天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

アガパンサス

南アフリカ原産、ヒガンバナ科の多年草。淡紫青色の涼しげな色彩からか、和名では紫君子蘭という。切花、花壇、鉢植 などにされる。実生では花が咲くまで4,5年かかるので、株分けして増やす。花言葉は「知的装い」。 梅雨ぐもる庭の一隅茎たちてアガパン…

冷奴(ひややっこ)

面白い命名だが、たぶん、「ひやっこい」という方言からきたものだろう。冷した豆腐を四角に切り、葱、青紫蘇、鰹節などの薬味を添えて、生醬油あるいは柚醬油をかけて食べる。奴豆腐とか冷豆腐とも。 奴豆腐をわが欲る夕べ門にたちちんちん豆腐を左手は 待…

冷酒(れいしゅ)

冷や酒ともいう。暑い夏は冷やで日本酒を飲む。 まちわぶる君が冷酒の盃の空しさに今日は野ばら を浮けぬ 若山喜志子 秋風の立たば冷酒も酌みがてになるを帰り来惜しき このごろ 若山喜志子 多摩川の清き流れに舟泛けて友と酌む酒の冷やも よろしき 長谷川銀…

ほたるぶくろ

キキョウ科の多年草。東アジアの山野にはえる。花の色は、紅紫から白まで。釣鐘草ともいう。ホタルブクロの変種として、ヤマホタルブクロがある。山地に多く生育する。ほとんど外見は変わらないが、萼片の間が盛り上がっている。 いろ淡きほたるぶくろの花ゆ…

青潮

梅雨のさなかには行けなかった二宮町の吾妻山に登ってきた。その前に例によって、二宮の梅沢海岸に坐って、ぼんやりと梅雨明けの障u潮の海を眺めた。ところで私は何故にこうも吾妻山やこの二宮海岸に拘るのか、読者は疑問に思われるかもしれない。以前にも紹…

合歓(ねむ)の花

合歓は、ねぶ、ごうか、とも読む。マメ科の落葉高木。葉は刀身状。夜には眠るように閉じる。といっても私は未だ確認していない。六、七月に淡紅色の五弁花を開く。万葉集では、三首に出て来る。 夕日さす舟に疊や合歓の花 長谷川櫂 合歓の木の花の眠れる夜空…

無花果(いちじく)

クワ科の落葉小高木。小アジア原産で江戸初期に渡来した。別名、唐柿。 無花果や手の腹よりもやはらかな 長谷川櫂 少女子(をとめご)の乳くびに似たる無花果の実のなりそめは 愛(うつ)くしきかも 岡 麓 いきどほろしきこの身もつひに黙しつつ入日のなかに無花…

時代により変遷があるという。 万葉時代: ツユアオイ科の多年草。春から秋に淡紅色の五弁花が咲く。 平安時代: 二葉葵のこと。徳川家の家紋になった。ウマノスズクサ科 の多年草。早春に紅紫色の釣鐘状の花が咲く。京都加茂神社 の葵祭の神事に使われた。 …

鑑賞の文学 ―俳句編(19)―

長谷川櫂著『子規の宇宙』は、購入してからかなりの期間、棚ざらしになっていた。正岡子規について、周知のことが書かれているのだろうという思いが、読み始める意欲を削いでいたのだ。本棚に目をやるたびに、気になっていたので、ある日手にとって初めから…

くちなし

漢字では、梔子と表記。アカネ科の常緑低木。花は散る前に黄変する。果実は紅黄色で、食品用染料になる。 ゆくりなく涙ながるる夕べなり花くちなしの白きあまりに 下村とし はやく昔になれよと心かなしみし昔の香もて梔子は咲く 馬場あき子 くちなしの花のさ…

花ざくろ

ザクロはインド北西部やイランが原産で、わが国には平安時代以前に渡来したという。7,8メートルの高さになる。夏に開花、秋に果実を結ぶ。 怨念のしたたる朱にざくろ咲き女(をみな)は一人 棲む門閉す 富小路禎子 長かりしわが昏々を照らすごと柘榴は朱の…

梅雨明けて

桜の季節以来になったが、大磯、湘南平を歩いてきた。雨もよいの日々は、山野への外出は控えるので、足腰が弱まる。従って久しぶりに山坂を登ると大汗をかき、この時期だけに熱中症気味になる。自動販売機で買ったビタミンやローヤルゼリーの入った清涼飲料…

鑑賞の文学 ―短歌篇(19)―

きみがため二年続けし連載の『うたの動物記』が本になりたり 小池 光(短歌人・7月東京歌会) 日本経済新聞に連載された同名の記事が本になったのである。初句の「きみがため」とは、昨年末に亡くなった夫人のこと。執筆の期間、夫人は病床にあった。夫人を…

夏椿

ツバキ科の落葉高木。樹皮は滑らかで褐色、古くなると剥離して独特の模様を生じる。シャラノキ、サラノキとも呼ばれる。沙羅双樹とは別物だが、よく混同される。 沙羅の花咲きて夕虹かこみけり精舎に雨のやみしひととき 伊藤宏見 この年のはだれとなして夏椿…

桃の実

明治期に中国から天津水蜜や上海水蜜が輸入され、改良を加えて大正時代に普及した。万葉集に八か所でてくる「桃」は山桃(楊梅)らしい。桃は、古来中国では、神仙・長寿の果物とされた。また邪気を払う呪力があるとされ、日本書紀・神代の巻では、イザナギ…

木いちご

バラ科のキイチゴ属。春に白い五弁花をつけ、のちに黄色の実を結ぶ。 道のべの木いちごの花にほへるをあらそはなくに 蜂ひとつゐる 斎藤茂吉 木苺のいまだ青きをまがなしみ嚙みてぞ見つる雨の 山路に 古泉千樫 つぎつぎに白き花咲く木苺の黄の実を結ぶ逝く春…

小判草

稲科コバンソウ属の一年草で地中海沿岸地方が原産。明治初年に渡来し、観賞用に栽培された。タワラムギとも言い、夏の季語になった。 奥入瀬の風が揺らすよ小判草 石川星水女 舟を待つ夕日の色に小判草 浜 福恵 亡きを偲ぶ木草年々に殖えゆきて今日は佇む小…

月見草

北米原産のアカバナ科の二年草。夕方開花し、翌日の日中にしぼむ。葉は細長く鋸歯状。江戸時代には栽培されていたが現在はあまり見られない。近縁のマツヨイグサ、オオマツヨイグサを指すことが多い。いずれも北米原産。これらは、次の竹久夢二の歌「宵待草…

山桃

ヤマモモ科の常緑高木。庭木や街路樹にされる。関東以西から沖縄、東アジアの暖かい山地にはえる。6,7月に実が熟し食べられる。樹皮は褐色の染料になる。別名として楊梅(ようばい)、山桜桃、火実などがある。 枝かはすやまももの木の夏木立わがみづいろの…

桑の実

桑はクワ科クワ属の落葉樹。夏に結ぶ実は、緑色から赤色さらに黒紫色に熟していく。 うららかに雲雀あがれば幼児に桑の実くはせしばし 居りけり 土屋文明 生あたたかき桑の実はむと桑畑に幼き頃はよく 遊びけり 佐藤佐太郎 裏庭にひともとありて界隈の人らは…

梅雨さなか

今年は例年になく暑い、と感じる。世界のそこここで豪雨、竜巻など気象が大規模になっている。節電のために、わざわざ扇風機を買いにいってきた。できるだけエアコンを使わないようにするためである。昼夜、全ての部屋の窓を開けているのだが、明方にならな…

半夏生

「はんげしょう」は、夏至から十一日目、今年は七月二日であった。この頃には半夏(カラスビシャク)という毒草が生えるのでこの名があるという。右の画像がその植物である。昔、この植物の毒気が大気中に立ちこめるといって、当日は畑の野菜を採るのも控え…

紫陽花

アジサイ科アジサイ属の植物の総称。学名は「水の容器」という意味の「ヒドランジア」あるいは「ハイドランジア」。ガクアジサイは日本原産である。花弁状の小さな花が集まって咲くことから、「あつめ咲き」が語源という。漢字表記の「紫陽花」は唐の詩人・…

枇杷

バラ科の常緑高木。十一月頃に白い花が咲き、翌年六月頃黄色の果実をつける。房州に多く生産されるらしい。 大き枇杷もぎておとせば吾(わ)弟(おと)らが麦藁帽に うけてけるかな 北原白秋 しめやかに雨過ぎしかば市の灯はみながら涼し枇杷 うづたかし 長塚 節…

さくらんぼ

日本のさくらんぼは、バラ科の果樹オウトウの果実。実桜と呼ぶ欧州系の甘果オウトウで、明治初年に渡来したという。梅雨の少ない地方で作られ、山形県が主産地。 輸入もののアメリカンチェリーは、主にアメリカ西海岸で取れる。代表品種はビング種で、輸入量…

岩煙草

イワタバコ科イワタバコ属の多年草で、福島県以南から九州にかけて分布。わが近辺では、鎌倉の谷戸の崖によく見かける。特に、東慶寺墓地の崖のものは、よく知られている。名前の由来は、葉が大きくて「タバコ」に似ているところから。6月から8月ごろ、花…

揚羽蝶

鱗翅目アゲハチョウ科。春から夏にかけて出て来る。幼虫はカラタチ、ミカン、サンショウなどの葉を食べて蛹で冬を越す。東アジアの特産で熱帯には分布しない。 揚羽蝶花をくづして去りしよりふたたび庭の 光の閑さ 吉植庄亮 揚羽の蝶来たりてとまりしばらく…

ツメクサ

クローバーのことで、欧州原産の多年草。シロツメクサ、アカツメクサがある。わが国には、明治期に移入されたという。ただ、江戸時代に、オランダからガラス器を船で日本に運ぶときに、割れないように緩衝材としてガラス器の間につめたところから、「詰め草…

おがたま

小賀玉の木はモクレン科の常緑高木。日本南西部の温かい土地に自生する。花は、葉腋に少し紫色を帯びた白色の小花で、芳香がある。材床柱に、葉は香料に使われる。黄心樹、招霊樹などの漢字を当てることも。 みよし野の吉野の滝に浮びいづる泡をかたまの 消…

とくさ

漢字では木賊を当てる。シダ類トクサ科。根は横にのびて地上の茎を養生する。縦に細かい縞があるのでものを磨くのに使われる。刈り取りは秋。 風吹いて涼しき音の木賊かな 長谷川櫂 とくさかるそのはら山の木の間よりみがきいでぬる 秋の夜の月 源 仲正 狭き…