天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

鉄線

キンポウゲ科のつる草。中国が原産で寛永年間に渡来した。六、七月に、直径5〜8センチの白または淡紫色の六弁花をつける。直径10センチ以上の花は、クレマチスとの交配種で、晩春から夏に四枚から八枚のがく片を開く。 よきものは少くて足るとおもへるを…

鑑賞の文学 ―短歌篇(17)―

森くらくからまる網を逃れのがれひとつまぼろしの 吾の黒豹 近藤芳美『黒豹』 [吉田 漱]「森くらくからまる網」は、いまもにがく作者にまつわりつく青年期として戦中の暗い体験。「吾の黒豹」は、また作者の兵たりし日々のことであろうか。その記憶ばかり…

アマリリス

彼岸花科ヒッペアストラム属の多年草で、熱帯アメリカ原産。5月から6月に、大輪のラッパ状の花が横向きに開く。花の色には、白、赤、橙 などがある。 あまりりす息もふかげに燃ゆるときふと唇はさしあてしかな 北原白秋 紅の花アマリリス咲き残る地(つち)…

五月の北鎌倉

新緑の影が心地よい円覚寺、東慶寺、浄智寺の境内を歩いた。円覚寺の松嶺院では、入園料百円で境内の花を見て回った。垣根に咲く鉄線の花が印象的であった。東慶寺では、翁草に初めて出会った。またわずかな都忘れの花を見つけることができた。浄智寺では卯…

翁草(おきなぐさ)

キンポウゲ科の多年草。暗赤色の花が咲いた後に白毛のある花托が伸びて球状になり、翁の白髪頭のようになる。古くは、白頭翁とか根つこ草とも呼ばれた。 芝付の三浦恕Wなるねつこ草相見ずあらば吾恋ひめやも 万葉集・作者未詳 しらけゆくかみには霜やおきな…

卯の花

空木(うつぎ)の花のこと。空木はユキノシタ科の落葉低木で、北海道から九州にかけて日当りのよい山野にはえる。5月から6月に花が咲く。「卯の花のにおう垣根に・・」という唱歌があるように、庭木、生垣、畑地の境木として利用される。枝が中空なので空…

花水木

水木はミズキ科の落葉高木。アメリカヤマボウシとも言い、北米原産である。山地に自生し、枝は扇状に広がる。白い花の場合、遠くから眺めると雪をかぶったようである。幹に樹液が多い。 水木咲いて中宮門主の恋古りし 渡辺水巴 庵ちさし深山みづきの花蔭に …

鰐(わに)

爬虫類ワニ目の総称。アリゲータ科とクロコダイル科の二種に大別される。23種ほどが地球の熱帯、亜熱帯の淡水ならびに入江付近に生息する。6500万年前の中世代末には、現生種をすべて含むワニが現れた。眼に瞬膜がある。卵生。なお、わが国では、古く…

メルトダウン

五月の「短歌人」東京歌会は、上野の東京文化会館での開催。天気が良かったので、少し早目に来て不忍池をめぐった、昨今の「福島原発」の情況のニュースに、思考が占領されて、花鳥風月は思い浮かばない。あの大地震の後に、実は原子炉ではメルトダウンが始…

たんぽぽ

キク科の多年草。日本には十種程度が自生している。カントウタンポポ、カンサイタンポポ、セイヨウタンポポ、シロバナタンポポ など。花言葉は「真心の愛」、「思わせぶり」。 この愉快な名称の語源には、諸説ある。もっともらしい説をあげると、江戸時代に…

ヒメジオン

北米原産の帰化植物。ヒメジョオンが正式名称らしい。漢字では姫紫苑あるいは姫女苑などと書く。春紫苑に似るが、蕾は直立する。 ひめじをん群れ咲く見ればこの原のわが通ひ路の久しくなりぬ 柴生田 稔 ひめじをん白き群落に身をしづめ磁性まぎれなく北を指…

伊豆熱川

今年の観光地は、東日本大震災に対する自粛ムードのせいか、人出が随分と減ったらしい。各旅館やホテルは、通常の料金を減額して集客に努めたようだ。その恩恵に浴するべく、久しぶりに伊豆熱川に泊った。ワニ園・バナナ園がある。海水浴シーズンでもないの…

小田原城・御感の藤

藤の花の季節になると毎年訪れるスポットのひとつである。ただし、この藤の経歴は、少しややこしい。もともとこの藤は、小田原城二の丸御殿に鉢植されていた大久保公愛玩のものであったが、明治維新の後に、西村氏が買い受けて育てていた。大正天皇が皇太子…

オオデマリ

スイカズラ科の落葉低木。藪手鞠の変種。 鞠よりも手にあたたかし手毬花 岡 星明 曇天の耐へて耐へをるおほでまり 篠田悌二郎 雨がへる手まりの花のかたまりの下に啼くなるすずしき夕 与謝野晶子 むらがりて真白き花の珠と咲くおほでまり花子が毬にもが 宇都…

八橋かきつばた園

愛知県知立市八橋町の無量寿寺境内にある。このあたりが「伊勢物語」の在原業平ゆかりの史跡であることを初めて知った。古くから文人墨客が訪れた歌枕なのだ。 園内には、次の有名歌の歌碑と貴公子然とした業平像(右の画像)がある。 からころも きつつなれ…

ハルジオン

春に咲く紫苑と見立てて、「春紫苑(はるじおん)」の名がついた。大正年間に渡来した北米原産の帰化植物。ハルジオンとヒメジオンはよく似ていて大変紛らわしい。見分け方は、つぼみのときに、ハルジオンは下を向いているのに対して,ヒメジオンは上を向い…

こでまり

中国原産のバラ科の落葉低木。小さな花が丸く集まり、手毬のように咲くところからの命名。江戸時代から茶花として、愛用されていたという。 こでまりの枝より透けて遠筑波 角川春樹 こでまりや床屋の裏の文士邸 赤沼登喜男 小でまりに寺の東司の隠れたり 村…

日本特産のマメ科の落葉木本性つる植物。本州以西の山野に野生する。 くたびれて宿借るころや藤の花 芭蕉 恋しけば形見にせむとわが宿に植ゑし藤波いま咲きにけり 万葉集・山部赤人 緑なる松にかかれる藤なれどおのがころとぞ花は咲きける 新古今集・紀貫之 …

木瓜(ぼけ)の花

中国原産、バラ科の落葉低木。日本には江戸中期に渡来したらしい。花の色によって、「緋木瓜」「白木瓜」「更紗木瓜」などがある。更紗木瓜は、紅白混じった花。実は薬用になる。 古木瓜を咲かせて陶師沈寿官 清崎敏郎 腹空けばそのことばかり更紗木瓜 八木…

シャガの花

アヤメ科の常緑多年草。地下の根茎で増える。中国から渡来したものが野生化したという。漢名は胡蝶花。 胡蝶花の根に籠る蚯蚓よ夜も日もあらじけむもの夜ぞしき鳴く 長塚 節 なぞへには胡蝶花(しやが)のしげみに風ふきて貧しく住みし 去年(こぞ)のおもかげ …

鯉のぼり

出世魚の鯉の滝登りにちなんで、端午の節句にたてる。五月鯉とも。 人の家の鯉のぼりを見せむとて嬰児(みどりご)抱き外に 出でたり 岡 麓 子をもちて鯉ののぼりをたてにけりふるきならひに幸を 祝(ほ)がむため 平福 百穂 両岸の街には今朝は鯉幟みなかみ遠く…

春田

苗を植える前の田。鋤き返された田や水を入れた田もある。あるいはげんげを咲かせた田もある。 みちのくの伊達の郡の春田かな 富安風生 野の虹と春田の虹と空に合ふ 水原秋桜子 長湯してまなこの曇る春田かな 秋元不死男 北潟の遠くけむれる春田かな 深見け…

大場城址

思いついて初めて行く場所となると、路線を探すのに無駄が多い。今回もそうであった。小田急線の善行駅で下車し、うろうろ歩いたあげく、駅に戻りバスに乗った。のはいいが、かなり歩いてやっと城址公園に辿りついた。帰りは、なんと藤沢駅に直通のバスに乗…

山吹

バラ科の落葉低木。北海道から九州の山野に自生する。うっかり連翹と見間違うこともあるほどよく似ている。 かはづ鳴く神名備川に影見えて今か咲くらむ山吹の花 万葉集・厚見王 山吹のにほへる妹が朱華色(はねずいろ)の赤裳の姿 夢に見えつつ 万葉集・作者未…

豌豆の花

豌豆は西アジア・南欧原産のマメ科の野菜。冷たい気候を好み、耐寒性に優れる。わが国の主産地は北海道。 豌豆の花の飛ばんと風の中 勝又一透 ゑんどうの百花鎮めて朝日出づ 大串 章 発展橋にかからん道の両側に畑つくりしてゑんどうの花 醍醐志万子 新墓の…

春愁(2)

青春時代の春愁は、もてあますほどひどいものだった。里山に来て遊ぶ園児らは元気いっぱい。春愁のかけらも見出せない。 古民家の庭には古き鯉幟 たんぽぽや花のをはりのビッグバン 里山の苗代にちる桜かな 谷戸の田の畔に花咲くハルジョオン 登校の水木花咲…

花いばら

茨は、古くは、うまら、うばら と称した。イバラは、とげのある低木類の総称で、カラタチ、ノバラなども含む。 ここかしこ岸根のいばら花咲きて夏になりぬる川ぞひのみち 木下幸文 旅衣わわくばかりに春たけてうばらが花ぞ香に匂ふなる 加納諸平 五月雨にな…

松の花

松は、晩春、単性花を雌雄同株に開く。雌雄花ともに花被はなく、雌花は球状に集まって新芽の頂につき、雄花序は穂状で新芽の下部に密生する。果実は、多数が集まって球果をなし、松かさと呼ばれる。 生きてまた松の花粉に身は塗(まみ)る 山口誓子 指弾して指…

結社「円座」と『武藤紀子句集』

俳句結社誌「古志」で題詠欄の選を担当されていた武藤紀子さんが、新結社「円座」を立ちあげられた。四月号が創刊号になっている。そして、ふらんす堂の現代俳句文庫から『武藤紀子句集』が刊行された。これは、これまでの三句集『円座』『朱夏』『百千鳥』…

連翹

レンギョウはモクセイ科の落葉低木で中国原産。平安時代に中国から渡来した。さし木や株分けにより増やす。 連翹の花のたわみをとびこえて啼くうぐひすの時にちかづく 太田水穂 いにしへの筑摩(ツカマ)の出で湯 鄙さびて、麦原(ムギフ)に まじる 連翹の花 釈…