天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

小説「大伴家持」

田中阿里子という人が書いた小説『悲歌・大伴家持』をやっと読み終えた。随分前に、大伴家持関係の本を数冊購入した際に買ったもの。著者は、大正10年、京都府生まれ。短歌をつくりながら、ラジオ放送台本を書いてきた。「鱶」で婦人公論女流新人賞受賞し…

卯の花

卯の花は、ユキノシタ科落葉低木の空木に咲く白い花である。空木の名称は、枝が中空であるところに由来する。歳時記の傍題には、空木の花、花うつぎ、山うつぎ、姫うつぎ、卯の花垣などがある。 箱根仙石原の湿性花園では、谷空木を見た。谷空木は、スイカズ…

銭洗い

インド神話に、サラスバティーという河川の神がいた。食物や子孫など福をもたらす女神である。神話によっては、女神バーチュと混同され、雄弁、学問、技芸などの功徳をも備えるようになった。これが仏教に取り入れられて弁財天になったという。つまり、音楽…

あやめとかきつばた

あやめは、陸生で花壇に植えて栽培。杜若(かきつばた)は、湿地に野生している。紛らわしいことに菖蒲という湿地に生えるサトイモ科の多年草があり、古くは「あやめ」とも「あやめぐさ」とも言った。万葉集にも、数えてみれば十二首ある。卯の花と同様にほ…

河骨の花

箱根仙石原の湿性花園に行ってきた。河骨の花を見るためであったが、春から初夏にかけての花がいろいろ咲いていた。今後、いくつかを追々紹介する。 河骨とは異様な表記であるが、どうやら根茎に由来しているようだ。根茎は太く横臥。それを乾燥したものを川…

現代短歌の遺産

「短歌研究」六月号の特集から。雑誌「短歌研究」の創刊七十五周年を機に、この二十五年の内に逝去した現代歌人から継承すべきものを明らかにしようとする企画である。執筆を依頼された歌人たちの中には、一瞬とまどった人もいるのではないか? 学ぶことは山…

言葉のゆくえ

「歌壇」六月号の特集「短歌・言葉のゆくえ」は、なかなか面白い。そこで引用されている歌をいくつかあげるだけで、何が話題になっているかが、容易に想像できる。 雨後の夜大気は水の粒はらむ 君に傷つけられてあげよう 川本千栄 何でまあ開発の山の奥にな…

青葉潮

晴天の五月の海辺は心地よい。平日なら人が少ないので更に快適だ。働くことを忘れて日がな一日、釣りができればもはや言うことはない。 角川書店の『俳句歳時記』によると、初夏の青葉のころに日本列島に近づいてくる黒潮を青葉潮あるいは青潮などと呼ぶ。季…

西行と芭蕉

山口誓子著『芭蕉秀句』についての補足。西行を慕うあまり、西行の歩いた場所を訪ね歩いた芭蕉は、そこで句を作った。有名な例として、小夜の中山での作品。以下、西行の歌、芭蕉の句とペアで示す。 年たけてまた越ゆべしと思ひきや命なりけりさ夜の中山 命…

ドリームランド

横浜ドリームランドは、1964年にオープンしたが、2002年2月に37年の歴史を閉じた。遊園地自体としては、よく続いた方であろう。ところが、大船駅からの交通機関として、「モノレール大船・ドリームランド線」は、1966年に開業したのに設計上…

薔薇の文学館

5月12日から6月3日まで、鎌倉文学館の庭でバラまつりをやっている。それに重なるが館内では、澁澤龍彦企画展が開催されている。澁澤は18歳で鎌倉へ移り住んでから終生この地で暮した。59歳の生涯であった。浄智寺の墓地の小高い場所に墓があるとい…

芭蕉と茂吉

山口誓子の『芭蕉秀句』では、芭蕉の句の本歌・古典的背景を分析しているが、同時に、芭蕉の句が斎藤茂吉の歌に与えた影響、つまり茂吉が本歌取りした芭蕉の句についても言及している。以下に、芭蕉の句と誓子が対応させた茂吉の歌を並べて示す。 馬をさへな…

虚構

俳句や短歌は生活実感を詠うもの。現場に立ち現物を見て詠むべきもの。といった教えが根付いている。したがって虚構をいまだに問題視する傾向がある。正岡子規や高浜虚子以降の写生論の影響である。 ところが、俳句の季語では、実生活ではもはや体験しがたい…

さっぱりわからない!

引き続き「俳句研究」6月号から。ここで「わからない」という意味は、ふたつある。(1)そもそも内容が理解できない。(2)内容は理解できるが、こんな俳句のどこが良いのか、わからない。 夢の世の虎が雨夜のおいちょかぶ 星野石雀 露伴忌の俳諧よりも競…

俳句におけるリフレイン

もう雑誌の6月号が出始めた。5月号について書いたばかりなのに。それでさっそく「俳句研究」6月号を読んだ。飯田龍太の追悼号である。追悼号の記事は、大体が思い出話なので、わざわざ取り上げるまでもない。 今回は、黒田杏子の特別作品33句から、表題…

短歌人・5月東京歌会

先の日曜日、池袋の東京芸術劇場で定例の「短歌人」東京歌会が開催された。「短歌人」の選者でもある編集委員の何人かが詠草を出していたので、以下に紹介しておく。歌の作り方の参考になるはず。 坂道の途中で降りて自転車を引きつつのぼりゆく敗北感 中地…

芍薬

ボタン科の多年草で、原産は中国北部からシベリア東部。中国では、「花の宰相」と呼ぶ。日本には平安時代に渡来し、「えびす草」とも言った。その妖艶さは、嫁に行く前の娘の寝姿に喩えられる。薬用と観賞用があり、薬用は根を乾燥させ煎じて使う。痙攣や痛…

海ゆかば

「俺は、君のためにこそ死ににいく」のロードショーを茅ヶ崎に見に行った。結論の感想を先に言ってしまうと、あまりに子供じみてリアリティに欠ける。米艦船と特攻機の攻防も、いまいちだが、なにせ人間関係の表現に迫真性がない。阿波踊りを踊ってみせると…

石橋山古戦場

JR東海道線の根府川駅と早川駅の中間地点のところに、石橋山古戦場はある。晴天薫風の中、根府川駅から早川駅まで歩き、途中のこの古戦場を訪ねた。小高い丘陵は、現在全部がみかん畑になっている。平安末期はどのようなところであったか、想像だにし難い…

直感で読む(続)

「俳句研究」五月号には、第7回現代俳句大賞受賞記念第1作として、受賞者・和田悟朗の作品20句が掲載されている。他に掲載されている俳人の作品と比べてみると力量のほどがわかるが、 以下にいくつかコメントしてみる。 機知で読ませるもの 梅咲けり地球…

直感で読む

飯田龍太の残した言葉を見ていたら、「俳句の選句においては、見たときに、ぱっと心に響いたものを大事にする」とあった。このでんで、「俳句研究」五月号の初めのほうを読んでみたら、以下の作品に心が動いた。 ろくぐわつのうつたうしきは麦粒腫(ものもら…

歌枕と季語

「俳壇」五月号で、「新緑の京都、奈良を詠む」という特集をしている。芭蕉、高浜虚子、細見綾子、水原秋桜子などの例句を紹介している。また、現代俳人の数人が俳句とエッセイを寄せている。 以下、感想を少し書いておく。 菊の香やならには古き仏達 芭蕉 …

雛罌栗の花

漢名を虞美人草、麗春花という。英語名はポピー。フランス語名はコクリコ。といえば、次の与謝野晶子の歌を思い出す。 ああ皐月仏蘭西の野は火の色す君もコクリコわれも コクリコ ついでに、窪田空穂の雛芥子の歌も。 咲き出でし雛芥子の花くれなゐのひたす…

韻律分析

声に出して読んで快い歌の韻律はどうなっているのだろう。実はこの分析は、大変奥が深い。 納得できるような理論を知らない。韻律は響きである。日本語においては、品詞単位の母音のリフレインが響きのベースになる。品詞ごとにブランクを入れ、撥音をnで、…

魂魄

五月の連休が明けた。五月の靖国神社拝殿社頭掲示のコピーをもらってきた。陸軍少尉の遺言の前に置かれている次ぎの明治天皇の御製は、明治37年作。 たたかひに 身をすつる人 多きかな 老いたる親を 家にのこして なんだか人ごとのようで、面白くない。日…

烏帽子岩

茅ヶ崎海岸では、もう浜昼顔が咲いていた。ヒルガオ科の多年草である。はかなく見えるが、砂の中の地下茎は横に走り、地上茎も長く這い回る。 昼顔や此道唐の三十里 蕪村 肺尖にひとつ昼顔の花燃ゆと告げんとしつつたわむ 言葉は 岡井 隆 湘南・茅ヶ崎は、こ…

なんじゃもんじゃ

調布市にある深大寺に行った。正式名称は天台宗別格本山浮岳山昌楽院深大寺。天平5年(733)満功上人により建立され、法相宗を奉じた。慶應元年(1865)に一度、大火により堂宇の殆どを消失している。本尊は、恵心僧都作の阿弥陀如来像。他に白鳳時…

小手毬と都忘れ

コデマリは中国原産で日本に渡来したバラ科の落葉低木。オオデマリは手毬花のことで、スイカズラ科の野生のヤブデマリから生まれた園芸品種。日本が原産地という。つまり、名称と色形は似ているが、コデマリとオオデマリは別種ということになる。 大でまり小…

石楠花

シャクナゲはツツジ科ツツジ属の常緑低木だが、園芸種も多く、500種以上あるという。百科事典によると、シャクナゲ類はヒマラヤ南部、インド北部、ネパール、ミャンマー、中国の雲南省、四川省、チベットなどの山岳地帯に生まれ、周辺にひろがった大グル…

ヒメジョオン

今頃の野原や道端でよく見かけるが、名前を思い出せない花にヒメジョオンがある。姫女苑と書く。キク科の二年草で、北米原産の帰化植物。ハルジョオン(春女苑)とよく似ていて紛らわしい。春女苑も北米原産だが多年草。姫女苑は春女苑より早く明治初年に渡…