天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

飯田龍太全集

買おうかどうしようか、藤沢の紀伊国屋書店に寄るたびに、書棚の前で思案していたが、評論を書くことに決めて、十巻まとめて買った。8月初めのことであった。400字詰めで30枚の原稿を書き終えた。これが今年の夏休みの自分で決めたノルマであった。 十…

鯉はユーラシア大陸温帯域に広く分布している。北米やオーストラリアの鯉は、移植されたものが野生化したらしい。日本には有史以来棲んでいるようだが、万葉集には詠まれていない。 俳句では夏の季語として、緋鯉、白鯉、錦鯉 などがある。 周防とや緋鯉の水…

献血の歌

「短歌研究」で楽しみに読んでいる連載に「徒然懐旧譚」がある。斜交から見える父ということで、塚本邦雄の思い出を一人息子の塚本青史が書いている。前衛歌人塚本の短歌作品にもかなり個人的な日常が詠まれていることが判り、興味深い。彼は、私的な歌はい…

酸漿

酸漿(ほおずき)は鬼灯とも書くが、その呼び名は、ホオというカメムシの一種がよく付くところから来たらしい。日本、朝鮮半島、中国北部に野生するナス科の多年草。 鬼灯や野山をわかつかくれざと 久保田万太郎 暗殺の辻の鬼灯与力町 森 武司 うなゐらが植…

山百合

百合については、すでにこのブログの6月25日「ゆりの花」のところで話題にした。万葉集には十一首詠まれていることも述べた。この花の季節はかなり長く、この時期でもヤマユリをよくみかける。円覚寺方丈裏の庭園には、山側から十数本の百合が咲き出てい…

蓮の実

蓮は今、花の時期を過ぎ、蜂の巣状の花托になって実を結んでいる。蜂の巣状から古くハチスと呼ばれた。この実は堅い暗黒色の果皮で種子を包んでいる。種子の寿命は極めて長く、千年以上前の種子も発芽する。有名な大賀蓮は二千年前のもので、蓮の原種とされ…

孔雀の歌

鎌倉長谷の光則寺に長生きの孔雀がいることを以前に紹介したが、これはインドクジャクで、原産地は、インドやパキスタン。スリランカなどの南アジアにも分布する。孔雀が好んで食べる餌の虫や爬虫類には、毒をもった生物が多い。このため孔雀は益鳥として珍…

時計草、韻律

1.花が時計の文字盤を思わせる。はじめて この花を見たときは、不気味で気持悪かった。 通常、誰でも似たような感じを抱くらしい。 ブラジル原産の多年草。クダモノトケイソウの 果実は、食用になる。果汁はパッションジュース という飲料である。 このパ…

狗尾草

漢名も同じ。えのころくさ、と読む。名前の由来は、子犬の尾やころころしたからだからきたという。イヌコロがなまったものだろう。猫じゃらしという名の方がよく知られている。こちらは、仔猫をじゃらすところから。イネ科の一年草。ユーラシア、アフリカ、…

両極端

「歌壇」9月号を読み始めてすぐに感じたことがある。巻頭に載っている前登志夫と清水房雄、二老大家の作品が、各々の流派を踏まえて両極端に見えること。以下に、5首ずつ上げて要約しておこう。 前登志夫: 大正15年1月生れ、81歳。前川佐美雄 に師事…

水引の花

なんとも風情がある名前である。花を上から見ると色が赤く、下から見ると白く見えるので、水引の名がついたという。あるいは長い花穂を水引にたとえたという説もある。タデ科の一年草。小さな花が細い長い茎に添ってついているので、写真にうまく納めるのが…

万葉集にも蝉は詠われているが、ひぐらし(蜩、茅蜩、晩蝉などと表記)として出てくる。 晩蝉は時と鳴けども片恋に手弱女われは 時わかず泣く 万葉集・作者未詳 風吹けばはすのうき葉に玉こえて涼しくなりぬ ひぐらしの声 金葉集・源俊朝 夕立の雲もとまらぬ…

撫子

秋の七草の一つ。よって秋の季語だが、花は七月から咲き始める。河原に多く見かけるのでカワラナデシコともいう。わが国に古くからある花だが、そうは思えず見かけは随分西洋風である。この季語の傍題に、大和撫子、河原撫子、常夏などがある。 かさねとは八…

楊谷寺谷戸横穴墓群

大磯駅から紅葉谷を経由して湘南平にむかう途中に、この横穴墓群がある。古墳時代末期のもので、21基あったらしい。今の時期は、ひぐらしの声が鬱蒼たる木立にものがなしく響きわたる。 崖に掘った横穴に死体を葬る習慣は、洋の東西を問わず、どの大陸にお…

女郎花

秋の七草の一つで、夏から秋にかけて咲く。漢字表記は日本独自のものであり、漢名は黄花龍芽である。小さい黄色の花が群れるさまを栗のご飯にたとえて女飯と言い、更に女郎花になったとか。どうもいいかげんだが。 ひょろひょろと猶露けしや女郎花 芭蕉 をみ…

「俳句研究」休刊

「俳句研究」が休刊する。創刊されたのは昭和9年。何度か発行所が変わり休刊もあった。昭和61年からは富士見書房から発行され、今まで継続した。休刊の理由は明らかでないが、多分経営難であろう。俳句でも短歌でも商業誌が何種類も出て競争する形になる…

湘南に遊ぶ

以前にも紹介したと思うが、わが国で海水浴が始まったのは、大磯の照ケ崎海岸である。江戸時代末期に生まれ、陸軍の軍医総監となった松本順が導入した。これにより気候温暖、風光明媚な大磯が全国的に有名になり、吉田茂など首相経験者を始め、政財界、文豪…

秋立つ

日本の古典ではよく知られた話なので、気が引けるが、立秋といえば、 秋きぬと目にはさやかに見えねども風のおと にぞおどろかれぬる 古今和歌集、藤原敏行の良く知られた名歌がある。また、新古今和歌集の七条院権太夫の次の歌もある。 秋きぬと松吹く風も…

千屈菜

みそはぎ、と読む。鼠尾草、溝萩 などとも書き、聖霊花ともいう。盆の頃に咲き、仏前に供える風習からの呼び名である。水田の畦や池の端に野生する。 みそ萩や水につければ風の吹く 一茶 みそ萩の露にとどけり昼の鐘 細見綾子 みそはぎの横に水浴ぶのこり鴨 …

酔芙蓉

芙蓉はアオイ科の落葉低木。咲き始めは白いが、しだいに紅色に変わるものを酔芙蓉という。 枝ぶりの日ごとにかはる芙蓉かな 芭蕉 おもかげのうするる芙蓉ひらきけり 安住敦 さはやかに芙蓉は花を了りけり 久保田万太郎 葷酒山門に入るを許さず酔芙蓉

秋海棠

しゅうかいどうは、中国原産のシュウカイドウ科の多年草で、わが国には寛永十八年(1641年)に入って来たという。秋海棠は漢名である。雌雄異花。俳句の傍題には、断腸花というものすごい呼び名もある。 断腸花妻の死ははや遠きこと 石原八束 雨はれて空…

兵士の遺書

今年も終戦記念日が来る。靖国神社社頭に月替わりで掲示される兵士の遺書に興味を持って、歌に詠んでみようと思い立ったのは、過去のブログを見返してみると、2005年の8月3日からであった。以後ほぼ毎月今まで、この習慣を続けてきた。歌の数は150…

白粉花

おしろいばなは、夕方に花を開くので夕化粧とも呼ばれる。色には紅、白、黄、それらの組み合わせの染付けなどがある。メキシコ原産で、江戸時代にはすでに日本に来ており、実の胚乳を白粉の代用にした。俳句では秋の季語。白粉花と書いておしろいと読む場合…

短歌人・夏季全国集会

やはりこうした集会は、みな緊張して丁寧な批評をするので参考になる。藤原龍一郎と小池光の指摘を要約する。まことに迫力に富む。例歌をあげるとわかり易いのだが、差しさわりがあるのでそれはやめておく。 指導者クラスの歌人の詠草自体が低い得点に終わっ…

会津八一の晩年

8月4日は、会津八一記念館、北方文化博物館、西堀通りの寺々(勝楽寺・良寛手毬の図石碑、瑞光寺の八一墓など)、白山神社とめぐる。 会津八一の晩年は幸福であった。終生を独身で通したが、うら若き女性が入れ替わり立ち代り、身の回りの世話をしてくれた…

国上山・五合庵

中越沖地震の影響を心配しながら新潟へ出かけた。短歌人・夏季全国集会に出席するためであったが、それよりなにより、良寛禅師の住んだ国上山・五合庵の跡ならびに会津八一晩年の住まいを訪ねる絶好の機会であった。日を追って順に紹介していこう。見て回っ…

桔梗

ききょうは、秋の七草の一つ。 きちこうとも読む。園芸品種には、白色・紫白色・二重咲きなどがある。 仏性は白き桔梗にこそあらめ 夏目漱石 桔梗やまた雨かへす峠口 飯田蛇笏 桔梗の空のひろがる信濃なり 阿部誠文万葉集にでてくる朝顔は、桔梗のことだとい…

百日紅

さるすべりが咲き始めた。その花期が百日ほども続くので、この名がついた。鎌倉では極楽寺境内の樹が立派で見栄えがある。数日前に訪れた座間・星谷寺の木も本堂の屋根を越える高さで、重々しく花をつけていた。 咲き満ちて鬱きはまりぬ百日紅 江ノ電の窓に…

凌霄の花

凌霄はノウゼンカズラ科の蔓性落葉樹で中国原産。夏の季語。だいぶ以前のことになるが、浜離宮恩賜公園でノウゼンカズラの群落に出会った。昼間なのに大夕焼けを見ている感じがしたものである。 古廂のうぜんかづらは夜空もつ 加藤楸邨 凌霄は妻恋ふ真昼のシ…