天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2010-02-01から1ヶ月間の記事一覧

鎌倉の椿

鎌倉市二階堂の南東端にある大蔵山・杉本寺の境内には椿がたくさん植えられている。特に金色の蘂を抱いた真紅の椿が目立つ。椿はわが国固有の植物、従って「椿」は国字である。海を渡り中国に行ってからは、海石榴という名称がついた。海を渡ってきた石榴の…

わたつみ

綿津見、渡津海、海神などと表記、わだつみ とも発音する。海の神あるいは海を意味する。 「わた(わだ)」は海。「つ」は助詞の「の」。「み」は「神(神霊)」。 わたつみの豊旗雲に入日見し今夜(こよひ)の月夜さやに照りこそ 万葉集・天智天皇 わたつみの…

早春の湘南海岸

三寒四温の言葉通り、気象は春に近づいている。湘南海岸では、サーフィンやビーチバレーに興ずる若者たちの数が増えてきた。浜に坐って見ていると眠気を催す。 知らぬ間に水面膨らむ春の潮 目裏を日が射す春の潮だまり 鶺鴒の啼きては若布つひばめる 浚渫の…

椅子

言うまでもなく腰をかけるための家具だが、わが国では近代まで床に坐る生活であったので、武将の床几か僧侶の曲ろくがあった程度である。畳の生活から離れる時代が来て、一般家庭にも普及した。書斎や食堂の椅子、居間のソファなど。突然だが、江戸川乱歩の…

野毛山動物園

野毛山公園一帯には、かつて原善三郎や茂木惣兵衛といった横浜の豪商の邸宅があった。関東大震災によって壊滅した後、公園として復興整備された。第二次大戦中は陸軍が使用し、戦後は昭和22年まで米軍に接収されていた。接収解除の昭和24年に、日本庭園だっ…

仏陀の骨や聖遺物をまつるために土石を碗形に盛ったスツーパ(卒塔婆)からきている。中国に伝えられて楼閣と結びつき、現在見るような木造の層塔になった。石造には五輪塔、宝筐印塔がある。 ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲 佐佐木信綱 山…

横浜中華街

安政6年(1859)、横浜の開港に伴い、外国人居留地が造成され、欧米人とともに中国人も来住した。横浜と上海、香港間に定期船航路が開設されると貿易商も増え、居留地の一角に関帝廟、中華会館、中華学校などが建てられた。これが中華街の原型である。現在の…

眼鏡

ガラスが発見されて以降に工夫されたもの。近視には凹レンズ、遠視や老眼には凸レンズ、乱視には円柱レンズが使われる。現代はコンタクトレンズが、特に女性には普及している。 むざむざと人は討たれつ読みやめて曇る眼鏡をかなぐりとりぬ 松田常憲 思ひ見れ…

印刷技術が出て来るまでは、粘土板、パピルス、木片、竹片、羊皮などに絵や文字が彫られたり書かれた。羊皮や紙にしても現在の装丁方法が出て来るまでは、巻物、折り物などの形態であった。 いつか是非 出さんと思ふ本のこと 表紙のことなど 妻に語れる 石川…

山茶花

ツバキ科の常緑小高木。わが国の特産種で、四国、九州、沖縄に自生種がある。椿に比べて、花も葉も小ぶり。花が散る時には、椿と違って、花弁が一枚ずつ落ちる。野生種は一重で白一色。室町時代の文献から名前が出てくるという。江戸時代以降、多くの園芸種…

翡翠

カワセミ。ブッポウソウ目カワセミ科の鳥。文字通りヒスイと呼ばれることもある。古くはソニドリとかショウビンと言った。シャボン玉の見え方と同じ原理(構造色)により、光の加減で青くも緑色にも見える。俳句では、夏の季語だが、冬でもよく見かける。 よ…

死刑囚の歌

いつだったか、角川『短歌』の特集に『死刑囚のうた』があった。朝日新聞などの歌壇欄に、死刑囚からの投稿があったり、歌集を出して話題になることがある。死刑執行を待つ期間の独房で歌を作ることは、心の安らぎになるのであろう。時の移ろいと生命の輝き…

牢獄

かつては、ひとや(人屋、牢舎、監獄、獄舎)と呼ばれた。宇治拾遺物語にも用例がある。 住みそむるひとやの枕うちつけにさけぶばかりの波の音かな 野村望東尼 人家なる君を思へば真昼餉の肴の上に涙落ちけり 正岡子規 かなしきは人間のみち牢獄(ひとや)みち…

東京拘置所

東京都葛飾区小菅1-35-1にある。死刑執行施設を有し、3,000名まで収容できる。1878年(明治11年)西南戦争捕虜収容の為、小菅監獄として設立された。巣鴨拘置所を併合し、1971年(昭和46年)小菅刑務所が東京拘置所となった。2010年1月5日現在、56人の…

田起こし

春先に、田の土を鋤で掘り返し打ち返すこと。田打、田を鋤く、春田打などとも。 大和また新たなる国田を鋤けば 山口誓子 垣越しによきしめりよと云ふ声のうれしくぞきこゆ田を鋤けるらし 北原白秋 ぐんぐんと田打をしたれこめかみは非常に早く動きけるかも …

冬薔薇

ふゆそうび、寒そうび、冬バラ、寒バラ。 遣羽子や海原かくすさうび垣 山口誓子 冬薔薇石の天使に石の羽根 中村草田男 大寒の薔薇に異端の香気あり 飯田龍太 はらはらと黄の冬ばらの崩れ去るかりそめならぬ如くに 窪田空穂 ロマネスクもう望むべくなきことの…

薄氷

うすらひ、うすごほり。早春にうっすらと張る氷、あるいは解け残った氷。 葛桶に薄ら氷ゆらぐ宇陀にをり 能村登四郎 田の面やや傾いてをり薄氷 有働 亨 雁過ぎし空がのこりてうす氷 山上樹実雄 朝な朝な湖(うみ)べにむすぶ薄氷晝間はとけて日永(ひより) つづ…

二月の円覚寺

いつの間にか国宝舎利殿にはシートがかけられて修理に入っていた。手水鉢や池には薄氷が張って、いかにも早春の気配がただよっていた。居士林の横の畑には、福寿草が朝日に光り輝いていた。 金色の花の影濃き福寿草 したたりが薄氷を打つ手水鉢 薄氷を解かし…

炭焼き

冬の暖房用に炭を焼くのだが、薪には樫、楢、橡などが使われる。最近では、こうした炭は、家庭で使われなくなったので、身近に炭焼きの情景を見ることは難しい。 炭がまの烟一すぢ雲に入りて鳥が音もなし湖(うみ)添の山 佐佐木信綱 炭竈をのぞきて我はあかあ…

福寿草

キンポウゲ科の多年草。早春の花。おめでたい花として正月用に鉢植で観賞されることもある。 福寿草(さちぐさ)を縁の光に置かしめてわが見つるとき心は和ぎぬ 斎藤茂吉 福寿草のいま咲く鉢をあたらしき光に置けば厄のがるごと 吉田政俊 福寿草黄の花のうえ宇…

下曽我の梅林

例年、梅の花咲く季節には、下曽我の梅林を訪ねる。JR国府津経由下曽我駅で下車、中河原梅林、瑞雲寺、宗我神社、城前寺、別所梅林、国府津駅へと歩くのが我が定番のルートである。花は七分咲きといったところか。それだけ花の光に生命力があふれていた。 …

椰子

狭義にはココヤシをさすが、広くはヤシ科植物の総称。主として熱帯地方に分布するが全世界で約220属2500種ある。日本にはビロウ、クログツ、ヤエヤマヤシ、ノヤシが自生。熱帯地方では、ココヤシ、アブラヤシ、ナツメヤシ、サゴヤシ、サトウヤシなど…

バラ科の落葉高木。中国原産で上代に渡来した。万葉集には119首に詠まれている。好文木、花の兄、春告草、野梅、白梅、臥竜梅、豊後梅、枝垂梅、盆梅、老梅、梅が香、梅林、梅園 などが春の俳句に詠まれている。 夕月や納屋も厩も梅の影 内藤鳴雪 月ひか…

目白

メジロ科の鳥。目の周りの白い輪が特徴で、名前の由来。英名でも "White-eye" と呼ばれる。中国語名では「繡眼鳥」で、やはり名前の由来となっている。寢る時は群れて枝にとまる習性がある。俳句では、夏の季語だが、目立つのは早春である。 相連れて目白の…

寒桜

ヤマザクラの一変種。寒緋桜と山桜の雑種らしい。花期が通常の桜より二カ月くらい早く、一月下旬には咲く。 影のごと人きて佇てり寒桜 藤崎久を 島の血を継ぎし荒眉寒ざくら 中尾杏子 うすうすと島を鋤くなり寒桜 飴山 實 寒桜をはりの花のさかりにて鳥が嘴(…

早春の熱海

今年も例年のように、熱海に梅と桜を見に行ってきた。熱海駅から梅園行きバスに乗ったのだが、市の駅伝大会が開催され、道路が交通規制され、時間がかかった。梅まつりで客を呼びながら、イライラさせるのは、企画がよくない。人も自動車も大変な数であった…

アオジ

漢字では、青鵐、蒿雀と書く。スズメ目ホオジロ科の漂鳥。本州中部以北で繁殖し、冬は暖地に移動する。高原、山地の明るい林にすみ、疎林で藪が多い場所を好む。 庭十坪市に住まへど春されば蒿雀さへづり夏行々子 伊藤左千夫 しののめに蒿雀が鳴けば罠かけて…

四十雀

シジュウカラ科の鳥で留鳥。頭と喉が黒く、頬の白色がめだつ。ツピーツピージュクジュクと啼く。 四十雀なにさはいそぐここにある松が枝にはしばしだに居よ 長塚 節 低くして手の届きなむ下枝に啼きてあそべる四十雀の鳥 若山牧水 四十雀の馬鹿がまた雌をつ…