天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

中国西部が原産地らしい。ユリ科の野菜。関東では地中の軟白部を食べる根深葱、関西では柔らかい緑葉を食べる葉葱が多い。一文字(ひともじ)ともいう。寒さに強い。鍋物、あえ物、薬味 として用いられる。風邪予防の薬効があるといい、動物園で猿たちにも与え…

早春賦―江ノ島―

江ノ島の裏の岩場は、冬潮に洗われて釣人の姿はなかった。もっともこの時期、大きな魚は釣れないようである。灯台が立つ埠頭でも雑魚が釣れているだけで、釣人の数もまばらである。正月松の内の賑わいは去って、通常の生活が始まっている。 黄の蘂に目白吸ひ…

『十年贈歌』

村田耕司さん(短歌人所属)の新刊・第二歌集である。第一歌集を知らなかったので、読み始めてびっくり仰天した。土屋文明顔負けの字余り歌があふれている。しかも、常人というか私の理解を超える作品がいくつもある。日常を詠んで、家族構成や仕事内容がそ…

猫の歌(2)

小池光の現在迄の八歌集における猫の歌は、次のようになっている。 『バルサの翼』(1978年刊行)、全285首中0首 『廃駅』(1982年刊行)、全272首中1首 『日々の思い出』(1988年刊行)、全499首中1首 『草の庭』(1995年刊行)、全593首中15首 『静物』(2…

早春賦―鎌倉・鶴ケ丘―

初春の鶴ケ丘八幡宮、東慶寺を訪れた。八幡宮の宝物殿で、例の台風で倒れた大銀杏の一部が展示されている、との記事を産経新聞の朝刊で見たのがきっかけであった。 八幡宮の源平池には薄氷が張っていた。ぼたん園では、恒例の寒牡丹が今を盛りと咲いていた。…

猫の歌(1)

日本で猫を飼い始めたのは、奈良時代からという。平安時代には、文学でもしきりにとりあげられている。猫の品種は、約40種で、犬よりは少ない。古代エジプトでは、霊獣としてあがめられていたが、わが国でも化け猫譚があるように、魔性のものと見られてい…

臘梅(蝋梅)

ロウバイ科の落葉低木。中国が原産で江戸時代初めに渡来した。花弁の外側は黄色、内側は暗紫色。特に、花の中心部まで黄色の種類を、素心蝋梅という。 一草庵蝋梅の香が日だまりに 池内けい吾 能楽堂出て蝋梅の香に佇てり 加古宗也 しらじらと障子を透す冬の…

土器

どき、かわらけ。釉薬を用いない素焼の器物で、形、文様などに時代・地域の特色が反映される。日本には、縄文、弥生、土師器、須恵器などがある。以下では、陶器やガラス器を含めた瓶についての歌も取りあげる。万葉集の長歌に、「・・・陶人(すゑびと)の作…

アロエの花

アロエは、南アフリカ原産でユリ科の常緑多年草。葉を煮詰めて汁を健胃剤、下剤などの薬用にする。ロカイとも言う。キダチロカイ、シャボンロカイ、シンロカイといった種類がある。 わが齢傾きにつつこの冬もアロエは朱き花を掲ぐる 礒 幾造 ゆくりなく咲け…

早春賦―相模川―

三が日はとうに過ぎているのに、相模国一之宮である寒川神社には、参拝の人々の自動車の列ができていた。私の興味は、相模川に沿うように伸びて構築されている「さがみ縦貫道」の出来具合であったが、完成までにはまだまだ時間がかかりそうな様子。見上げれ…

鑑賞の文学 ―俳句篇(10)―

一月の川一月の谷の中 飯田龍太『春の道』 [飯田龍太](自句自解より)幼時から馴染んだ川(狐川)に対して、自分の力量をこえた何かが宿し得たように直感した。それ以外に作者としては説明しようがない句だ。 [山本健吉]この句は、中村苑子や高柳重信の…

鑑賞の文学 ―短歌篇(10)―

昼間みし合歓(かうか)のあかき花のいろをあこがれの如く よる憶ひをり 宮 柊二『群鶏』 [千勝重次]合歓の花のあかい色は、幻影のようなほのぼのとした感じであり、それを「あこがれの如く」といったのは、適切であり緊密な表現技法というべき。暗くはない…

千両

センリョウ科の常緑小低木。関東地方から沖縄、東南アジアに分布。冬に赤くあるいは黄色に熟する果実は、観賞用で生花にする。ヤブコウジ科のマンリョウに対してつけられた。 乱れふる雪に千両の朱(あけ)の実がおぼろとなりてゆく までを見つ 吉田正俊 千両…

包丁

『長谷川櫂全句集』(但し、2004年までの七句集)とその後の句集『新年』『富士』を読み返しているが、四季折々の食材や料理を詠んだ句が多いことに改めて気付かされる。例えば、料理に必要な包丁について、これらの句集を調べると、以下のような作品がある…

早春賦―吾妻山―

晴天の新年には、神奈川県二宮町の吾妻山山頂は、菜の花畑と積雪の富士を見る人たちで賑わう。東側斜面では水仙の花盛り。まことにめでたい早春の光景である。二宮が長寿の里と呼ばれる所以であろう。右の写真は、山頂から富士を眺める定番のアングルで撮っ…

さかきはツバキ科の常緑小高木。古来神木として、その枝葉は神に供えられる。万葉集には、「奥山の榊の枝に白香(しらか)つけ木綿(ゆう)とりつけて・・・」という長歌一首のみに詠われている。古今集「神あそびの歌」や拾遺集「神楽歌」に出て来る。 神垣のみ…

山茶花

サザンカはツバキ科の常緑の小高木。常緑広葉樹林中に生育し、10月から12月にかけて白色の花を咲かせる。もとは「茶山花」と書いて「ササンクワ」と読ませていたものが「山茶花」になったという。園芸品種は120種余りある。一重咲きの御美衣、緋の袴、月…

迦陵頻伽

「かりょうびんが」、サンスクリットの kalavinka の音訳である。仏教で雪山または極楽にいるという想像上の鳥。天女のような人頭・シギに似た鳥身。妙なる声で「若空無我常楽我浄」と啼く。仏の音声の形容ともされる。この空想上の鳥を詠んだ有名な歌がある…

早春賦―鎌倉長谷―

今年の鎌倉歩き始めとして、江ノ電に乗り、極楽寺、成就院、御霊神社、長谷寺、光則寺、収玄寺と廻った。長谷寺では、素心蝋梅、冬桜、冬至梅に出会えた。光則寺でも蝋梅が咲いていた。そして収玄寺の庭の片隅に、木瓜の花を見つけた。収玄寺は、日蓮に帰依…

花八つ手

ウコギ科の常緑低木。暖地に自生、また庭木として植栽。高さ約二メートル。葉は大形で質厚く、 掌状に七〜九中裂し、葉柄は長い。晩秋の頃、梢上に花茎を出し、黄白色の五弁の小花を球状に つける。果実は球形の液果で翌年の初夏に熟し、紫黒色となる。葉は生薬…

ピラカンサ

バラ科ピラカンサ属の総称。ヨーロッパ南東部からアジアにかけて6種ほどある。常緑低木。日本には、タチバナモドキ、トキワサンザシなどがある。前者は中国原産である。ピラカンサスとも。赤い実は鳥の好物。 日なた風日かげの風とまじりふくピラカンサスに…

早春賦―城ケ島―

ずいぶん久しぶりに訪ねた。以前に、北原白秋の足跡をたどるべく、休日になるたびに来たものであったが。城ケ島のバス停付近と観光船の停留所付近の店舗が取り払われて駐車場が増えていた。白秋による町興しに代って、観光船(島めぐり、海中観察)や魚市場…

ユズリハ

ユズリハ科の常緑高木で雌雄異株。名前の由来は、春、新芽がでるときに、その場を譲るように古い葉を落すことにある。この葉は、正月の飾りに使う。親が子を育て家が代々続いていくように見立てて縁起物としたのである。古名はユヅルハ。漢字では、譲葉、交…

蜜柑

むかし、食用柑橘類はタチバナと総称された。奈良時代、その実を「香の菓(かぐのこのみ)」と言った。蜜柑という文字は、室町時代の『尺素往来』という書物に初めて現れるという。 我友は蜜柑むきつつしみじみとはや抱(いだ)きねといひに けらずや 斎藤茂吉…

箱根駅伝

始まりについて、箱根駅伝公式Webサイト から引用する。 1917年(大正6)に日本で初めての駅伝となる「東京奠都五十年奉祝・東海道駅伝徒歩競走」が、京都三条大橋と東京・上野不忍池間で行われた。読売新聞社が上野で開く大博覧会の協賛イベントとして企画…

鑑賞の文学 ―俳句篇(9)―

元日や手を洗ひをる夕ごころ 芥川龍之介『澄江堂句集』 [山本健吉]大正十年作。・・・元日を常に意識の上での標識として、年の瀬は過ぎて行ったのであるが、その元日もたちまち夕べとなってしまったのである。そのような微かな哀愁が、この句を陰翳深いも…

鑑賞の文学 ―短歌篇(9)―

生きてゐる証(あかし)にか不意にわが身体』 割(さ)きて飛び出(い)で暗く鳴きけり 前川佐美雄『捜神』 [伊藤一彦]この歌で大切なのは、「身体(からだ)割(さ)きて飛び出(い)で暗く鳴」いたものの正体ではない。それは佐美雄自身にも分らぬものと言っていい。…

今年の元日

朝八時近くに食事をとり、BSテレビ(正倉院の国家珍宝帳に関する話)を見た後、近くの諏訪神社と遊行寺に参拝した。わずかな賽銭に大願成就を願うのが庶民である。遊行寺の宝物館にも寄った。帰りは、境川の川辺を歩いた。人を恐れぬ鶺鴒の雛に出会った。 …

南天の実

メギ科の常緑低木で東海道以西に分布。南天は、難を転ずるとの言伝えあり。日本の南天は自生のものかどうかは不明という。果実の色には、白や紫もあるというが、まだ見たことはない。 実南天十二神将眉あげて 野澤節子 南天のしげみに降りてつもらねばくれな…

石蕗

つわぶき。キク科ツワブキ属の多年草。イシブキ、ツワともいう。ツワブキの名は、艶葉蕗「艶のある葉のフキ」から転じたという。日本では福島県・石川県以西から四国、九州、琉球諸島に、日本国外では朝鮮半島、中国、台湾に分布する。低地から山地の日陰や…