天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

蟋蟀

コオロギ。直翅目コオロギ科の昆虫の総称。ちちろ虫とも言うが、古くはコオロギのことをキリギリスと呼んだというからややこしい。リ、リ、リと途切れながら鳴く。 こほろぎのこの一徹の貌を見よ 山口青邨 蟋蟀が深き地中を覗き込む 山口誓子 夕月夜心もしの…

蜻蛉

トンボ。古事記や万葉集では、「あきづ」「あきつ」と言った。トンボ目に属する昆虫の総称。赤とんぼ、秋あかね、糸とんぼ、鬼やんま、銀やんま、塩辛とんぼ、精霊とんぼ、燈心とんぼ、猩々とんぼ 等がいる。 あきづ羽の袖振る妹を玉くしげ奥に思ふを 見たま…

東慶寺の夏木立

炎天下の北鎌倉の緑陰はオアシスである。殊に東慶寺は気持が安らぐ。高名な文化人の墓を見て廻ることで時間が経つ。 田村俊子文学碑 この女作者はいつも おしろひをつけてゐる この女の書くものは 大がひおしろひの中から うまれてくるのである 四賀光子歌碑…

睡蓮

スイレン科の多年生水草。園芸品種には、根茎で花を水面に浮べる耐寒性と、球茎で水面に花柄を出して咲く熱帯性がある。日本に自生するひつじぐさ未草は、耐寒性で7月から10月にかけて白い花をつける。ひつじの刻、つまり午後一時から三時頃に開花するの…

檜(ヒノキ)

わが国特産のヒノキ科の常緑高木。福島県以西から九州の山地に天然林がある。雌雄同株。四月に開花、10月頃に実を結ぶ。種子には翼がある。最良の建材となるため植林が盛んである。木曾の天然檜の美林は有名。古名は「檜(ひ)」。 黒き檜の沈静にしてうつ…

津久井湖城山公園

JR橋本駅北口から三ケ木行きのバスに乗って津久井湖展望台で下車。 城山というが、文字通りもともとこの山に城があった。鎌倉時代に三浦党の筑井氏が築城したと言われ、本格的に城と使われ始めたのは戦国時代の後北条氏の時であった。だが、内藤氏が城主の…

家鴨

アヒル。ガンカモ科の鳥で、マガモを品種改良した家禽で飛べない。白アヒルが肉用、採卵用として飼われる。色彩には、白、褐色、カーキ色、白黒まだらなどがある。最近日本ではあまり多く見かけない。 鴨河に浮ぶあひるの朝な朝なたらずなりゆく 数ぞ悲しき …

ハマナス

ハマナシ(浜梨)ともいう。バラ科の落葉低木。実を食べると梨の風味があるというが、どうも食べる気はしない。花の色には赤紫系統が多いが、まれに白い花が咲く。右の写真がそのまれな例である。 潮かをる北の浜辺の砂山のかの浜薔薇よ今年も 咲けるや 石川…

向日葵

北米原産のキク科の一年草。わが国には中国経由で17世紀に渡来した。種子は灰白色で食用にも石鹸の原料にもなる。 大きなる蕊くろぐろと立てりけりま日にそむける 日まはりの花 古泉千樫 しづかなる悲哀のごとくわが門の星の明りに 向日葵立てり 宮 柊二 …

立秋の鎌倉長谷

最近は、以前ほど鰻を食べる頻度が少なくなったが、鎌倉では、由比ケ浜の鶴屋、若宮大路の茅木屋、長谷の浅羽屋、佐助のうな豊 といった店によく通った。特に昔は、若宮大路の浅羽屋を贔屓にしたものである。当時の主人は、連凧でギネスブックに載っていた。…

小池光の短歌講座

小池光さんの文章の面白さ・切れの良さにつき日頃感心しているせいか、「短歌人」の川井怜子さんが、私のためにわざわざ彼の仙台文学館での短歌講座の抄録小冊子(五百円)を送って下さった。第一部・作品鑑賞と第二部・受講者作品へのアドバイスからなる。 …

半夏生(はんげしょう)

半夏生とは、季節を示す場合には、太陽の黄経が100度になる日で,夏至から11日目に当る陽暦7月2日頃を指す。植物の半夏生もこの頃に花をつけるところからきた。「半化粧」「片白草」(かたしろぐさ)ともいうが、これは葉の一部が白くなるところから…

枇杷(びわ)

バラ科の常緑高木。中国から渡来したというが、日本の南部に野生していたらしい。果実は食用にある。木材は硬いので木刀に使われる。葉は鎮咳・痰きり薬、入浴剤などに利用される。 黒衣より掌を出し神父枇杷をもぐ 津田清子 枇杷の木に黄なる枇杷の実かがや…

短歌の理解

2009年の「短歌人」夏季集会で、「短歌の言葉」と題した講演を聴いた。そこで彼の短歌感を知ることができた。近代以降の短歌、特に現代短歌の特徴を、彼独自に要約したものであった。ユニークなまとめ方であり説得力があった。また、改作(改悪)例を示す…

かもめ

カモメ科の鳥。冬にシベリア地方から日本に飛来して、港や河口にウミネコやユリカモメと群れて棲む。万葉集には、「かまめ」「みやこどり」としてでてくる。ひとつは、次の有名なもの。 大和には 群山あれど とりよろふ ・・・ 海原は鴎立つ立つ うまし国そ …

海亀

海に棲む亀。日本近海には赤海亀、青海亀、玳瑁(たいまい)、長亀(おさがめ)などがいる。産卵のために陸上に上がる。 秋潮のつめたく澄める底ひより浮かび 出でたり大き海亀 松村英一 孵りたる赤海亀が首あげてカリブの海の 朝日まぶしむ 長沢一作 びにいるを…

のうぜんかずら

中国原産のノウゼンカズラ科の蔓性落葉木。漢字では、凌霄花と書く。 虻は飛ぶ、遠いかづちの音ひびく真昼の 窓の凌霄花 佐佐木信綱 火のごとや夏は木高く咲きのぼるのうぜんかづら ありと思はむ 北原白秋 咲きのぼるのうぜんかづらの色さえて一人住ひの 家…

蝦蟇の油

ガマの分泌液を膏剤にまぜて練ったという軟膏で、戦陣の膏薬として用いられた。やけど、ひび、あかぎれ、切傷などに効能があるという。大道に香具師が面白い口上で人を集めて売った。筑波山では、麓の神社や山頂で口上を述べていた。ただ、薬を買う観客は見…

筑波山

常陸国の歌枕。万葉集の時代には、「つくはね」とか「つくはやま」といったふうに清音であったらしい。山頂に男体山(イザナギ)と女体山(イザナミ)の二峰があるので、古来、恋歌に詠みこまれた。 百人一首にある陽成院の次の歌(後撰集)が代表的。 筑波…

カサゴ

漢字では笠子、瘡魚と書く。カサゴ科の魚。北海道以南の岩礁に棲み、卵ではなく仔魚を冬から春に出産する。稚魚は卵黄で育つ卵胎生。 鍋料理、味噌汁、煮付け、塩焼き、あるいは小さければ唐揚げとして食べる。美味。 頭ばかりでかきはカサゴの哀しみに空揚…

蛾(ガ)以外の鱗翅目の総称。全世界には約13000種、日本には約240種いるという。シロチョウ科、マダラチョウ科、ジャノメチョウ科、シジミチョウ科、セセリチョウ科、たてはチョウ科、アゲハチョウ科など。 百とせの花に宿りて過してきこのよは蝶の…

木賊(とくさ)

シダ類トクサ科の常緑多年草。茎に珪酸を含み蓄積して硬化するので、砥石に似て茎でものを研ぐことができることから、砥草の名がある。茎は煮て乾燥させたものを紙ヤスリのようにして研磨に使う。高級なつげぐしの歯や漆器の木地加工、木製品の磨き仕上げに…

朝顔

ヒルガオ科の一年草。茎は左巻きの蔓性。万葉集にも出てくるが、実は桔梗を指しているというからややこしい。 朝顔は朝露負ひて咲くといへど夕影にこそ 咲きまさりけれ 万葉集・作者未詳 ゆふぐれの寂しきものは朝顔の花をたのめる宿 にぞありける 後撰集・…

ピラニア

カラシン科の熱帯魚。南米特産、アマゾン川、ラプラタ川などに生息。群をなして大形動物を襲い、強く鋭い歯で食い尽くすというが、実は臆病でたとえ空腹でも大型の温血動物は襲わない。その動物が傷付き死に掛けている場合や死んでいる場合に限る。現地の子…

サングラス

太陽光線から目を保護するためにかける色の着いた眼鏡。日よけ眼鏡。 サングラスはずして見れば朱の色のほのぼのとして 小さき赤富士 川口美根子 反戦詩読めばやさしき地下鉄の青年がかけし サングラスまた 佐佐木幸綱 サングラスかけて出づれば透明のわれか…

梔子

クチナシで山梔子とも書く。アカネ科クチナシ属の常緑低木。花は一重咲きが基本種なるも八重咲き、大輪咲きもある。乾燥させた果実は栗きんとんを黄色に着色する色素や漢方薬に利用される。この果実が熟しても裂けないところから「クチナシ」の名がついた、…

戻り梅雨

梅雨明けしたはずの湘南海岸も梅雨に逆戻り。学校は夏休みに入ったが海の家に客の姿が見えない。沖から霧が押し寄せてくる。 夏休み雨をのがるる射的かな 蝉鳴くや誰姿森元使塚 梅雨明けの供花新しき御霊窟 腰越に生しらす買ふ霧の朝 裏側に龍の絵を描く海の…

ワスレグサ

その花を身につけると憂いを忘れるという。ユリ科ワスレグサ属の多年草。萱草、金針、忘憂草などとも呼ばれる。ヤブカンゾウ、オニカンゾウ、ノカンゾウ、ハマカンゾウ などがある。長崎の男女群島に自生するトウカンゾウなどもワスレグサと呼ばれる。いずれ…

合歓の花

ねむ、ねぶ(合歓、合歓木)は、マメ科の落葉高木。樹高は8メートルくらいになる。実際にこの目で見たわけでないが、羽状の葉は夜になると閉じる。万葉集にも詠われている。 昼は咲き夜は恋ひ寝る合歓木の花君のみ 見めや戯奴(わけ)さへに見よ 万葉集・紀…

山百合

ユリ科の多年草。本州中部以北に自生する。万葉集のサユリがこれを意味するという。芳香が強い。神奈川県の県花になっている。鱗茎の百合根は食用になり、美味。 万葉集では大伴家持が「さ百合」をよく詠んでいる。 たくさんの百合添へて死を頂戴す 正木ゆう…