天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2012-10-01から1ヶ月間の記事一覧

薔薇

バラは古来、愛と美の象徴とされた。その香は香水として珍重されてきた。盛んに交配や改良が行われ、園芸品種は千種を超える。薔薇の栽培は古代オリエントに始まる。ギリシャ、ローマを経てヨーロッパに伝わった。大きくは、株バラと蔓バラの二種類がある。…

鑑賞の文学 ―俳句篇(30)―

秋深き隣は何をする人ぞ 芭蕉・〈笈日記〉元禄七年 [山口誓子] 元禄七年の作。秋も晩秋、隣家に住みひそめる人は誰であろうか。何を職としている人であろうか。隣人と自分とは何の関わりもないが、秋深きいま、隣人の上に思いを馳せずにはいられない。ここ…

烏瓜

つる性のウリ科の多年草。本州、四国、九州に自生し草木にからみついて成長する。雌雄異株で、ひとつの株には雄花か雌花かのいずれかのみがつく。別名に玉章(たまずさ)、ツチウリ、キツネノマクラ、ヤマウリなど。雌花の咲く雌株にのみ果実をつける。そこか…

杜鵑草

ユリ科の多年草。これで「ほととぎす」と読む。植物であることを示すために、「草」を付けるのだ。鳥の杜鵑(時鳥とも書く)の胸毛に似ているところから名前がついた。葉は笹に似ている。秋の季語。鎌倉では今が花ざかりである。これを花杜鵑草ともいう。 杜…

秋雑詠(4)

鎌倉の長谷を歩いた。今頃は、杜鵑草や秋明菊が目立つ。鎌倉文学館では、10月6日から12月9日まで、特別展「生誕820年・源 実朝」が開催されている。実朝の『金槐和歌集』を最初に評価したのは、賀茂真淵であり、次いで正岡子規であった。以後は、斎…

ナデシコ

ナデシコ科ナデシコ属の植物でカワラナデシコの異名もある。またナデシコ属の植物の総称。北半球の温帯域を中心に約300種が分布する。ヒメハマナデシコとシナノナデシコは日本固有種。美女の面影を映す花として万葉後期に特に愛され多く詠われた。秋の七草の…

島崎藤村展

神奈川近代文学館において、10月6日から11月18日まで、「生誕140年記念・島崎藤村展」が開催されている。さっそく出かけて見た。以前に藤村の跡を訪ねて、小諸、千曲川、木曽路(馬籠、妻籠)、伊良湖岬 などを巡ったことがあるので、今回の展示に…

下野(しもつけ)草

バラ科の落葉低木。アジアに広く分布。場所や高度によって葉の大きさや花の色が変化する。夏の季語。 繍線菊やあの世へ詫びにゆくつもり 古館曹人 しもつけの花を小雨にぬれて折る 成瀬正俊 しもつけの花の花房鬼歯朶(おにしだ)のひろがれる葉の かさなりの…

木賊

砥草とも書き「とくさ」と読む。表皮の細胞壁にケイ酸が蓄積して硬化し、砥石のように茎でものを研ぐことができることから、この名が付いた。具体的には、茎を煮て乾燥させたものを紙ヤスリのようにして使う。この茎は引っ張ると節で抜けるので、子供の頃は…

唐辛子

熱帯アメリカ原産のナス科植物。代表的な香辛料の一つ。日本には16世紀に伝来。鷹の爪、天井守、天竺まもり、南蛮 などの呼び名もある。秋の季語。 うつくしや野分の後のたうがらし 蕪村 吊されてより赤さ増す唐辛子 森田 峠 乾燥剤加へ密閉せしものの赤唐…

観世音

藤沢市渡内にある功徳山早雲禅寺天嶽院(てんがくいん)に行ってきた。自動車で前を通る度に気になってしかたなかったのだ。元は真言宗の古刹で不動明王を祀る「不動院」であったが、明応4年(1495)北条早雲が伽藍を建てて禅刹とし、虚堂玄白禅師を初代住職と…

満ち潮

月や太陽の起潮力によって潮の干満が起きる。水位が極大の時が満潮(高潮)、極小のときを干潮(低潮)という。干満の水位の差は新月と満月の頃に最大になり、これを大潮という。そして一週間たつと最小になり、これを小潮という。わが国の大潮の最大のもの…

たまご

日常的には鶏卵をさす。良質のタンパク質を含み、卵黄は脂肪、ビタミンA,B1,B2に富む。ニワトリの品種により白殻と赤殻がある。各種の料理に、また菓子の材料に使用される。 買ひ持てる卵は孵(かへ)すすべなきに心羞(やさ)しく いたはりてゆく 富小路禎…

石榴

「ざくろ」は、柘榴とも書く。実には薬効があり血の味がするというが、まだ食したことがない。ペルシャ・インド原産で、日本には平安時代以前に渡来したらしい。 石榴の実一粒だにも惜しみ食ふ 山口誓子 実ざくろや妻とは別の昔あり 池内友次郎 天地(あめつ…

秋の蝶

晩秋になると蝶の数もめっきり減ってきて、姿も弱々しくなる。ただ、江ノ島の草叢で見た蜆蝶は、小さいながら数も多く、日ざしの中を元気よく飛びまわっていた。 ますぐには飛びゆきがたし秋の蝶 阿波野青畝 火口湖のさざなみ固し秋の蝶 岡田貞峰 秋蝶の驚き…

秋雑詠(3)

久しぶりに箱根旧街道を歩いた。といっても全行程ではなく、湯本から畑宿先の見晴茶屋まではバスで行き、そこから元箱根まで徒歩にした。全行程を歩いたのは随分前のことで、確か4時間ほどかかったと記憶している。今回の歩行距離は3.7キロ。それでも石…

トマト

ナス科の野菜。温帯では一年草だが熱帯では多年草。南米原産、メキシコで栽培トマトに分化した。ヨーロッパへは16世紀に導入されたが、観賞用であった。食用にされたのは18世紀以後という。わが国には18世紀初めに渡来、昭和になって食用として普及し…

猪(いのしし)

簡単に「ゐ」とも言った。豚の祖先といわれる。その肉は古くから食されていた。獣肉を食べることが禁止されていた時代には、食感が鯨肉に似るところから「山鯨」という隠語で呼ばれ、食されていた。この鍋物が「牡丹鍋」である。秋の季語。 猪のねに行くかた…

ラーメン

漢字で、拉麺とか柳麺と書く。支那そば、中華そば。次の二首目は、金があまりない若い頃の恋人どうしの姿を彷彿とさせる。多分、多くの人の思い出にあるはず。 どうにでもなれと屋台のラーメンの湯気よ 涙がでる ではないか 吉岡生夫 二人して味噌ラーメンの…

秋雑詠(2)

彼岸花に注目しながらあちらこちらと歩いていたが、特に面白い組合せは、東海道鉄砲宿の沿道に咲く彼岸花とその前のポストであった。また鎌倉鶴ケ丘八幡宮の大銀杏は、台風で倒れた後、切株を元の位置のすぐ近くに移植されているが、その根方に彼岸花が咲い…

餃子(ぎょうざ)

中国料理の一つ。小麦粉をこねて薄く伸ばした皮に、挽肉、野菜を包んだものを、焼きまたは茹であるいは蒸した食べ物。 かすかなる貧血のして跼むとき餃子は炒らるひるのテレビに 滝沢 亘 餃子食べし美人と前後し店を出るきみもニンニクわれもにんにく 岩田 …

運動会

現在では十月の体育の日の前日か前々日に開催するところが多いようだ。田舎の学校の運動会では、念入りに弁当を作って家族総出で見に行くという情景が見られる。昼食を家族と共に見学席でとったことの思い出は、いつまでも懐かしい。 なお、右の画像は小学校…

ダリア

原産地はメキシコの熱帯高地という。18世紀末頃野生種がヨーロッパに紹介され、そこで改良され今日見るような多数の園芸品種ができた。日本には江戸時代にオランダ船によりもたらされ「天竺牡丹」と呼ばれた。夏の季語。 敗戦の瓦礫ダリアが咲いてゐた 川…

林檎(りんご)

バラ科の落葉高木。中央アジア原産。五月に紅暈のある白い五弁花が咲く。青林檎は夏に、赤林檎は秋に実る。品種は多い。今日食用に栽培されているものは、明治になって米国などから導入されたものの子孫。青森と長野が二大生産地。 過去のブログで取り上げて…

レモン

インド原産のミカン科シトロン類の常緑低木。青いうちに採取して色だしをする。クエン酸、ビタミンCを多く含む。俳句では秋の季語。 いつまでも眺めてゐたりレモンの尻 山口青邨 鋭角に舌を削つてゆく檸檬 櫂未知子 夜ふかくしぼるレモンの滴滴の一滴ごとに…

曼珠沙華

彼岸花のことだが、7種くらいのさまざまな呼び名がある。以前にこのブログ(2011年10月15日)で取り上げたので省略。以下には、以前にはあげなかった作品を紹介する。花の色には、赤以外に白、黄色などあり。 [追伸]白や黄色の彼岸花は、シナヒガンバナとシ…

雲のつく歌語

和歌では、雲のつく歌語がいくつもある。「雲居」「雲隠り」「雲立ち渡る」「雲のたえ間」「雲のはたて」「雲間」「雲の峰」など。 青駒の足掻(あがき)を早み雲居にそ妹があたりを過ぎて 来にける 万葉集・柿本人麿 わたの原こぎ出でてみれば久方の雲居にま…

稲穂

稲には生態型によってジャポニカ米とインディカ米の二種類がある。日本で栽培されているのは、もちろん前者。どちらにも粳米(うるちまい)と糯(もちまい)米がある。成熟の速さにより、早稲(わせ)、中稲(なかて)、晩稲(おくて)と区別される。 利根川や稲から出…

葡萄

紀元前十五世紀頃のエジプトの壁画に、収穫と葡萄酒製造の様子が描かれている。わが国では野生の葡萄が自生し、「葡萄葛(えびかずら)」と呼ばれていた。甲斐の国を中心に品種改良が進み、十二世紀には甲州葡萄が誕生したという。現在は様々な品種が店頭を賑…

秋雑詠(1)

やっと秋らしくなった。田んぼの稲が実り、赤とんぼが飛びはじめた。里山の田んぼの畦には、案山子が並んで、訪れる人たちを楽しませている。園児らの格好の遠足場所にもなっている。困ったことに台風も続けてやってくる。東京の水不足は解消されたようだが…