天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2008-06-01から1ヶ月間の記事一覧

夏椿

藤沢市の新林公園に行った際、入り口の道路脇の植込みに白い花びらがたくさん散っていた。なんだろうと上を見上げ、木の肌を見て夏椿だと分かった。 沙羅双樹と俗称されるが、本物の沙羅双樹は熱帯樹であり関係ない。 では、『平家物語』の冒頭 「祗園精舎の…

にわとり

鶏は、キジ目キジ科ニワトリ属の家禽。古名には、かけ、かけろ、くたかけ、くだかけ、庭つ鳥 などがある。このうち、くだかけは、鶏をののしっていう語であった。最も古くは、『古事記歌謡』に現れる。 ・・・・さ野つ鳥 雉(きぎし)は響(とよ)む 庭つ鳥 …

尾張に遊ぶ

名古屋に出張した際、久しぶりに熱田神宮の境内を歩いた。本殿は今造営中とかで、幕で隠され背の高い建設機械が動いていた。以下は、電車の車中、新幹線などでの雑詠を含む。 早苗田や雲霧けぶれる山を背に 煙突のけむり横這ふ梅雨の空 窓外にみどりが走る梅…

茂吉と鼠

茂吉の歌集『暁紅』を持ち歩いて読んだ。ひとつ顕著な特徴は、茂吉に迷惑をかける家ダニ、蚊や鼠を、人間に対すると同じようなもの言いで歌にしたこと。 蚤ひとつ捉ふるにも力をそそげりとわれ若しいはば 罵られむか 『小園』 家だにに苦しめられしこと思へ…

石榴の花

石榴はザクロ科の落葉小高木。八重咲きの園芸品種を花石榴という。実を結ばない。花の色には、白・淡紅・朱・絞りなどと様々らしい。俳句では、石榴の花が夏の季語で、花石榴は傍題。 泪目に淡路島かげ花ざくろ 柴田白葉女 朱印打つ坊守も留守花ざくろ 前川…

ある朝に

ある梅雨晴れの朝、吾妻山の頂に登った。驚いたことにもうコスモスがちらほら咲いていた。白い蝶がとんでいた。芝生に坐って歌を詠んだ。 休日は老人たちがダンスせる体育館のうす暗き朝 体育館横に群れたる松葉菊咲き疲れたるさまにかがよふ 梅雨晴れの朝に…

梅雨晴れ

梅雨の中休みのこと。梅雨晴間。俳句では五月晴ともいう。 峡縫ひてわが汽車走る梅雨晴の雲さはなれや 吉備の山々 若山牧水 梅雨晴れのふとまばゆさを増す空にモーツアルトの靴音がする 永井陽子 皷鳴る芝山内や五月晴 正岡子規 梅雨晴の船赤土を満載し 林 …

立葵

(名古屋方面に二泊三日で出かけていたため、今日のブログのアップロードが遅くなってしまった。) 中国原産のアオイ科の多年草。直立する茎の高さは二メートルくらいになる。下方から次々に葉腋ごとに大輪の花を開く。花の色には、白、黄、桃色、赤、紫など…

泰山木

タイサンボクは、モクレン科モクレン属の常緑高木。北アメリカの東南部原産で日本には明治初期に渡来した。大盞木、大山木とも書く。花、葉、木の姿を賞賛して付けられた日本名という。 むすぼれし心もとけつおほどかに泰山木のにほふ 夕ぐれ 佐佐木信綱 ゆ…

栗の花

栗はブナ科クリ属の果樹。六月に強烈な匂いを放つ薄黄色の花が咲く。 逗留の窓に落つるや栗の花 去来 いつまでも繋げる馬や栗の花 虚子 栗咲く香血を喀く前もその後も 石田波郷 大き鳶たわたわと来て過(よ)ぎるとき穂のあざやけき丹波栗の花 北原白秋 梅雨…

枇杷

バラ科の常緑高木。葉の形が楽器の琵琶に似ているところからの命名だが、「枇杷」の字は漢名からもってきた。この葉は関節の痛みに効くという。また木は粘り強いので、木刀や杖の材になる。冬に地味な白い花が咲くところが珍しい。 黒衣より掌を出し神父枇杷…

アウトリガーカヌー

安定性を増すために、カヌー本体の片側あるいは両側に浮子をつけたもの。両側につけた場合が、ダブル・アウトリガーカヌーである。通常は、アウトリガーと言いならわしている。最近、江ノ島の周りでよく見かけるようになった。写真は湘南アウトリガーカヌー…

アカンサス

狐の孫科。ギリシャ語のアカンサ(とげ)が語源。葉薊(はあざみ)ともいう。地中海沿岸原産で日本には大正中期に渡来。 ギリシャより大隈先生もちきたるアカンサスの孫も 花終りたり 中野菊夫 文字深く刻みし君の歌碑の前一もと立てり アカンサスの花 扇畑…

海芋

かいう、と読む。珍しい名前。サトイモ科の多年草。南アフリカ原産で、わが国にはオランダから江戸・弘化年間に渡来したという。カラーという名前もあるが、それは修道女の襟(カラー)を連想させるところからきたという。 海芋大きく活けてマキシム帽子店 …

足柄郷

今年も南足柄市開成町の「あじさい祭」に出かけた。去年は雨の中を歩いたが、今回は幸いに雨は降らなかった。毎年訪れているので、隅々までわかっているつもり。何も変ったことはなかった。 あぜ道にあぢさゐ競ふあしがり郷 枇杷の実のくらみて熟るる瀬戸屋…

九輪草

サクラソウ科の多年草。日本の特産で五月から七月ころに輪生の花を咲かせる。これが七段、八段、あるいはそれ以上重なり、五重塔の頂上にある柱の飾り「九輪」のようなのでこの名前がついた。 九輪草四五りん草で仕廻(しま)ひけり 一茶 牛去りし泉に赤し九…

日光黄菅

ニッコウキスゲ。本州中部以北の高原の草地で見かけるユリ科の多年草。栃木県日光の戦場ケ原に多く自生しているところから、この名がついた。また禅庭花(ぜんていか)の名前もあるが、これは多く咲く戦場ケ原を中禅寺の庭に見立てたことからきているという…

客観写生とは

「一挙手一投足が歌になる。それは言葉の斡旋による。」これは、読み終えた茂吉の歌集『霜』から得た悟りである。悟ったからといって、良い歌が詠めるわけでないところがつらい。釈迦が悟りを開いたからといって世の中を平和にしたわけでない、などと気休め…

泉の森

神奈川県下の花菖蒲の名所をWEBで調べていたら、大和市の「泉の森」があった。案内のメモをプリントしたのだが忘れてしまい、小田急の大和駅に下車してあてずっぽうに歩き始めた。後から考えるとこの公園に並行して歩いたようで、遠回りした。泉の森とふれあ…

ブリはスズキ目アジ科。日本全土の沿岸に分布する。地方により呼び名が違い、また大きさによっても異なる。東京では、イナダ、ワラサ、ブリ。大阪では、ツバス、ハマチ、メジロ、ブリ などと呼ぶ。俳句では、冬の季語なので、今とりあげるのは気が引けるが。…

うつぼ草

シソ科の多年草。六、七月ころ茎の頂に筒型の花穂をつけ、濃紫色の唇形花を密につける。花穂は枯れると黒く変色する。「うつぼ」は矢を入れて背中に負う筒形の道具。これに似ているところからの命名というが、うつぼを見たことのある人は、稀であろうからピ…

渋沢龍彦回顧展

しばらくご無沙汰していたので、横浜山手を訪ねた。地蔵坂、汐汲坂、代官坂、見尻坂、谷戸坂など山手通りから元町に下る坂を見つつ、港の見える丘公園に行った。いろいろな薔薇が咲いているが、どうも感心しない。種類ごとにしっかりまとまって咲いていない…

主語の変動(2)

歌集『白き山』の歌の続きである。 かくのごとく楽しきこゑをするものか松山 のうへに鳶啼く聞けば ★楽しきこゑをするのは鳶だから、「鳶はかくの ごとく楽しきこゑをするものか松山のうへに」 というところは分かる。ところが、結句で突然に 主語が私になり…

主語の変動(1)

斉藤茂吉の歌の魅力はどこにあるのだろう。要因のひとつに、一首における主語の変動、すり替えをあげることができる。茂吉のレトリックについては、岡井隆、小池光、永田和宏 著『斎藤茂吉―その迷宮に遊ぶ』(砂子屋書房)で分析・議論されている。特に6章…

ユキノシタ

ユキノシタ科の多年草。本州から九州まで分布する。5月から7月にかけて清楚な花が咲く。花びらのうち、下向きの2枚が長い。名前の由来ははっきりしないが、白い舌状の花の形から「雪の舌」、それが変じて「雪の下」とか、雪のような白い花をかぶってその…

山鳩

ハト科のキジバトのことである。日本全国に広く生息。低地から山地の明るい林に生息し、林、草地、農耕地などの地面を歩きながら草の種や木の実を食べる。 秋さむき唐招提寺鵄尾の上に夕日うすれて 山鳩の鳴く 佐佐木信綱 ツチヤクンクウフクと鳴きし山鳩は…

たけのこ

たかんな、たかうな ともいう。漢字で筍と書く。食用としては、孟宗竹の筍が一般的で質もよい。右の写真は、鎌倉・明月院の孟宗の竹林に生えていたもの。 筍の光放つてむかれたり 渡辺水巴 筍の荷がゆく朝の札所前 飯田龍太 はしきやし今日の筍手に持ちてそ…

花菖蒲(2)

鎌倉で花菖蒲のみどころといえば、明月院になろう。それでさっそく出かけた。今日から有料開園とのことで、五百円払って庭内に入ったが、まだまだ莟が多く、花は少ない。明月院のパンフレットには、丸窓を通して見る菖蒲田が出ているが、今日はまだ早い。ど…

花菖蒲(1)

アヤメ科の多年草で、アヤメやカキツバタとは剣状葉の中脈が大きく隆起するところが違う。 花菖蒲かたき蕾は粉しろしはつはつ見ゆる 濃むらさきはも 木下利玄 濃艶に咲きて日に照る花菖蒲風ふき くれば紫に揺る 大岡 博 6月1日から30日まで、小田原城に…

山法師

ヤマボウシはミズキ科の落葉高木。わが国では本州、四国、九州に、また朝鮮、中国など温帯に繁茂する。十月に赤く熟する果実は食用になる。漢名を四照花という。 山法師群立つ乱の僧兵か 河野南畦 山法師妻籠は雨に変りけり 松本陽平 遥か見るとき遥かなる山…