天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2008-01-01から1年間の記事一覧

巣鴨プリズンを思う(2)

徳富蘇峰に代表されるマスコミの論調、それに扇動される一般国民、武力権力に頼る軍部、会議を開いて意見を集約するしかない首相、意見は言うが会議の結論に従わざるを得ない天皇、明治憲法で決まっていた統帥権という異様なシステム、帝国主義・植民地主義…

巣鴨プリズンを思う(1)

クリスマス・イブに4時間半の長時間ドラマ「あの戦争は何だったのか」を見た。池端俊策脚本、鴨下信一演出。TBSテレビにしては、偏向のないバランスのとれた内容だったので考えさせられた。配役も良かった。実際のニュース映像も織り交ぜてリアリティの…

師走のズーラシア

冬の動物園ほど殺風景な場所はない。動物たちの活性が極端に落ちるからである。ズーラシアは横浜動物園のこと。あちらこちらの檻に、クリスマスの飾りが作られていて、飼育係が説明員になって訪問客を待ち構えていた。ただ、客がまばらなので、説明をする場…

水仙

ヒガンバナ科の多年草で日本水仙が一般的。地中海沿岸が原産で、わが国には平安末期に中国から渡来したらしい。「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」という中国の古典があり、きれいな花の姿と芳香が、水にある「水仙」のようなとこ…

海老とも書く。甲殻綱十脚目長尾類の総称。海水産としては日本近海に五百種もいるという。中でも伊勢海老は、縁起物として飾られたり、祝いの席に供される。伊勢海老は、「飾海老」「海老飾る」と共に新年の季語。淡水産には、ヌマエビ、テナガエビ、ザリガ…

荒磯

梅沢海岸にぼんやり時をすごして、吾妻山に登った。この海岸は、海神の怒りを鎮る ため、浦賀水道の走水に投身した弟橘媛の袖や笄(こうがい)が流れ着いたと伝えるところである。この笄が吾妻神社に祭られた。山頂には、はや葉の花が満開であった。ここは日…

風船

「人情紙風船」という映画があった。1937年に公開された山中貞雄監督の時代劇である。原作は河竹黙阿弥の歌舞伎「梅雨小袖昔八丈」、通称「髪結新三」。映画のラストは、長屋の脇のドブ川を紙風船がひとつ流れていくシーンであった。浪人の首吊り、紙風船作…

師走ある日の上野公園

今年最後の短歌人・東京歌会が上野の文化会館で開催された。いつものように歌会の前に公園の中を散歩した。いままで迂闊にも気付かなかったのだが、正岡子規が明治19年から23年の頃、上野公園で野球を楽しんだことから、公園にある小さな球場には「正岡…

パン

漢字では麺麭と書く。パンの素材をよく表している。メソポタミアが発祥で、紀元前6000年頃から作られた。また古代エジプトでは紀元前2000年頃から作られたという。わが国にはポルトガルの宣教師によって、安土桃山時代にもたらされた。ただ、普及したのは明…

ベイブリッジ

最新の橋を見るべく、横浜ベイブリッジに行った。午前9時50分、JR鶴見駅から市バス17系統に乗って「スカイウォーク前」で下車。スカイタワーに登ってプロムナードを歩いてスカイラウンジの間を往復した。 この橋は、1989年に開通した長さ860mの斜張橋…

鹿

偶蹄目シカ科の総称。日本には、エゾシカ、ホンシュウジカ、ヤクシカ、ツシマジカ、ケラマジカ などが生息する。「鹿」は秋の季語。「鹿狩り」となれば冬の季語になる。晩秋交尾期の雌を呼ぶ雄の声は、遠くで聞くと哀れで寂しい。いにしえから和歌の題材にな…

鉛筆

1565年、イギリスで考案された。わが国には江戸初期にオランダから輸入されたという。国産の鉛筆は、1886年真崎仁六が初めて工業化に成功した。これが三菱鉛筆のルーツである。 軸木には北米産のインセンスシダーが全体の99%を占めるという。芯の…

宿り木

やどりぎ。寄生木とも書く。落葉樹に寄生するヤドリギ科の常緑寄生植物で、根が寄生の木の梢の中にくい込み、大きな瘤をつくる。雌雄異株。ほや、ほよ、ほい、とびづた などとも呼ばれる。 おしなべてうみ湖昏るるとき寄生木の食ひ 込みて立つ榛の幹は見ゆ …

『古事記』に、 「・・・二柱の神、天の浮橋に立たして、其の沼矛を指し下ろして画きたまへば、・・・」 と出てくるので、大昔から、橋という言葉と概念は存在した。 古今和歌集の恋の部・作者未詳の次の歌 さむしろに衣かたしき今宵もや我を松覧 (まつらむ…

高尾山(2)

今年最後の紅葉狩として、師走の高尾山に登った。さすがに残っている紅葉は少なかった。それにしても老人のハイカーが多いのに驚く。 6号路の琵琶瀧から上方の崖路をとり3号路( かつら林コース )に出て標高599mの頂上に達した。 高尾山頂は「関東の…

高尾山(1)

行基が天平16年(744)に開山したと伝える。永和年間(14世紀)に中興、真言密教、修験道の道場として栄えた。薬王院は真言宗智山派の大本山で、成田山新勝寺、川崎大師平間寺とともに、関東三山のひとつ。 正岡子規が、明治二十五年十二月七日に風邪気味の…

クマノミ

スズキ目スズメダイ科。地方によって、チンチクリ、トンボダイ、ハチマキ、ヤハゲなどという呼名もある。イソギンチャクとの共生、性転換など面白い習性がある。ひとつのイソギンチャクには、通常複数のクマノミが生活しており、この中でいちばん大きい個体…

烏瓜

ウリ科の多年生つる草。円覚寺松嶺院の墓地にはまだ枯れずに残っていた。 此のものもたつた一人の詩を書くか 採る人も 無き朱の烏瓜 斉藤 史 からすうりながき綿毛の白花のそよぎかそけき ところをすぎぬ 上田三四二 さらさらさらつと降るはしぐれか生真面目…

銀杏もみじ(2)

今年も藤沢の遊行寺境内の大銀杏がみごとに黄葉した。この木は昭和46年7月5日に市の天然記念物に指定された。現在の樹高は約21メートルだが、昭和57年以前は約31メートルあったらしい。8月の台風で幹が折れたせいとのこと。この時、折れた幹の中…

銀杏もみじ(1)

抜けるような青空の下、北鎌倉は紅葉狩の観光客で大変な人出であった。特に円覚寺の山門はごった返していた。紅葉を背景に写真を撮る人が多く、通行がままならないからである。檀家以外は入ることを禁じた墓地にもカメラを構えている。一眼レフの本格的カメ…

ちょっと気になって

通勤電車の中で、読みそびれていた「俳壇」十一月号をめくっていたら、津川絵里子という人のリレー競詠33句に惹かれた。新鮮さを感じたのと少し疑問を感じたのと両面あり。 A 涼風や直感で入る喫茶店 B 十薬のこの正直なにほひかな C 品書になき鮒鮓を…

空母(2)

米海軍横須賀基地に原子力空母「ジョージ・ワシントン」を見に行った。偶然に横須賀市のニュースで知ったのである。長蛇の列をなして正面ゲートで手荷物検査を受けてから基地の中に入った。アパート、各種施設、港内には巡洋艦数隻などを見かけた。迷彩服の…

空母(1)

航空母艦のことである。多くの戦闘機を積み、発進・着艦用の広い甲板を持つ軍艦。飛行甲板上に全く障害物のないフラッシュデッキ型と、司令塔、砲塔などの上部構造物を持つアイランド型がある。第一次大戦後期にイギリスで工夫された。商船や戦艦などを改造…

大磯町高麗

湘南平に連なって東の端に高麗山がある。以前から高麗という名称が気になり、由来を案内板などで読んでいたのだが、歴史的事実は明確でない。言伝えでは、朝鮮半島にあった高句麗という国が滅亡した際に、逃れてきた人々が大磯にも漂着して住んだという。高…

汽罐車

蒸気機関車、SLのことである。わが国の実用的な蒸気機関車は明治4年(1871)に英国から輸入された。国内で最初に製造されたのは明治25年(1892)であった。 火の粉を吐き蒸気を噴き上げて驀進する姿は文学作品のあれこれに描かれてきた。中でも…

紅葉狩(3)

久しぶりに南足柄の大雄山最乗寺に紅葉を見にいった。曹洞宗のこの寺の開山は了庵慧明禅師で、応永元年(1394)に寺が建立された。参道から見る樹齢450年から600年の大杉木立はいつ来ても心が洗われる思いがする。本堂、金剛水堂、開山堂、多宝塔、不…

峯、嶺、みね。谷に対向する地表の隆起部の先端、山の一番高い所。 峰は、古典和歌に多く出てくる。 雲中の峰を寺とし桃の花 長谷川櫂 山のま際ゆ出雲の児らは霧なれや吉野の山の嶺にたなびく 万葉集・柿本人麿 立ち別れいなばの山の嶺に生ふるまつとしきか…

若宮大路

現在でも大路が生きて使われている例として、鎌倉の若宮大路がある。由比ケ浜から一の鳥居、二の鳥居、三の鳥居を通って八幡宮社殿に至る広い一本道で、国指定史跡。寿永元年(1182)三月、源頼朝が開いた。鎌倉はこの道の両側に発展した。沿道の松並木…

大路

いにしえを偲ぶ雅な言葉である。都大路に代表されるように、わが国が中国に倣って都を拓く際に作られた大通りの名称。奈良平城京には、朱雀大路、一条北大路、二条大路から九条大路、東一坊大路、西一坊大路等々。京都平安京でも同様な名称があった。朱雀大…

小賀玉

「おがたま」はモクレン科の常緑高木。高さ20m、太さ70cmに達する。葉は榊と同様神社に供え、香料ともなる。招霊(おきたま)が転化した名前らしい。写真は鎌倉・大塔宮の社務所前にある木で、鎌倉市が昭和47年に天然記念物に指定したもの。そこにあ…