天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

入生田

珍しい地名だが「いりゅうだ」と読む。小田急線小田原駅から箱根湯本に向う途中の駅の名前でもある。この駅で降りて、長興山・紹太寺にゆく。ありし日の紹太寺は、山麓一帯に広がっていたらしい。桜の咲く時期のなるとわが恒例だが、旧寺院跡の枝垂桜の名木…

さくら咲く

櫻咲く季節になると日本中が湧き立つ。開花予想、桜前線 と天気予報で花の移ろいをこうも話題にするのは、世界でもおそらく日本だけであろう。古今集以来、「さくら」あるいはその象徴としての「花」を詠んだ名歌は多数ある。現代短歌でも次のような作品(順…

堅香子

かたかご。かたくりの古名である。ユリ科の多年草で、北海道、本州の山林に成育する。かたかごとは、傾いた籠であり、この花びらが反り返った状態を籠に見立てて名付けたという説がある。あまり聞かないがどうであろうか? 地中に球根があり、ここから澱粉の…

かたくりの里

神奈川県相模原市城山町川尻にある。日本かたくり三十万株、黄花かたくり三千株を有する首都圏随一の群生地という。橋本駅北口からバスに乗ってゆく。入場料は三百円。丘の斜面には、かたくりだけでなく、椿、菊花いちげ、猩猩袴、木五倍子、辛夷、三椏、ネ…

雷鳴と夜桜

二十五日の夜、東京ドームで行われたアスレチックスとレッドソックスの開幕戦をテレビで観た。レッドソックスの開幕投手としてマウンドにあがった松坂の制球はままならず、初回にホームランを含めて2点を失った。顔面から首筋にかけて赤紫に染まっていた。…

雪柳

バラ科の落葉低木。春、多数の五弁の小花をつける。コゴメバナ、コゴメヤナギ、コゴメザクラ などとも。中国原産というが、漢名は噴雪花。春の季語。 雪やなぎ海竜王寺風もなし 百合山羽公 我孫子駅過ぎ人の荷の雪柳 和知喜八 野毛山の異人屋敷に小米花まば…

スポーツを詠む(4)

2004年に亡くなった春日井建が、咽頭癌療養の身をおしてワールドサッカーの試合を見に仙台へ行き歌を詠んだ。歌集『朝の水』「宮城スタジアム即事」二十一首である。 アイーダの合唱ののちニッポン連呼 選ばれし 十一人(イレブン)へ 雨の青芝(ピッチ…

はくれん

白い花が咲く木蓮のこと。白木蓮、木蓮華とも。中国原産である。春の季語。俳人の間では、単に木蓮といえば、紫木蓮を想像することになっている。ちなみに、漢名で木蘭と書くと紫木蓮を、玉蘭と書くと白木蓮を指す。 はくれんのとどく二階の子のうまゐ 小原…

伊勢海老

甲殻類イセエビ科で、太平洋岸の房総以南に棲む。浅海の岩礁で、貝、ゴカイ、エビ、蟹などを食べて生きている。 ふるさとの海もまぼろしとなる今を夢に 届きし伊勢海老うごく 生方たつゑ *作者は身動きもままならぬくらい病んでいるようだ。夢の中で、 故郷…

スポーツを詠む(3)

2007年の「短歌人」11月号で、「歌人はスポーツをいかに詠ったか」という特集を組んだ。また、今年の「俳句四季」三月号で、川名大が、「現代俳句史」において取り上げている。これらの中から、いくつか引いてみよう。 俳句から見ていくのが、分かりや…

初島

何故またこの島に行きたいと思ったのだろう。ついこの間、熱海に行ったとき見たこの島の映像が心にあこがれとして残ったに違いない。熱海港から船に乗り、初島へ向う。港についたら、以前したように左回りに島をめぐる。蘇鉄あり、椰子の木あり、南国情緒は…

弓弦葉

古名は、ゆづるは。弓弦葉の表記から、弓や弦の材になる木なのかと思って調べたが、違うようだ。万葉仮名の当て字らしい。譲葉と書けば名の由来がわかる。すなわち、新しい葉が出るまで古い葉が残るので、代々にかける橙と組合せて縁起を祝い、正月の飾りに…

マツ科の常緑高木。雌雄同株。クリスマスツリーに使われることで知られるが、建築材にも製紙原料にもなる。もみそ、とうもみ、もむのき。 鮎のごとき少女婚して樅の苗植う 樅の材(き)は 棺に宜(よ)し 塚本邦雄 *67576と第三句を中心にして上下点対…

花粉症

こうなれば逆療法とばかりに、花粉症の身を大雄山・最乗寺の杉木立に運んだ。丸太の森公園に行ってかたくりの花が咲いたかどうか確かめたかった。だが、期待ははずれた。影も形もない。この時期は、ほとんど見るべき草花がないのだ。数本の梅や桜が咲いてい…

「こがらし」の句

中西進『美しい日本語の風景』を読んでいて、「こがらし」の項で、次の句に出遭った。 こがらしの 果はありけり 海の音 池西言水 江戸時代の俳人については、芭蕉、蕪村、一茶など有名人しかしらないので、別途、池西言水のことを調べてみた。池西言水は江戸…

根岸・子規庵

鶯の声をきくとどうしても鶯谷の根岸の里を思ってしまう。これは初めてだが、ついでに入谷の鬼子母神も見てこよう。というわけでJRの鶯谷駅に降り立った。子規が俳句に詠んでいる豆腐料理・笹乃雪の横を曲って、露地を通り子規庵に行く。引き戸を開けて庭…

酒匂川

松田山の河津桜を見た後、隣の開成町に行き酒匂川の堤防を歩いた。ここは、梅雨時期の紫陽花祭にくるたびについでに歩く道である。酒匂川と川音川が合流する地点は、明治以前、曼荼羅淵と呼ばれ、大雨のたびに洪水を招いた。昔からいくたびも洪水を起こした…

河津桜

もう人出は少ないだろう、さくら祭も16日で終ることだしと思って、松田山の河津桜を見に行った。神奈川県に住んでいない人のためにすこし説明すると、松田町は足柄上郡に属し、秦野町、山北町、小田原町、開成町に囲まれている。松田山は公園になっていて…

イヌフグリ

朝日新聞社刊『季寄せ草木花』には次のように解説されている。 B淡紅色で花の小さい日本在来のイヌフグリは、明治に帰化したオオイヌフグリい押されて、今は少なくなった。俳句で、「いぬのふぐり」というのはオオイヌフグリの方で、まだ肌寒い二月ごろから…

馬酔木

あしび、あせぼ、あせみ などという。ツツジ科アセビ属の常緑低木。全株が有毒で、馬が食べると麻痺することから、この名称がついた。現に葉を煎じた汁は殺虫剤に使われる。3月から4月にかけてスズランのような小花が房状に垂れて咲く。万葉植物でもある。…

『赤光』の生誕

やっと読み終えた。なにせ473頁もある分厚い本である。通勤電車の中で、はたまた休日に出歩く際の電車の中で読み続けた。岡井隆の歌集以外の本を、ここまで熱心に読んだのは、これが初めてである。彼の短歌に関わる評論をいくつも読んだが、悪文のせいか…

うさぎ

毛を採るにはアンゴラ種、毛皮を取るにはチンチラ種、肉用にペルシアン種、愛玩用にはイングリッシュ種、ヒマラヤン種 など種類が豊富である。日本の白色兎は、毛皮・肉用になるという。万葉集には、「をさぎ」として次の一首が載っている。なんとも不思議な…

土方歳三

産経新聞で石井英夫が「流域紀行」を書いている。「燃えよ 多摩」を読んで、居ても立ってもいられなくなった。土方歳三から数えて6代目の娘さん、といっても36歳とか、が土方歳三資料館の副館長でおられ、かなりの美人らしいからである。歳三の男前からす…

スポーツを詠む(2)

奈良県北葛城郡当麻町当麻に當麻蹶速(たいまのけはや)塚がある。垂仁天皇の時代、相撲の起源とされる、當麻蹶速(たいまのけはや)と出雲の野見宿禰(のみのすくね)の力くらべで敗けた蹶速を追善してつくられた五輪塔と蹶速の姿を彫った碑である。 相撲は…

スポーツを詠む(1)

短歌や俳句に初めてスポーツが詠まれたのは、いつの時代からか?百科事典で調べた。スポーツという言葉が日本語として定着したのは、昭和以降といい、明治、大正期には、運動、競技、運動競技などの言葉が使われた。世界的に見てもスポーツが運動競技を意味…

大場城址

藤沢市の桜の名所のひとつになっている大場城址公園は、平安時代末期に大場氏が拠点とした台地である。室町時代中頃には太田道灌が本格的な築城を行ったと伝える。その後、北条早雲が攻略し小田原北条氏の支配下にあったが、豊臣秀吉に滅ぼされた後、廃城に…

ハイビスカス

アオイ科の常緑低木。沖縄では仏桑花、琉球むくげといって庭木に植えられている。植物園の温室には、各種のハイビスカスが咲いているが、どれも大変精が強く荒々しいくらいに見える。 冬越えしハイビスカスの咲ける紅ひと日ふた日の勢見るべく 千代国一 夕波…

中学生のあなたに

3月2日の「短歌人」横浜歌会が終った後で、川井怜子さんから、『―中学生のあなたに―万葉集へのいざない(その十)』という50ページほどの小冊子を頂いた。横浜の浦島丘中学校コミュニティ・ハウスというNPO法人が企画して、はや十五年になる「万葉集を読…

柏槙

円覚寺の方丈庭園に蘇生外科治療を施した柏槙(びゃくしん)の大樹がある。鎌倉市の指定天然記念物になっている。柏槙はヒノキ科の常緑高木で幹はひどく捩れる。雌雄異株。日本に自生する柏槙はイブキと呼ばれた。建長寺にせよ寿福寺にせよ禅宗の大寺の境内…

新島譲終焉の地

新島譲はキリスト教の布教者であり、同志社大学の創設者として知られる。福沢諭吉と並ぶ明治の偉大な教育者であった。天保14年(1843年)、江戸神田にあった上州安中江戸屋敷で、藩士の子として生まれた。本名を七五三太(しめた)と言う。女子が4人続いた…