0九)に加藤清正、福島正則、前田利光など北国・西国の諸大名二十名に普請を命じて作らせた。天守閣や諸櫓などは慶長十七年(一六一二)にほぼ完成した。今日は連休さなかの晴天でもあり、えらい人出であった。 白鳥…

金閣寺

翌朝は金閣寺にゆく。庭園をぐるりと巡って終わりなのだが、ずいぶんひさしぶりである。 新緑の朝日の中に猛り啼く鳳凰まぶし金の はばたき その後京都駅に出て、三十三間堂にゆくつもりが、タクシーもバスも長蛇の人の列ができて乗車の順番を待っている。即…

西行庵

さて今日は先ず、奥千本入口までバスに乗る。金峰神社、義経かくれ塔を見る。そこから急坂を登り苔清水へゆく。ここには、次の俳句が板に書かれて木にたてかけられている。 凍てとけて筆に汲み干す清水かな 芭蕉 汲み干さじ強の日照りも苔清水 宗顕 また次の…

吉野朝宮址

五月二日、奈良県吉野に行く。京都から近鉄特急で橿原神宮経由終点の吉野まで、意外とすいていた。吉野といえば数週間前の桜の時期が一番混み合うのであろう。雨が降りそうなくらい曇っている。先ずは金峯山寺蔵王堂、吉野朝(南朝)宮址を見てまわった。蔵…