天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2012-01-01から1年間の記事一覧

今年の文芸活動

大晦日になったので、今年のわが活動(文芸に限る)を総括しておこう。読書にせよ旅行にせよ執筆活動に結び付けたい思いがあるのだが、やり残したところがある。来年につなげたい。 [読書] 『俳人菅騾馬』長瀬達郎、角川書店 『震災歌集』長谷川櫂、中央公…

富士の歌(1)

わが国の象徴でもある富士山は、いにしえから歌に詠まれている。万葉集の山部赤人や高橋虫麿の歌がその例である。ところで、富士山は現在でも活火山であり、将来噴火すると予測されている。噴火は平安時代に多く、800年から1083年までの間に10回程度の活動が…

鴫立庵投句箱

大磯の鴫立庵から今年の投句箱の選句結果が送られてきた。「鴫立庵」という小冊子で、第二十二世庵主・鍵和田釉子が発表しているもの。わが投句では次の二句が選に入っており、初めの句は特選レベルであった。 大磯や涼しき松の残りたる 歌碑句碑の文字を読…

竹馬

二本の竹の棒にそれぞれ足を乗せる木の台を、地の部分から適度の高さの所にくくりつけ、そこに乗って遊ぶ遊具またその遊び。久保田万太郎の次の句はよく知られていよう。 竹馬やいろはにほへとちりぢりに 久保田万太郎 竹馬の子が女教師を見おろせり 勝井良…

冬雑詠(3)

江ノ島は、散策の定番ルートのひとつだが、接岸している掃海艇を間近に見たのは初めてである。ヨットハーバーの横の灯台のある突堤に「えのしま」が横付けされており、暫く見ていると離岸して沖に出て行った。 掃海艇は、機雷を排除し、海域の安全を図るのを…

大根

年中食べている感じであるが、冬の野菜。正確にいうと、冬に収穫するのは、秋冬大根。他に春大根、夏大根がある。春の七草の「すずしろ」は、大根のこと。文字通り「おおね」とも言った。おでん、風呂吹、鰤大根などさまざまな料理に使われる。 大根に実の入…

葉牡丹

原種は欧州原産のアブラナ科の植物で、キャベツの一種であるケールを観賞用に改良したもの。江戸時代に渡来し、日本でも改良されて多くの品種ができた。7月に種を撒き、葉が着色する12月、1月に観賞する。 葉牡丹にうすき日さして来ては消え 久保田万太…

眼鏡

近視には凹レンズ、遠視や老視には凸レンズ、乱視には円柱レンズなどを用いる。歴史上では、アラビアの数学者であり、物理学者、天文学者でもあったアルハーゼン(956年頃〜1038年)が、レンズを使うと視力が助けられる可能性があることを最初に発見…

落葉(2)

落葉は冬の季語だが、落葉のついた「落葉の雨」、「落葉の時雨」、「落葉風」、「落葉時」、「落葉掃く」、「落葉焚く」 などが傍題になる。 拾得は炊き寒山は掃く落葉 芥川龍之介 落葉掃了へて今川焼買ひに 川端茅舎 落葉焚き人に逢ひたくなき日かな 鈴木真…

鑑賞の文学 ―短歌篇(33)―

塚本邦雄『西行百首』(講談社文芸文庫)を読み終った。裏表紙に書かれている一文から、本の内容を紹介している箇所を引用する。 「西行嫌いを公言して憚らなかった塚本が、晩年に至って、渾身 の力と愛憎を込めて宿敵・西行に闘いを挑んだ快著。高名な歌 を…

落葉(1)

散り落ちた葉、特に晩秋から冬にかけて散る落葉樹の葉、と「広辞苑」にある。時雨のようにぱらぱら散る「木の葉しぐれ」。落葉の散りつくす様が「落葉終る」。落葉林、落葉山などもある。文学では、落葉にいろいろな感情を託すことが多いが、和歌や短歌では…

竜胆

「りんどう」と読む。この漢名は、根の味が龍の胆のように苦いことから名付けられたというが、仮想の動物の龍の胆など味わいようがない。この草の根が胆汁のように苦く、その苦みが特別強いので、最上級を表す龍の字を冠して名づけられたという説が有力か。…

蒟蒻(こんにゃく)

インド、スリランカ原産といわれるサトイモ科の多年草。蝮蛇草に似た不気味な茎葉(右画像参照)が黄色く枯れてくる頃、晴れの続く日に鍬で掘り出し乾燥して保存する。「蒟蒻掘る」が冬の季語。「蒟蒻干す」はその傍題。右の画像は、蒟蒻の花である。 蒟蒻負…

石蕗

ツワあるいはツワブキと読む。橐吾という難しい表記もある。キク科の多年草。観賞用に数品種ある。蕗に似た葉に光沢があるところから、「ツヤブキ」と呼ばれたらしいが、そこから転化した名前という。 石蕗咲いていよいよ海の紺たしか 鈴木真砂女 静かなるも…

鑑賞の文学 ―俳句篇(31)―

菊の香や奈良には古き仏達 芭蕉「笈日記」 [高浜虚子] ・・・古い仏たちの沢山ある奈良に行った時の心持は、清高なる菊の香を嗅ぐ時の心持と似通ったところがある、というのである。・・・この句はそういう実際の景色を写生したというよりも、奈良に行って…

冬桜

晩秋から一月頃にかけて咲く桜。春の花よりも小ぶり。十月桜とも呼ばれる四季桜の名所として、鎌倉では、長谷寺、円覚寺、東慶寺、瑞泉寺などがある。ただ、本数が少ないので目立たない。冬の季語。十月桜、寒桜は傍題。 冬桜海に日の射すひとところ 岸田稚…

鑑賞の文学 ―短歌編(32)―

塚本邦雄に新古今天才論として『花月五百年』という本があり、それを読み終わった。過去に諸雑誌に発表した評論を集めたものだが、新古今集を編纂した歌人達と同時代に生きた新古今集入選の天才歌人たちを論じている。その中に「百人一首中の新古今歌人」と…

紅葉狩(15)

紅葉狩の未練は尽きず、今年最後の紅葉を見ようと北鎌倉・浄智寺の裏山から葛原ガ岡、源氏山公園、長谷と山を辿った。出かける朝、藤沢駅のホームで幼い鳩を見た。ホームの屋根裏には、鳩が巣をかけて雛を育てているので、そこから落ちてきたらしい。羽根が…

紅葉狩(14)

師走も半ばになると紅葉も終りになる。二宮町の吾妻山に登ってみた。全山紅葉といった状態にはならないが、ところどころにすばらしく色付いたもみじの木を見ることができた。山頂には新たに枝垂れ桜の木が移植されていたので、来年の春が楽しみ。 なお、いつ…

干柿

渋柿の皮をむいて、縄に吊るし軒に列ねて干したもの。吊し柿、串柿。俳句では、吊し柿が秋の季語で、干柿は傍題。 吊柿鳥に顎なき夕べかな 飯島晴子 干柿の暖簾が黒く甘くなる 山口誓子 干柿の緞帳山に対しけり 百合山羽公 重かりし去年の病を身独りは干柿な…

湯河原・万葉公園(3)

終りに、「文学の小径」の板碑に紹介されている短歌の例をあげる。 湯ケ原をおしつぶさんとするばかり山の迫れる南の相模 平野万里 木がくりに滝の音とよむ万葉人来遊ぶらむと思ひつつ歩む 佐々木信綱 たそがれに咲ける蜜柑の花一つ老いの眼にも見ゆ星の如く…

湯河原・万葉公園(2)

以下には、「文学の小径」の板碑に紹介されている俳句の例をあげる。 道ばたの墓なつかしや冬の梅 芥川龍之介 一生一瞬に去来すもずの声 山本有三 かれくさやまの雲白くゆうべおそし 萩原井泉水 したたりの音の夕べとなりしかな 安住 敦 春浅く柑橘の色とこ…

湯河原・万葉公園(1)

JR湯河原駅から不動瀧、奥湯河原、元箱根 方面行きのバスに乗り、落合橋で下車。万葉公園は、落合橋を渡った千歳川沿いの緑地公園をさす。万葉公園と名づけられた由縁は、万葉集で出湯を詠った唯一の次の歌からきているという。 足柄の土肥の河内に出づる…

戦闘機

迎撃戦闘機と戦術戦闘機の2機種に大別できる。前者は、敵機の侵入を阻止する役目、後者は、地域の制空・制圧を果たす役目をそれぞれ持つ。わが国航空自衛隊の要撃戦闘機F-15Jは、最大速度マッハ2.5、航続距離4600kmで、20mm砲1、空対空レ…

冬雑詠(2)

大磯の城山公園、横浜市の舞岡公園、鎌倉の裏山などを歩いた。何の目的もない。ともかく歩いて汗をかくこと。これが健康にはよい。体が軽くなるのである。汗がひいて寒くなると風邪をひくので、服装には注意が必要だが。 衣を正し村の社へ七五三 しきしまの…

紅葉狩(13)

大磯高麗山公園を歩いて黄葉を見て来た。特に見所は地獄沢である。沢になだれる斜面の黄葉が見事なのである。ところで、大磯には二か所、おどろおどろしい名のついた場所がある。この地獄沢と血洗川である。血洗川の方には、名前の由来があるが、地獄沢の方…

ギンナン

いちょうの実。晩秋に黄色く熟し落ちる。外種皮は多肉で悪臭があり、さわるとかぶれる。内種皮は白色菱形で硬いが、その中の薄緑の果肉は風味があり食用になる。漢字で銀杏と書くが、読みはギンアンから転じた。秋の季語。 銀杏を焼きてもてなすまだぬくし …

満天星躑躅

灯台躑躅とも書き、「どうだんつつじ」と読む。ツツジ科ドウダンツツジ属の落葉広葉樹。低木で本州、四国、九州の温暖な岩山に生える。四月ごろスズランに似た白い花をつける。漢字表記の「満天星」は、中国名に由来する。「満天星(どうだん)の花」で春の季…

紅葉狩(12)

鎌倉の紅葉を探りに、獅子舞(モミジ谷)、天園、北鎌の円覚寺と東慶寺 などに出かけた。時期が早すぎたか東慶寺の黄葉には青みが少し残っていた。わが性癖として、人で込み合う所には行きたくないので、桜にせよ紅葉にせよその盛りの時よりも早めに出かけて…

紅葉狩(11)

美しい紅葉を見に、紅葉の名所に出かけること。秋の季語。傍題には、紅葉見、観楓、紅葉酒、紅葉舟、紅葉茶屋 など。現代でも紅葉の名所によっては経験できる事象である。ただ、現代短歌では、紅葉狩として詠むことは稀になったようだ。単に紅葉を詠むことは…