天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

でいご

漢字では梯梧と書く。インド、マライ地方原産のマメ科落葉高木。類似のものにアメリカデイゴがある。海紅豆(かいこうづ)とも。 梯梧の花咲きのぼりゐる炎天に聞きしは呻き はたや嗚咽か 大田青丘 戦場に近くあり経し南国の緋の海紅豆いまだも昏し 安永蕗子…

花魁草

おいらんそうはハナシノブ科の宿根草で、北米が原産。花かんざしのような花を多数つける。花の色には、白、淡紅、鮭肉色などがある。 夏草の深草のみだれはてしなしおいらん花は 重たげに咲く 今井邦子 出入りする庭に顧みてあはれみし去年に似たり 花魁草は…

蒲郡の藤原俊成

平安時代後期〜鎌倉時代初期の官人・歌人。藤原俊忠の子。藤原定家の父。幼い時に父と死別、民部卿顕頼の養子となり名を顕廣といったが54歳の時に俊成と改名。63歳の時に出家し、釋阿と号す。歌の家としての御子左家の位置を確立。後白河院の命により「千載…

カンナ

カンナ科の春植え球根植物。原産は熱帯地方。欧米で改良され、わが国には江戸中期に渡来。現在まで様々な園芸品種が出ている。グラジオラスと取り違えやすいので注意を要す。 カンナの花黄なる洋燈(ランプ)の如くなり 子供出て来よ背戸の月夜に 北原白秋 …

グラジオラス

アフリカ、地中海沿岸地方原産のアヤメ科球根植物。明治時代に欧米経由で交配種が輸入された。秋植えの早咲きと春植えの夏咲きがあり、花は一方に向いて穂状になる。花の色は多彩。唐菖蒲(トウショウブ),阿蘭陀菖蒲(オランダショウブ)などの別名があっ…

梅雨明けて

大雄山の大杉木立は、梅雨明けの空の下、清々しい大気に包まれていた。最乗寺に行くと方丈の座敷に坐り柱に背をあずけて、しばし瞑想、山の息吹に耳をすますのを常とする。 なお、最乗寺には小田原駅から大雄山線に乗り終点下車、そこからバスで道了尊まで行…

早苗田

田植えの終った田んぼでは、稲がすくすく育っている。田植を始めることを早苗開き、田植始めという。小学校のころ、郷里の広島の山奥で、田植唄をうたいながら赤たすき姿の早乙女が並んで田植をする光景を見た記憶がある。田植を終えたらお祝いにさなぶり早…

梅雨晴間3

建長寺に行ったら数種類の大鉢の蓮が咲いていた。半僧坊から山に入って尾根を歩き覚園寺へ下った。NHKのニュースでは、関東地方の梅雨が明けた模様、という。 露草や楓橋夜泊の詩碑あたらし 山百合や寄付金額の碑の横に 蝉鳴くや倒れて古りし道標 朝影の…

北村透谷

小田原城跡の馬出曲輪の一画に、「断崖づくり」の立派な北村透谷顕彰碑がある。またJR小田原駅近くの高長寺には、彼の墓がある。前から気になっていたので少し調べてみることにした。小田原文学館に行って次のような紹介文を読んだ。 明治元年〜27年(1…

孔雀棲む寺

鎌倉・長谷の光則寺に長年飼われていた孔雀が死んだことについては、以前に紹介した。今回、例のように本堂の縁側に座って呆然と庭を眺めていたら突然、孔雀が高啼いた。まさかまだ生きていたわけでもなかろう、聞き違いかと思った。それで以前の小屋の場所…

ワシタカ科のうち大形種の総称。小形種をタカというが、区別は明確でない。大鷲、尾白鷲、犬鷲 など。 筑波嶺にかか鳴く鷲の音のみをか鳴き渡りなむ 逢ふとは無しに 万葉集・東歌 沖つ波千たびくだくる岩角におりゐる鷲の声も すさまじ 加藤千蔭 立山の外山…

縞馬

奇蹄目ウマ科。ゼブラ。斑馬とも。アフリカの草原に大群をなして棲息する。 人間に視つめらるれば炎天の縞馬の白き 縞よごれたる 塚本邦雄 孤と個あい寄りあいつながりて疾駆する あしたの底の縞馬のむれ 岡井 隆

麒麟

偶蹄目キリン科。ジラフ。声帯の発達が悪く、ほとんど声を出さない。あんなに首が長いせいなのだろうか。 人類のほろびをいそぐときをしもキリン悠々と 空を仰げり 加藤克巳 秋風に思ひ屈することあれど天なるや若き麒麟 の面 塚本邦雄 あきかぜの中のきりん…

梅雨晴間2

江ノ島に遊ぶ。「古志」・長谷川櫂主宰の考え方によれば、同じ場所に何度でも通って、新しい視点を得る修行が大切という。 いにしへの遊行寺坂や忘草 邊津宮の茅の輪くぐりぬ島の朝 朝顔のあをむらさきの目覚めかな ペットボトル、ラーメンカップさまざまの…

アオバト

以前にも紹介したが、大磯の照ケ崎は、知る人ぞ知る潮水を飲みに来るアオバトの集団飛来地である。堰堤にある説明板によると、丹沢山地から飛んでくるアオバトが多く、初夏から秋にかけて多いときには、1日で延べ1000羽以上が観察される。それは、満潮…

飛蝗

バッタ。直翅目バッタ科の昆虫の総称。いなご、負んぶ飛蝗、精霊バッタ、トノサマバッタ など種類は多い。 しづかなる力満ちゆきバッタとぶ 加藤楸邨 精霊ばつた飛んで湖北に島ひとつ 関戸靖子 飛蝗の頭には鋭三角形鈍四角などありて仮睡の われをとりまく …

梅雨晴間1

神奈川県二宮町の吾妻山に遊ぶ。 朝光の木末ふれあふ梅雨晴間 コスモスの風に憩へる吾妻山 残雪の山の裂け目や富士の嶺 黒雲の奥に白雲夏の富士 ひるがへる燕の胸に夢を見て 水色の銀の尻尾を左右に振り前進したり蜥蜴といふは 山頂の空をかけりてひるがへる…

鍬形

クワガタムシ科に属する甲虫の総称。雄の顎はふたまたの鍬形状に大きく発達する。雌は小さい。初夏から初秋の夜間に活動する。なお、幼虫の期間は約二年で、朽木の中で過ごす。 クワガタの番いを見いで狂喜せし一木も 老いぬああ樹液涸れ 岡井 隆 鍬形は鍬形…

ライオン

食肉目ネコ科。獅子。仏教では、釈迦の前世の姿にたとえる。 山なかに心かなしみてわが落す涙を舐むる 獅子さへもなし 斎藤茂吉 風のちまた百のテレヴィにマラソンの獅子 奮迅のずたずたの獅子 塚本邦雄 咆哮を終えたる獅子はしばたたく細き目尻を まこと痒…

動物園

世界最初のものは、オーストリア・ウィーンに1752年に開設したシェーンブルン動物園という。わが国では、周知のように1882年(明治15年)にできた上野動物園が最も古い。できるだけ自然に近い環境で飼育するという発想で作られたものに多摩動物園…

鵲の橋

七夕に彦星と織姫が天の川で逢う際に、カササギが翼を並べて橋渡しをするという。男女の仲の橋渡しの比喩にもなる。 たなばたの扇の風に霧晴れてそら澄み渡る 鵲の橋 新撰朗詠集・清原元輔 かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば 夜ぞふけにける 新古今…

七夕

中国伝来の乞巧奠(きこうでん)の風習が奈良時代に定着し、これとわが国の棚機(たなばた)つ女(め)の信仰とが合わさって星祭になった。江戸時代には民間に広まった。天の川で彦星と織姫が逢引をする夜でもあるので、星合ひともいう。なお乞巧奠はもとも…

むくろじ

ムクロジ科の落葉高木。六、七月に梢に円錐花序を出して、淡い緑色の小花を多数つける。十月頃に熟する実は追羽根の球に用いられる。漢字では、無患子と書く。 森の中の無患子のもみぢ黄に照れば心に梯子を 掛けて見てをり 前川佐美雄 手に取ればぬれぬれと…

ねじばな

漢字で捩花と書く。ねじれた花序の様子からこの名がつけられた。ラン科の多年草。捩摺(もぢずり)ともいう。 山伏も尼もとほりぬねぢり花 細川加賀 ねぢばなに花見顔なる雀子と憂ひを頒つほど のしづけさ 大田青丘 もぢずりの一茎淡く咲きいでて夏夕ぐれの …

アガパンサス

アフリカ原産のユリ科宿根草。和名は紫君子蘭。太く強い根は、斜面の土の流出を防ぐのに役立つらしい。うっかりするとギボウシと間違う。 梅雨ぐもる庭の一隅茎たちてアガパンサスが 簡潔に咲く 岡野千佳代

植物園

最初の近代的な植物園は、1543年に開設したピサの植物園という。現在、有名な植物園として、オランダ・ライデン植物園、英国・キュー植物園、フランス・パリ植物園、ドイツ・ベルリン植物園、米・ニューヨーク植物園、インドネシア・ボゴール植物園など…

茄子

なす、なすび とも。インド原産のナス科の一年草。わが国には八世紀に中国からきたという。丸ナス、卵形ナス、長ナスなど種類は多い。 あめつちの静かに茄子の花ざかり 阿部慧月 山峡のせまき平に植ゑ並めて茄子は短き むらさきの茎 木俣 修 しんかんと七月…

南瓜

かぼちゃ。ウリ科の蔓性一年草。わが国にはポルトガルから天文年間に渡来。別名、唐茄子。 砂を這ふ南瓜の花に島の雨 今井千鶴子 あかあかと南瓜ころがりゐたりけりむかうの 道を農夫はかへる 斎藤茂吉 ゆふづくと南瓜ばたけに漂へるあかき遊光に 礙(さはり…

メタセコイア

スギ科メタセコイア属の落葉高木。1941年に日本の第三紀層から化石植物が三木茂が発見、また1945年には中国の揚子江の支流の奥地で原生種を見つけた。生ける化石植物として有名になった。メタセコイアは三木の命名である。現在日本で見かけるものは…

ギボウシ

ユリ科ギボウシ属の多年草の総称。ギボシとも。江戸時代から観賞用に栽培された。橋の欄干の上にある、玉ねぎをさかさまにしたような装飾物が「擬宝珠」。この花のつぼみが擬宝珠に似ていることからこの名になった。一日花で、朝開き午後にはしおれる、とい…