天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2011-04-01から1ヶ月間の記事一覧

春愁(1)

花の時期が過ぎて若葉の季節。若者は五月病にかかりやすい。春愁という言葉もある。 江ノ島に寄せる満ち潮は、島の左右から回り込み、弁天橋の下付近でぶつかり飛沫をあげて御神渡りのような様相を見せる。 福島原発事故の後処理の行方が気に掛る。いつもは…

馬酔木の花

馬酔木は、あしび、あせび、あせみ などと言う。シャクナゲ科の常緑低木。葉には毒素があり、馬が食べると酔うという。名前の由来である。 池水に影さへ見えて咲きにほふ馬酔木の花を袖に扱入(こき)れな 万葉集・大伴家持 庭隈のあしびの花に夕雨のあかるう…

鑑賞の文学 ―短歌篇(16)―

高橋睦郎は、歌集『爾比麻久良』(新枕の意味)において、枕詞を現代短歌に生かす試みをしている。更に新しい枕詞を作りだしている。その趣旨は次のようである。 「枕詞と総称されるいまでは顧られることのほとんどない言葉の 古枕を、記憶の庫から取り出し…

桃の花

桃は中国原産のバラ科の落葉樹。観賞用の花桃は園芸品種で、庭木や切花用に栽培される。花弁は八重で濃紅色または純白。小さな実をつける。 春の苑紅にほふ桃の花下照る道に出で立つ少女 万葉集・大伴家持 桃の花ながるる色をしるべとて波にしたがふ春の盃 …

とりが啼く・・・

もはや花は散った頃。それでも未練がましく手近の吾妻山に行って見た。葉桜になりつつあり、シャガの花や連翹、山吹が花盛り。石楠花も見かけた。 花ちるやみな俯ける石地蔵 鐘楼の鐘を鳴らさず花吹雪 旋回し花の下ゆく滑り台 連翹の花をまぶしむ吾妻山 鹿う…

蓮根

れんこん、はすね。蓮根の収穫期は年末である。葉が枯れた後の蓮田で掘られ、正月用に出荷される。 掘り出して蓮根の四肢散乱す 能村登四郎 蓮根掘這い上りたる道暮れて 秋篠光広 荒縄で手足を洗ふ蓮根掘り 館 容子 大賀ハス水のうえしげく咲きほこるその下…

しきしまの・・・

東日本大震災わけても福島原発事故の尽きざる恐怖に怯えながらも、そこここの桜の花を廻って堪能した。見納めは、鎌倉源氏山の桜。戦乱の世にあって桜に魅入られた西行の心が少しわかった。 首塚の石に花ちる二、三片 花ちるも俊基朝臣墓所静か うぐひすやこ…

原発の歌

東日本大震災による東電・福島原発事故は、全世界に大変貴重な教訓を残したように思う。一言で言えば、前提条件が崩れた時の対処法をしっかり立てておくこと。絶対安全などあり得ないのだ。即ちミスを犯す、事故は発生するという認識の下で、その場合の対処…

海棠の花

ハナカイドウとも。中国原産のバラ科の落葉低木。「海棠睡り未だ足らず」は、唐の玄宗皇帝が楊貴妃の酔後の姿を評した言葉。雨にぬれた花海棠の風情を美人のうちしおれた姿に譬えたもの。わが馴染みのこの花は、鎌倉の妙本寺や光則寺で見ることができる。 海…

木五倍子

「きぶし」と読む。キブシ科の落葉低木。葉のでる前に枝先に花穂が並んで垂れ、四弁の淡い黄花をびっしりとつける。雌雄異株。果実は黒色染料になる。また材は、杖・柄・楊枝などになる。果実に含まれるタンニンが、黒色染料の五倍子(ぶし)の代用になると…

すみれ

漢字で菫と書く。スミレ科の多年草。つぼすみれは、白い五弁花に 濃紫の筋が通る。歌には万葉集の時代から詠まれており、次の山部赤人 の歌は、あまりに有名。 春の野にすみれ摘みにと来しわれぞ野をなつかしみ一夜寝にける 万葉集・山部赤人 山吹の咲きたる…

ユキヤナギ

バラ科の落葉低木。河岸の岩上などに自生。茎の高さ1.5メートルに達し、葉は披針形。春、葉とともに、雪白・5弁の多数の小花をつける。観賞用に栽培。コゴメバナ。コゴメヤナギ。コゴメザクラ。漢名、噴雪花。平安時代から栽培されたという。 雪柳花ちりそめ…

さくら花(3)

鎌倉若宮大路の桜を見に行った折に、源実朝はどんな桜の歌を詠んだのか気になったので、彼の『金槐和歌集』を調べてみた。五十五首ほどが載っている。新古今調である。五首あげておこう。 櫻花ちらばをしけむ玉ほこの道ゆきぶりに折てかざさむ みち遠み今日…

花の湘南平

所属する俳句結社「古志」四月号に、同人の一句として、「花」の題詠が載っているが、わが一句は次のもの。 園児らをあそばす花の湘南平 これは過去の情景だが、掲載されたのを機に、また見に行ってきた。西側から入って湘南平を抜け、東の高麗山を通り、高…

さくら花(2)

吉野に棲んで西行を慕った現代歌人に、前登志夫がいる。2008年4月5日に亡くなったが、彼の桜の歌を、以下にいくつかあげておこう。 さくら咲くその花影の水に研ぐ夢やはらかし朝の斧は 『霊異記』 咲く花の枝にねむれる夜の禽の泪はくろく紙にひろごる 『縄…

さくら花(1)

さくらの歌といえば、西行。その足跡を偲んで、京都(東山)、高野山、伊勢(二見浦)、四国(白峰陵)、吉野(西行庵)、小夜の中山、白河の関、多賀城跡、松島、塩釜、平泉などを尋ねたことがある。奥吉野の西行庵には二度ばかり訪れた。それはさておき、…

花の若宮大路

さて今日はどこの桜を見に行こうか、とこの時期は迷いに迷う。案外身近なところに行くと図に当たるものだ。それで鎌倉に行って来た。若宮大路の段葛は、まさに見ごろ。見事の一言に尽きた。この時期を逃してはならじと、更に鎌倉駅から鎌倉山にバスで向った…

小田原の桜

小田原の桜の名所では、城内と西海子小路(さいかちこうじ)が見馴れた場所である。でもまだ満開には早過ぎた。驚いたことに小田原文学館奥の白秋童謡館の南門が、今回の東日本大地震で倒れていた。 冷凍の干物売る店閉したり目途たたざる計画停電 整地され偲…

清明のしだれ桜

今年も恒例により、小田原入生田にある長興山のしだれ桜を見に行った。八分咲きといったところだが、見事である。東日本大震災に配慮して、関東地方では花見を自粛しているためか、例年になく客は少なかった。 早川を挟んで長興山の向かいの石垣山にも行って…

かたくりの花(2)

カタクリはユリ科の多年草。古くは、堅香子(かたかご)、かたかし とも。北海道から本州中北部の山林に生える。朝鮮半島やアムールなどにも分布するという。鱗茎から片栗粉がとれる。 もののふの八十をとめらが汲みまがふ寺井の上の堅香子の花 万葉集・大伴家…

かたくりの花(1)

今年もその時期になったので、「かたくりの里」に出かけた。JR橋本駅のバス停から「三ケ木」行きに乗り、「城山総合事務所入口」で下車、通りがかりの人に道を尋ねながら歩いて30分ほどかかった。帰りは、JR橋本駅間の臨時の直通バスに乗る事ができた…

白木蓮

モクレン目モクレン科モクレン属の落葉高木で中国原産。モクレンというと、濃紅色の花を咲かせる紫木蓮を指す。ハクモクレンの名は、モクレンに似て花が白いところからきている。春、新葉が出る前に枝先に白い卵形の花を多数咲かせる。花に芳香があり、上向…

辛夷(こぶし)

モクレン科の落葉高木で、ほぼ日本全土で生育する。開花前のつぼみが子供のこぶしに似るところからの命名という。右の画像は、シデコブシという種類で、幤のように花片の幅が狭く、枚数が多い(通常のコブシに比べ、2倍から3倍)。 時しあればこぶしの花も…

鑑賞の文学 ―詩 篇(3)―

岡井隆の詩集『注解する者』(思潮社、2009年7月刊)を読み終わった。注解する者とは岡井隆自身のことである。詞書やあとがきが短歌と一体化して詩集になった経緯が、小池の書評からよく分かるので、それをここで紹介しよう。 岡井が短歌に盛んに詞書をつけ…

鷹取山の磨崖仏

鎌倉長谷の裏山で山桜が咲いているのを見かけたので、東逗子の神武寺の桜も咲いているはずと、出かけたのだが、蕾はまだ固い。早すぎたのだ。しかたなく、神武寺から鷹取山の磨崖仏を抜けて京急・追浜駅に向った。駅の近くに「雷(いかづち)神社」があったの…

節分草

キンポウゲ科の多年草。関東以西の雑木林に生える。節分のころに開花するところからの命名。しかし実際は、山地での開花は3月上旬なので、節分には間に合わない。乱獲や環境破壊によって今や希少植物になっているらしい。右の写真は、神奈川県相模原市城山…

猩々袴

「ショウジョウバカマ」は、ユリ科の常緑多年草。北海道から九州にかけて、山地の湿った場所に生える。早春の花。 わが庭に絶えしが中に惜しきもの吉野の春の猩々袴 植松寿樹 しやうじやうばかまただ一本になり花咲けば近づき かがみ顔近づけぬ 中野菊夫 猩…

東一華

「あずまいちげ」は、キツネノボタン科の多年草。日本の中部・北部の山地に自生する早春の花である。花は白色だが、ときにうす紫色を帯びる。 谷を行き明るきに心あそびたりあづま一華を一握りほど 松村英一 にんじんは明日蒔けばよし帰らむよ東一華の花を閉…

三月末の鎌倉長谷

節電のために車内の照明を消した江ノ電に乗って定番の散策ルートに向った。極楽寺、成就院、長谷寺、光則寺 と廻った。極楽寺の山門にはシートが被せてあって、修理中であった。長谷寺では、白木蓮、三椏、幤辛夷、寒緋桜、木瓜などの花を見た。光則寺土牢の…

雪割草(ゆきわりそう)

サクラソウ科の多年草。日本全土の山地に生える。雪の中に花を開くことから名前がついた。早春の花である。 雪割草庭に咲きいで去年の春地におろししこと思ひ出づ 半田良平 三つ葉なすうてなの上につつましく目をみはりたる雪割草の花 若山貴志子 雪割草むら…