天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2008-02-01から1ヶ月間の記事一覧

椋鳥(続)

昨年12月5日に取り上げたが、今回は藤沢の新林公園を歩き回って、なんとか自力で右のような写真を撮ることができたので、再度とりあげる。前回は、土屋文明の歌を紹介したが、今回は次の二首を。 群れ群れて空飛びめぐる椋鳥は向変ふる時 かがやきにけり …

元使五人塚

以前(去年4月15日のブログ)にも紹介したが、片瀬の常立寺は、元来、近くの滝ノ口刑場で処刑された死者を弔う寺であった。建冶元年(1275)4月、蒙古の国使・杜世忠ら5人が長門にやって来た。そして9月に鎌倉に到着、降服を勧告したが、時の執権北条時宗…

若布

褐藻類コンブ目チガイソ科の海藻。冬から春に生育し、夏には枯れて流失する。現在では養殖も盛ん。万葉集では和海藻(にぎめ)としても詠まれている。俳句では、春の季語。 みちのくの淋代の浜若布寄す 山口青邨 激流に棹一本の若布刈舟(めかりぶね) 山口…

白鶺鴒(ハクセキレイ)

スズメ目セキレイ科の鳥。海岸や川の下流域、水辺近くの田畑や市街地などに棲む。もともと北部日本で繁殖して、本州中部以南で越冬したというが、湘南では年中見かける。写真のものは稲村ケ崎で撮った。 行く水の目にとどまらぬ青水沫(あをみなわ) 鶺鴒の…

春一番

天気晴朗なれどえらく風の強い日であった。七里ガ浜に寄せる白波はまさに牙むくごとく高い。稲村ケ崎に立つボート遭難の碑に書かれてある歌詞もさこそと思われて胸に迫る。 遭難は1910(明治43)年1月23日に起きた。小学生1人を含む逗子開成中学の生徒が乗…

パンジーとすみれ

路傍に置かれている観賞用のパンジーや野生のすみれの花が目に立つ季節になった。パンジーはフランス語pensee(考える)からきている。花の様子が考えているように見えるから名づけられた。スミレ科の二年草で欧州原産。十二月頃から咲き始め、三月四月が最…

あたみ桜

熱海市内には、名前のついている小さな川が山側から海へ三つ流れている。案内板でみると、来宮神社の奥から流れてくる糸川、梅園の奥からは初川、紅葉ヶ丘からは和田川 というぐあい。 糸川沿いには、あたみ桜というバラ科サクラ属の寒桜が咲いている。この…

直木賞作品

伊丹に日帰り出張した際、帰りに新大阪駅構内の本屋で、奥田英朗『空中ブランコ』の文庫本を買って「のぞみ」の中で読んだ。直木賞受賞の表題の作品以外にいくつか入っている。正直、「空中ブランコ」自体を読んで、何故これが受賞したのか理解できなかった…

睡蓮

温帯、熱帯に広く分布する多年草の水草。耐寒性と熱帯性があり、前者の花は水面に浮び、後者の花は水面から30、40センチ抜き出して咲く。改良した人の名をつけたさまざまな園芸品種がある。ちなみに日本で自生するものはヒツジグサ(未草)と呼ばれてき…

ウミウの岬(続)

去年の十一月上旬(ブログでは十日)、城ヶ島を訪れた時には、海鵜の岬に鵜の姿はなかった。未だ飛来していなかったのだ。時期がきたら居るべきところに居るかどうか、確かめずにはいられないのが、わが性分である。よって今年になってあらためて城ヶ島に行…

胡蝶蘭

東南アジアに分布する蘭科のファレノプシス。このファレノプシスはギリシャ語で、蝶のようなという意味。よってわが国では、胡蝶蘭の名で呼ばれる。温室で栽培され、鉢植、切花にする。 寒き日も胡蝶蘭の花膨らみてながき命を保ちてゐたり 生方たつゑ 枕辺に…

頬白

湯河原梅林で啼きつつ飛び移る数羽の頬白を見かけた。スズメ目ホオジロ科の鳥で全国に分布する留鳥。目の上下に走る二筋の白斑が目立つところからこの名前がついた。俳句では、まさに春の季語。和歌や俳諧に詠われ始めたのは何時の時代なのか?調べてみたが…

幕山

懲りもせず湯河原梅林に出かけた。ロッククライミングで知られる幕山の麓に展開する梅の植林である。その左手奥には桜の植林が広がる。白梅、紅梅、緑梅とあるがいずれも咲き始めたばかり。満開は3月半ばになるのではないか。それに続いてやがて桜が咲き始…

春潮

潮音寺春潮の音聞く寺か 山口誓子 春潮や逗子鎌倉の闇に村 永井東門居 海人(うみんちゅ)の櫂もてば鳴る 春の潮 堀口星眠 早春の湘南海岸に寄せる潮の色は、希望に満ちた淡青である。食欲をそそる健康な色である。余寒のひと時、二宮海岸に座ってこの春潮を…

街中の木陰におどろくほど多数群れてかしましく鳴いている情景をよく見かける。 ハタオリドリ科の鳥。人家付近に四季を通じて見られる留鳥である。『枕草子』には雀の子が出てくるが、万葉集にも新古今集にも出てこない。和歌に初めて詠まれたのは何時のこと…

ゆりかもめ

ユーラシアの北部で繁殖し、わが国には冬鳥として渡ってくる。冬羽は背と翼が淡青灰色で他は純白、脚と嘴が赤い。川の上流や内陸部の湖にもやってきて、魚、エビ、昆虫などを食する。和歌や俳句では、みやこどりという雅称を使う。一方、鴎は背と翼が灰青色…

建国記念日

紀元節のことである。日本書紀の記述に基づき、1872年太政官布告で、1月29日を神武天皇即位の祝日と定め、翌年紀元節と命名した。太陽暦では、2月11日に当たる。 戦前の紀元節は、戦後の昭和二十三年に一旦廃止されたが、昭和四十一年に、建国記念…

万両

ヤブコウジ科の常緑低木。晩秋に赤く色づく小球形の実は、雪に映えると実に鮮やかである。多く実をつけるので千両と共に縁起ものの植物である。なお、千両はセンリョウ科であり、両者に類似性は少ない。 杉苔に万両溺れ寂光土 富安風生 座について庭の万両憑…

福寿草

鎌倉で見つけた花についての続きである。福寿草は、キンポウゲ科の多年草で寒冷の山野に自生する。早春の山中にこの黄色い花を見つけたときの幸福感は言いようもない。江戸時代以降、鑑賞用に各種栽培されてきた。俳句では新年の季語。目出度い。 片づけて福…

象のウメ子

湯河原幕山梅林に行くつもりで電車に乗って小田原まで来たが、乗り換えする間に気が変わった。雨が降りそうなので、小田原城に寄ってみることにした。象のウメ子の老いた姿に心が痛んだ。昭和二十五年三歳で来日してからずっとこの地に生きてきた。 まだ時間…

金縷梅(まんさく)の花

俗に万作とも書く。二月から四月にかけて、葉の出る前に花が咲く。黄色の線形花弁四枚がよじれ、内面は暗紫色。早春にこの花が枝一杯に咲くと豊年満作を想って、名がついたという。 まんさくに風めざめけり雑木山 行方寅次郎 金縷梅や帽を目深に中学生 川崎…

木瓜(ぼけ)の花

中国原産バラ科の落葉低木。わが国には江戸中期に渡来したという。普通は、四月頃に花が咲き、俳句では春の季語になっている。「緋木瓜」「白木瓜」「更紗木瓜」などがあり、実は薬用になる。早咲き、四季咲きもあるが、寒中に咲くものを特に寒木瓜と呼び、…

鎌倉、立春

立春の鎌倉の空は快晴。残雪の大気が澄み渡り、大変気持よかった。極楽寺、長谷寺、光則寺といつものコースを歩いて早春の花を見つけた。木瓜、金縷梅(まんさく)、福寿草などについては、別項で紹介しよう。 藁屋根を垂れてかしまし雪しづり 弓なりに雪の…

節分、豆まき

立春の前日が節分。悪霊、疫病を払うために豆を撒く。中国から伝わったが、陰陽道の行事として普及。文武天皇の慶雲三年(706)、諸国に疫病が流行した際に、大儺をしたのが始まりという。 豆を撒く吾がこゑ闇へ伸びゆかず 石田波郷 豆うたれゐる保母の鬼…

雪の円覚寺

今年の節分は大雪になった。午後から短歌人・横浜歌会があるので、いつものように昼前の一時間を雪の円覚寺で過ごした。老人の写真愛好者が大勢来て、あちこちにカメラを構えていた。 霏々と降る雪の山門円覚寺 闇ふかき雪の舎利殿立ち尽くす 蝋梅の花が耐へ…

ムクノキ

下曽我の菅原天神社の境内に樹齢推定八百年というムクノキの大樹がある。幹のほとんどが空洞だが、空に亭々と枝を張って、いまだに元気である。 大いなる虚(うろ)抱きたるムクノキは 八百年を生き続けたり ニレ科の落葉高木。関東以西から九州まで、東アジ…

下曽我、如月一日

国府津駅を出て国道一号線沿いに歩いていると、金物屋の店先に湯たんぽがいくつも並べて売っている。今の時代にも湯たんぽが売れることに驚いた。 俳句では、湯婆(たんぽ)が冬の季語で、湯たんぽは傍題。 湯婆抱いて大きな夢もなかりけり 大須賀乙字 湯婆…

目白

先の「風光る」の項の補足。椿や梅の花が咲くと、目白の姿をよくみかける。身体の色や活発な動きを見ていると命の美しさを感じる。その心を詠んだ現代短歌を二首あげておく。 相連れて目白の来れば声に呼ぶ妻にやさしき 人のよ生はあれ 近藤芳美 しづかなる…

クロガネモチ

先の「風光る」の項に出てきた樹木につき補足しておこう。モチノキ科のクロガネモチは関東以西の山地に生えて、高さは10メートル位になる。五、六月に淡紫色四、五弁花を開く。小さな球形の実が群れて成り、秋に真赤に熟する。樹皮からとりもちを作ること…