天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

参謀

去る9月4日、瀬島龍三氏が95歳という高齢で亡くなった。中曽根政権時代のいわゆる第二臨調の委員として、土光敏夫と共に改革を推進した人物であり、先の大戦において天皇の統帥権を実務上行使した大本営参謀であった。 脆弱な安倍政権を心配して、中曽根…

精霊飛蝗

しょうりょうばったは、昆虫綱バッタ目バッタ科。学名はAcrida turrita。オスの体長は50mm程度、メスの方が大きく、80mm内外。全体に緑色または灰褐色をしている。飛ぶときに前翅と後翅をうちあわせてキチキチと音をたてるので、通称キチキチという。俳句で…

鶴ヶ城

会津若松は初めて訪れる場所である。郡山から磐梯西線で入ったのだが、山地に突然、盆地が開ける。江戸末期によくもまあ、こんなところに官軍が攻めてきたものと感心する。 城の歴史は、至徳元年(1384)に葦名直盛が東黒川館を作ったところから始まる。…

飯盛山(3)

飯盛山では20人の白虎隊士が自殺を図った。が、墓地には19人の墓しかない。よく知られているように、一人が生き残ったためである。刀で咽喉を突いて倒れたのだが、蘇生し助けだされた。飯沼貞吉(後、貞雄)である。だが、一人だけ生き残った恥さらしと…

飯盛山(2)

「嗚呼忠烈白虎隊」松平保定書の碑を前にして、観光客相手に島田磐也作詩古賀政男作曲「白虎隊」の歌にのって隊士の自刃を演じた女性剣士に、涙を誘われた。 白虎隊士の忠誠心に感じた人々は、外国人にもいた。ローマ市民代表のムッソリーニやドイツ大使館付…

飯盛山(1)

飯盛山は、小山である。白虎隊士の墓地には、線香の煙が立ち込めていた。この情景はどこかで見た記憶がある。そう、品川泉岳寺の赤穂浪士の墓地の様子に似ている。ただ、泉岳寺に参った時には、何の感銘も受けなかったが、ここ白虎隊士の墓地に入ったとたん…

ぎんなん

銀杏は中国原産で雌と雄別々の木がある。このことを実感するには、ぎんなんが落ちる頃に銀杏並木を通ってみるとよい。例えば、靖国神社の参道。ぎんなんをつけている木とそうでない木があり、不思議な気分になる。 銀杏にちりぢりの空暮れにけり 芝不器男 銀…

会津若松

昨日から会津若松に来ている。飯盛山(白虎隊士の墓)と鶴ケ城を訪れるためである。詳しくは日を改めてご報告しよう。 長幼の序に咲きならぶ彼岸花 一面の稲穂まぶしや磐梯山 稲刈りの腰を伸ばして磐梯山 穂薄をなびかせ走る電車かな 湖を山を見下ろし雲の峰

カモメ

日本には冬鳥として渡来し、各地の海岸や港湾にすむ とされるが、四季を通じてみかける。オオセグロカモメ、セグロカモメ、シロカモメ、ワシカモメ 等が日本産である。ところで、和歌には都鳥が万葉集のころから詠まれているが、これはユリカモメのこと。万…

阿久 悠(続)

『愛すべき名歌たち』を読み終わった。すごいなあ、すごいなあ と、その文章のうまさに心の中でつぶやきながら。 天才でも無から有を生み出すわけでないことが、阿久の作詞の背景説明から理解できた。つまり創作の種子があったのである。2例あげておく。 「…

秋彼岸

秋の彼岸になると由緒ある神社では、流鏑馬神事が催される。鶴ヶ丘八幡宮では、16日に、寒川神社では19日に開催された。寒川神社の馬場は参道と並行している。観客に見せるような場所はなく、報道陣用の狭いスペースがあるだけ。神に奉納する行事という…

阿久 悠

8月1日、作詞家・阿久 悠が逝った。その後、彼の作詞した多くのヒット曲が、数回に渡って放送された。発想が奇抜で詩のバラエティが豊富。天才だと思った。さっそく岩波新書の『愛すべき名歌たち ―私的歌謡曲史―』と『書き下ろし歌謡曲』、新潮社の『歌謡…

冬ざくら

道路際の草叢には赤い彼岸花が目立ち始めた。以前に白い彼岸花を見てからというもの、彼岸花の季節になると、無意識に白い花はないかと探している。ところが、鎌倉・瑞泉寺の庭園にきて驚いた。白い彼岸花ばかりが咲いている。群れていないので注意して見な…

葛の花

マメ科のつる性多年草で秋の七草の一つ。根は葛粉の材料、薬用にもなる。大和の国の国栖(くず)が葛粉の産地であったところから命名された。葉が風にひるがえると裏の白さが目立つことから「裏見草」ともいう。「裏見」を「恨み」に掛けた和歌も詠まれた。 …

虎杖

イタドリと読む。広くアジアに分布するタデ科の 多年草で薬草。利尿、通経、鎮咳などの効果あり。 ウドに似た若芽を食用にする。葉を煙草の代用にした 時期もある。古くは「たぢひ」「さいたづま」と 呼ばれていたという。 虎杖の花月光につめたしや 山口青…

蛍の歌

先週、六花書林から取り寄せた吉岡生夫さんの『あっ、螢 歌と水辺の風景』を読み終えた。 帯のキャッチに惹かれたので買う気になった。すなわち、 「 螢を追って、上代から近世、近代、そして現代。 軽やかに東へ西へ、ここにフィールドワークの結実、 待望…

ガンカモ科に属する。鴨の俳句といえば、次の芭蕉の句に優るものはないと思う。 海くれて鴨のこゑほのかに白し 芭蕉 寄り寄りに水輪つくりて月の鴨 亜浪 鴨群るるさみしき鴨をまた加へ 林火 万葉集にはたくさん詠まれている(27首)。「まかも」「みかも」…

橘は、日本にある柑橘類の数少ない原産種で、 古事記にでてくる非時香菓(ときじくのかぐの このみ)のことという。万葉集には多く詠まれており、75首もある。 橘や風ふるくさき長谷の里 子規 橘の陰履(ふ)む路の八街(やちまた)に物をそ思ふ妹に 逢は…

茂吉のラブレター

「俳句四季」9月号に、アララギ派歌人の藤岡 武雄が、「斎藤茂吉の短歌と俳句」という題で一文 を書いている。私にとっては、茂吉に関する新しい 情報であり、大変面白かった。そこのところを箇条 書きにしておく。 *茂吉は俳句を57句作っている。但し、…

追悼句とふるさとの句

「俳壇」9月号で2つの特集を組んでいる。「わたしの千の風」と「わがふるさとを詠う」である。前者では、追悼の句を挙げている。前書がないと誰を追悼したのかが不明だが、誰かがわかったところで納得できる場合と別にその人でなくても当てはまるのでは、…

映画手法と詩

言うまでもなく映画は映像の連続したものである。映画が考案されて以来、その映像の編集作業全般をモンタージュと呼んだ。その後、特に映像に意味や観念をもたせるための構成方法に限定した言葉になった。1910年以降、映画理論の中心になった。グリフィ…

藤の実

今の時期垂れ下がっている実はまだ未熟である。 寒くなって莢が枯れると、ある日パチンとはじけて 褐紫色の平たい円形の種子が飛び出る。 藤の実やたそがれさそふ薄みどり 富田木歩 濯ぎ女に垂るる藤の実妻籠宿 豊長みのる 横浜の三溪園は、台風の影響をまっ…

野分

秋の嵐をむかしは、野分といった。野山の草木を吹き分けるほど強烈な風というまことにリアルな命名である。野分の俳句といえば、蕪村に先ず指を折る。 鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分かな 蕪村 野分して隣に遠き山家かな 会津八一 野分あと口のゆるびて睡りをり …

蜻蛉

とんぼ、あきつ、あきあかね、やんま などの 呼称あり。トンボ目に属する昆虫の総称。全世界 に約5000種いるというから驚きである。 日本には、190種あまりいる。 とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな 中村汀女 蜻蛉の通り抜けたる大広間 岡安仁義 霧島…

ざくろ

漢字では石榴あるいは柘榴と書く。 ザクロ科の落葉樹で、実石榴と結実しない花石榴 がある。「ざくろ」という言葉は、発音も漢字も なかなかの風情ではないか。 俳句で石榴といえば、西東三鬼の句が思い浮かぶ。 あまりに有名。 露人ワシコフ叫びて石榴打ち…

ささがに

細蟹、笹蟹、蜘蛛などの漢字を当てるが、蜘蛛あるいはその網(い)のことである。形が小さい蟹に似ているところからきた呼称で、平安時代以降に使われた。いかにもゆかしい大和言葉である。 蜘蛛は、真正クモ目の節足動物の総称で、わが国には千種程度が生息…

残暑の候

九月に入って最初の月曜日。海水浴場に軒を並べていた海の家が取り壊され始めた。南方洋上に台風が発生し、小笠原諸島に近づいているが、その兆しは湘南の海にまだ見えず、凪いでいる。 潮引くやうち壊さるる海の家 黒犬の二頭放てる浜の秋 黒犬が口開けて追…

神代の面影

例年のことだが、5月連休明け頃と8月末の二回、兵庫県三田のM社研修センターで、二日にわたり電子回路設計技術の1級認定試験を実施する。当方は事務局として試験環境の設定と監督が仕事。とはいえ、試験官が別にいるので、環境設定が終われば後はいわば…

寸感おろそかならず

「短歌人」9月号に、小池光が「六月号水無月集寸感」を書いている。小池光の文章は、これまでもたびたび取り上げてきたが、今回も感心してしまった。その切れの良さは9月号を読んで頂くしかないが、短歌を作るときの要点が処々に出ているので、以下には、…

山鉾の句

「古志」9月号の長谷川櫂主宰巻頭は、「祗園会」と題する作品である。周知のように祗園会は、京都八坂神社の祭礼で、七月十七日から二十四日までが、山鉾巡行などのクライマックスになる。主宰は今年も見に行かれたらしい。全15句のうち13句が山鉾巡行…