天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

鬼百合

ユリ科の多年草で、北海道から九州の山野に見られる。葉腋に濃い褐色のむかごがつく。花片には黒紫の班がある。中国からの渡来種というが、詳細は不明。 鬼ゆりはまこと夏花濃みどりの切れのよき葉も 力にみちたり 宇津野 研 官能にさも似て逆光 恍恍と黒く…

山百合

日本特産のユリ。北海道、関東地方、北陸地方を除く近畿地方以北の山地に分布する。多糖類の一種グルコマンナンを多量に含み、縄文時代には既に食用にされていたという。次の万葉集の歌の「草深百合」や「さ百合」は、山百合のことらしい。 道の辺の草深百合…

百合

ユリ科ユリ属の総称で多年草。世界には約100種、日本には15種が自生するという。姫ゆり、白百合、黒百合、鉄砲百合、鬼百合、山百合 など。万葉集には十一首に詠まれている。「ゆり」の語源は、「揺り」にあるという説がある。また漢字の当て字は、球根…

八月折々

こう暑いと思いきって数学や物理学関係の本を読んで、頭の中をスッキリしたくなる。これは学生時代の夏休みに、高木貞治『解析概論』を汗だくだくで読んだ思い出が遺伝子となっているせいかもしれない。それでこの夏は『「余剰次元」と逆二乗則の破れ』とい…

ハイビスカス

アオイ科の常緑低木。沖縄では、仏桑花、琉球むくげというらしい。色には、赤、黄、橙、紫紅、桃、白などがある。ハワイの州花。 何にためらいありて訪わざりし歳月を眼に沁みてハイビスカス の花鮮やけく 近藤芳美 冬越えしハイビスカスの咲ける紅ひと日ふ…

里山の夏

私がよく訪ねる里山は、藤沢市の新林公園、横浜市の舞岡公園、座間市の谷戸山公園の三か所。都会に住みながらありし日の田舎を偲ぶよすがとして、こうした里山を訪ねてみるのである。 里山に水の音聞く青田風 翡翠の池にせり出す合歓の花 葉の蔭に梨の実ふと…

泉(2)

俳句に詠まれた泉を、飯田龍太全句集と長谷川櫂全句集から集めて比較してみよう。 飯田龍太の場合: 鳴る泉未知が高価の青作家 『童眸』 真黒な牛の尻にも跳ぶ泉 『童眸』 顔の辺を深山泉の声とほる 『春の道』 草泉照れば諸木の齢古る 『山の木』 長谷川櫂…

サルビア

シソ科の一属。一般には薬用にするセージあるいは観賞用に栽培されるものをさす。種類によって次のように原産地は異なる。和名から花の色が分る。 [種類] [和名] [原産地] スプレンデンス ひごろもそう ブラジル パテンス そらいろさるびあ メキシコ …

泉(1)

湧き出る清冽な水。今年のように節電の猛暑では、言葉自体にひとしおの涼しさを感じる。谷戸で聞くその水音は、熱中症に効く。大がかりなものでは、三島の柿田川の湧水や忍野の湧水池がある。いずれも富士の伏流水が源。 今回は、短歌に詠まれた例をあげる。…

扇風機

一般に単相誘導電動機のモーターで羽根を回して風を送る機械。速度調整、首振り、タイマーなどの機能が、リモコンでも操作できるようになっている。わが国にはアメリカから明治23年(1890年)に輸入され、翌年には国産化されている。 扇風機直立馬関領…

胡蝶蘭

東南アジアに分布するラン科の一属ファレノプシス。この花は、店の新装開店や個展会場への贈り物にされることが多いようだ。 目覚めたる眼に床の間の胡蝶蘭かならず去来する 人ひとりあり 頴田島一二郎 寒き日も胡蝶蘭の花膨らみてながき命を保ちて ゐたり …

木下杢太郎

JR伊東駅から徒歩5分ほどのところに、木下杢太郎の生家が記念館として残されている。 伊東市内に現存する最古の民家という。周知のように、木下杢太郎(本名太田正雄。明治18年 ―昭和20年)は、皮膚科の医学者にして、詩人、劇作家、翻訳家、美術史・切支…

カトレア

熱帯アメリカ原産のラン科の一属。花は大輪で芳香がある。40種ほどの野生種があり、交雑により優良品種が多数作られた。温室で栽培する。洋ランの女王とも言われるあでやかな花なので、特に女性の祝い事の際の贈り物にされる。コスタリカの国花。 親しきが…

アメンボ

半翅目アメンボ科の昆虫。漢字では「水馬」を当てる。カワグモともいう。中後肢は長く、先端に毛の束があり、表面張力で体を水面に保ち滑走する。前肢は短く、食物をとるのに用いる。日本全土、中国などに分布する。日本には20種余りがいるという。俳句の…

夾竹桃

キョウチクトウ科の常緑低木。インドが原産でわが国には江戸時代に渡来したらしい。葉が竹の葉に似て、花は八重咲きが多く、色は淡紅、紅、白、黄など。 夾竹桃日暮は街のよごれどき 福永耕二 ひろしまの弔花夾竹桃の白 居升白炎 六月の曇天のもとくれなゐの…

城ケ崎

約四千年前、伊豆の大室山の噴火で溶岩が海岸に流出、大小無数の岬をつくり、波の浸蝕で数十メートルの絶壁ができた。海岸線に沿ってヒメユズリハやヤマモモの群落などがある。門脇吊橋は、長さ48メートル・高さ23メートルの構造物である。人数制限があり揺…

西瓜

「すいか」と読む。熱帯アフリカ原産のウリ科のつる性一年草。現在普及している果肉用の西瓜は、明治初年にアメリカから輸入されたという。品種は150以上というから驚く。日本ではまんまるな種類しか見たことがなかったので、南カリフォルニアに留学して…

虎の尾

ルリトラノオ、オカトラノオ、ミズトラノオ、ハナトラノオなどがある。トラノオシダの略称でもある。 虎の尾の乱れこぼるる花粉あり美しくして 吹きよせられぬ 吉田正俊 ひと流れの水をへだてて虎の尾の白き花房 ゆらゆらと立つ 長沢美津

蕎麦

中央アジア原産、タデ科の一年草。わが国に渡来した年代は定かでないが、相当古い時代に遡るようだ。年二期、春蒔きの夏蕎麦と夏蒔きの秋蕎麦がある。やせ地でも収穫できるので、日本人には、米や麦と共に重要な食料。澱粉が主体だが、高血圧症に効くルチン…

めだか

メダカ科。日本の淡水魚の中で最小。地方の呼び名は、2000を超えるというから驚く。メザカ、ウキンタ、ドンバイコ、コマンジャコ、ドンボ など。飼育品種としては、ヒメダカ、シロメダカ、アオメダカなどがある。 あめいろ の めだか かはむ とみやこべ …

畳鰯

明治初期に日本で活躍した英国人画家チャールズ・ワーグマンが描いた腰越海岸の絵がある。小動岬が見えているのみの海岸でまことにそっけない。現在は漁港としての護岸工事が進んでいる。漁港の広場でも漁港の反対側の砂浜でも、畳鰯を干している。ここから…

鑑賞の文学 ―短歌篇(20)―

革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化 してゆくピアノ 塚本邦雄『水葬物語』 [坂井修一]作詞家は、すでに幾度となく革命の歌を作ってきた。自由の賛歌であり、理想社会の導入であるべきその歌は、しかし、社会の本質をとらえたり、変革したりする力…

どくだみ

ドクダミ科の多年草。全草を煎じて利尿、駆虫薬とする。また生葉は化膿、創傷にはるなど広く用いられたところから十薬の名がある。なお「どくだみ」とは、毒を止める・矯める、を意味し、江戸時代中頃から使われ始めたという。俳句では、十薬が季語で、どく…

鑑賞の文学 ―俳句篇(20)―

先づ頼む椎の木もあり夏木立 芭蕉〈猿蓑〉元禄三年 [虚子]・・・食物にこまれば椎の実を拾って食えばいい。先ず何よりも 頼りとする椎の樹もある、その辺一面の夏木立の中に、という のである。(『幻住庵記』の一節をひきながら)・・・言う事、 為すこと…

凌霄花

のうぜんかずらは、ノウゼンカズラ科の蔓性落葉樹。中国原産の観賞用植物。高さは10メートルにもなる。茎から出る付着根で他のものにからみついて登る。有毒。 予の国に古りたる温泉宿(ゆやど)凌霄花 富安風生 のうぜんの茂吉生家に花こぼれ 原 裕 古廂の…

ワーグマンの幕末明治

神奈川県立歴史博物館は、旧横浜正金銀行本店の趣ある建造物である。ここで6月11日から7月31日まで、「ワーグマンが見た海」と題した特別展が開催された。 幕末から明治にかけて、欧米から新聞記者、軍人、技術者、教授などが多数、日本にやってきた。…

吉祥天

毘沙門天の妃で鬼子母神の子。福徳を与える美しい女神。薬師寺の吉祥天像は国宝。 右手の垂り施願(せぐわん)に澄みて指先の細み するどし吉祥天女 初井しづ枝

松葉牡丹

ブラジル原産のスベリヒユ科の春まき一年草。花の色には、赤、白、桃、黄などがある。乾燥に強く、他の草がしおれても衰えを見せないので、日照草とも言う。花言葉は、可憐・無邪気。 または見ぬ庭ぞとおもふ庭の面に松葉牡丹の くれなゐに咲く 窪田空穂 暑…

なでしこジャパン

7月17日から18日にかけての夜は、まさに熱帯夜。節電を心がけてエアコンは付けず、部屋部屋の窓を開けて扇風機を廻して寝るのだが、全く効果なし。胸かきむしりながらウトウトしているうちにカーテンが白んできた。「なでしこジャパン」は、どうなった…

うな重

重箱の上の箱に鰻の蒲焼を、下の箱に飯を詰めた料理。一つの箱でご飯の上に蒲焼をのせたものもいう。万葉集の家持の歌は、あまりに有名。以下では、うな重に限らず、鰻を食する歌をあげた。 石麻呂にわれ物申す夏瘦に良しといふ物ぞ鰻取り食せ 大伴家持 汗垂…