天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

ペンギン

ペンギン科の鳥の総称。6属17種いる。南半球の南部に生息。北極にはいない。シロクマが南極にいないと同様、生物の不思議を感じる。コウテイペンギン、オウサマペンギン、コビトペンギンなど。稀に人鳥と書くが、これは右のような情景を見れば、納得でき…

葱(ねぎ)

ねぶかとも言うユリ科の宿根草。中国西部が原産地とされる。わが国でも奈良時代には栽培されていた。「日本書紀」には「葱(き)」の文字がみられる。この一字から、葱を「ひともじ」と呼ぶ女房詞ができたという。品種としては、地中の軟白部を食する根深ネギ…

日本の文学では、霧は秋のものとされた。春に出るのは霞と呼ばれた。物理現象としては同じなのだが。霧の合成語も多い。秋霧、朝霧、夕霧、濃霧、夜霧、山霧、川霧、狭霧、霧雨、霧笛 等。 白樺を幽かに霧のゆく音か 水原秋桜子 濃淡の霧にしづみぬ羽黒杉 山…

新春雑詠(4)

大寒になるまでは、横浜や藤沢の公園を歩いても霜柱や薄氷を見かけなかったが、大寒を過ぎて雪が降ってからは、珍しくなくなくなった。北鎌倉・円覚寺の庭でも池に浮んだ薄氷や池の縁の苔を持ち上げている霜柱に出会った。ただ、氷柱にはまだお目にかかれな…

虹鱒

サケ科の魚。北米西部が原産地。わが国には1877年以来数回移植され、今では各地に棲んでおり、米国に輸出されるほどに普及している。 腹すこしあかき紅鱒ほそぼそと蒪菜の上を わたりてゆくも 前田夕暮 音たてて浅瀬をのぼる鱒の群ひそけきものか山 ふか…

氷柱

古文では「つらら」と言えば、「こおり」を意味した。今日の「つらら」は「垂氷(たるひ)」といった。和歌でその例を見てみよう。 たちぬるる山のしづくもおとたえて槙の下葉に たるひしにけり 新古今集・守覚法親王 朝日さす軒ばの雪はかつきえてたるひの…

天神

菅原道真と牛との関係は深く「道真の出生年は丑年である」「大宰府への左遷時、牛が道真を泣いて見送った」「道真は牛に乗り大宰府へ下った」「道真には牛がよくなつき、道真もまた牛を愛育した」「牛が刺客から道真を守った」「道真の墓所(太宰府天満宮)…

楢の木

ブナ科の小楢、水楢をさし、共に山地にはえる落葉高木。小楢は高さ17メートル、水楢は高さ30メートルにもなる。小楢は東日本で椎茸のほだ木にされる。 下野美可母(みかも)の山の小楢のすまぐはし児ろは 誰が筍(け)か持たむ 万葉集・下野国の歌 静心ひと…

鑑賞の文学 ―短歌篇(24)―

寺々のかねのさやけく鳴りひびきかまくら山に 秋かぜのみつ 金子薫園『朝蜩』 歌碑が鎌倉の高徳院に立っている。裏面に、昭和七年十月。薫園の主宰する歌誌「光」の十五周年に際して記念として門人等相計り之を建つ とある。薫園は鎌倉の滑川に近い材木座の…

薄氷

「うすごおり」あるいは「うすらい」と読む。春の季語。『川崎展宏句集』から拾うと次の5句がある。 薄氷帰りは解くる伊賀の坂 『葛の葉』 薄氷についと落ちたる煙草の火 『義仲』 昼月は空のうすらひ伊賀に入る 『夏』 薄氷の上にとどまり雪つぶて 『秋』 …

りんご

バラ科の落葉高木。中央アジア原産。青林檎は夏に、赤林檎は秋にみのる。りんごを入れた詩で忘れ難いのは、島崎藤村『若菜集』の「初恋」である。第一節だけ次に引用しよう。 まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思…

鑑賞の文学 ―俳句篇(24)―

海峡の空吹き抜けよ大夕立 長谷川櫂 みちのくを旅して「奥の細道」を書きあげた松尾芭蕉は、大阪以西の西国へも旅立ちたいという思いを抱いていた。このことは弟子の記録からわかるという。そこで俳人・長谷川櫂は「西国の旅は瀬戸内海や玄界灘などの航路を…

新春雑詠(3)

新聞の神奈川県版で吾妻山の菜の花が見ごろと書かれていたので、今年初めて登った。富士と菜の花の組み合わせで写真を撮ろうと大勢の人が山頂に来ていた。私にとっても毎年の恒例になってしまったが、右の写真を撮ってきた。斜面の水仙の群も満開になってい…

木蔦

ブドウ科の蔓性植物。巻きひげの吸盤で樹木や石垣に巻き付く。夏に黄緑の小花を付ける。秋に美しく紅葉するので盆栽にもされる。古名は「あまづら」。ただ、和歌に詠まれた例がみつからない。枕草子には出ているのだが。 秋風の嵯峨野をあゆむ一人なり野宮の…

柚子(ゆず)

ミカン科の常緑樹で柑橘類の一つ。ホンユズは比較的大きく、果皮の表面はでこぼこしている。小形で早熟性のハナユズとは別種だが、日本では両方をユズと言い、混同している場合が多い。タネの多いものが多い。耐寒性が強く極東でも自生出来る数少ない種であ…

「りゅう」あるいは「たつ」は、今年の干支であるが想像上の動物。インド神話では、蛇を神格化した人面蛇身の半神で、大海や地底に棲んで、雲雨を自在に支配するとされた。また仏法守護の天龍八部衆の一つ。中国では、鳳・麟・亀とともに四瑞の一つで、ここ…

新春雑詠(2)

鎌倉の歩き初めとして、わが定番ルートの極楽寺、成就院、長谷寺、光則寺、高徳院、収玄寺を巡った。まだ松の内であったので人出は多かった。 箒目の参道にちる白椿 正月の仏足石に飾り餅 あらたまの写経にならぶ弁天堂 笹鳴の羽根ひるがへる葉蔭かな 初春の…

南天の実

南天はメギ科ナンテン属の常緑低木。中国原産で漢名は「南天燭」。日本にきて「南天」を音読みして「なんてん」となった。「難を転ずる」という信心の言葉もできた。実を乾燥させたものには咳止めの効果があり、咽喉飴にもなっている。葉には殺菌効果がある…

囲炉裏

暖房や炊事に使われる屋内の炉。3尺から6尺四方のものが多いが、長方形もある。家族のそれぞれが坐る場所が決まっていた。炉の上方に自在鉤があり、鍋釜を吊るして煮炊きができる。 俳句では、季語「炉」の傍題になっている。 炉の僧の立たれて猫を従へる …

霜柱

冬の夜に湿った地面にできる細い氷の柱の集り。直径2ミリか3ミリで長さは数センチ。地中から毛管現象によってしみ出る水分が凍ってできる。赤土に最もできやすく、砂地や粘土にはできない。 路の上に凝りてつづける霜ばしらわが行くままに くづれきらめく …

鑑賞の文学 ―短歌篇(23)―

つき放(はなさ)れし貨車が夕光(ゆふかげ)に走りつつ寂しき までにとどまらずけり 宮 柊二『群鶏』 [島田修二]比較される歌に「連結をはなれし貨車がやすやすと走りつつ行く線路の上を」佐藤佐太郎がある。それぞれの歌風をそのまま現わしている。つまり佐…

新春雑詠(1)

元来無信心の私は、年末年初に有名な神社仏閣に参って願をかけるなどしたことがない。ともかく人混みが苦手なのだ。昨年末は忍野、河口湖、富士サファリパークと遊んだ。忍野で食べた山女と骨酒は美味であった。正月も三日を過ぎてから江ノ島に出かけたのだ…

茶の花

「茶の花」は冬の季語。与謝蕪村は、生涯に五句詠んでいる。それらを次にあげておく。 茶の花や黄にも白にもおぼつかな 茶の花のわづかに黄なる夕(ゆふべ)かな 茶の花や裏門へ出る豆腐売 茶の花や石をめぐりて路を取(とる) 茶の花の月夜もしらず冬籠 なお、…

小春日の鎌倉

極楽寺から大仏の裏山を通って佐助稲荷へと降りた。この稲荷神社は、鎌倉に幕府を開いて、初期の目的を達成したお礼として、源頼朝が畠山重忠に命じて、建久年間(1190)にここを霊地と定めて稲荷の社殿を造営させたという古い由来を持つ。本堂には燈明が絶え…

枳殻

漢名「キコク」、和名「からたち」はミカン科の落葉低木。中国原産。樹皮は緑で棘が多く生垣に利用される。四月ころ白い五弁の小花が咲く。実は黄色で堅い。漢字では他に枳、枸橘などを当てる。 うき人を枳殻垣よりくぐらせむ 芭蕉 枳の棘原(うばら)刈り除(…

鑑賞の文学 ―俳句篇(23)―

ほかの道を知らずこの道花茨 菅 裸馬 芭蕉の『幻住庵記』に、有名な次の一文がある。 「つらつら年月の移こし拙き身の科をおもふに、ある時は仕官 懸命の地をうらやみ、一たびは佛籬祖室の扉に入らんとせしも、 たよりなき風雲に身をせめ、花鳥に情を労して…

凍蝶と元使塚

凍蝶(いてちょう)は冬まで生きながらえて、ほとんど動かない蝶のこと。俳句では「冬の蝶」の傍題。 凍蝶や朝は縞なす伊豆の海 原田青児 凍蝶のふと翅つかふ白昼夢 野澤節子 元使塚のある藤沢の常立寺で見かけた凍蝶が右の画像。その頃に詠んだわが作品を以下…

錦木

文字通り秋の紅葉が美しい。夏に黄緑の花が咲く。実は暗赤色で楕円形。その昔、みちのくでは、男が恋する女に逢う時、女の家にこの木を立てたという。女に意志があればこの木を取り入れ、なければ男は木を立て続けた。ただし千本=千束(ちづか)まで、三年…

鑑賞の文学 ―俳句篇(22)―

還暦てふやや重きもの初日記 岡本多可志『白雲』 作者の岡本多可志さんは、今は解散した俳句結社「木語」生え抜きの俳人である。と同時に、文芸同人誌「白雲」の代表として詩や小説にも力量を発揮されている。「木語」に途中から入会した私は後輩になる。な…

炭焼

木材を焼いて炭を作ること。また、それを業とする人。炭窯は山中に粘土・石・煉瓦などで築き、窯口と煙突を設ける。中に木を入れ、点火して蒸し焼きにする。炭焼に適している木はクヌギ、コナラなどの雑木。炭の種類には、黒炭と白炭がある。黒炭は窯を密閉…