天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2012-11-01から1ヶ月間の記事一覧

皇帝ダリア

11月になると背の高い皇帝ダリアが目立つようになる。木立ダリアとも言い、メキシコ原産。春に植えて秋には草丈が3〜4mにもなる。それで「皇帝」とか「木立」という修飾語がついた。花色には赤、白、ピンクなど数種ある。皇帝ダリアの花言葉は、「乙女の真…

コノハズク

フクロウ科の鳥でユーラシア大陸、アフリカに分布し、日本へは夏鳥として九州以北に渡ってくる。針葉樹林に棲んで、夜間に昆虫を捕食する。鳴き声が「仏法僧」と聞こえるところから鳥のブッポウソウと間違えられた。1935年になって、この事実が判ったという…

ハゼノキ

ウルシ科の落葉高木。実から木蝋が採れる。秋の紅葉は目立つ。触れるとかぶれるので要注意。琉球から渡来し栽培されたものが野生化したという。「はじ」とも呼ぶが、山うるしの古名である。 櫨紅葉見てゐるうちに紅を増す 山口誓子 もずの居る櫨の立枝のうす…

実朝、定家、後鳥羽院

堀田善衛の『定家明月記私抄』を読み終わった。そこで気になり始めたのは、源 実朝に定家が与えた影響のことである。年表で見ると次のようなことになっている。 建仁3年4月: 実朝、征夷大将軍に任ぜられる。弱冠12歳。 元久2年9月: 定家が内藤知親を介して…

中国の殷代にあったことが知られている。筆は毫と管からなり、毫は古来兎の毛のものが賞美されているという。時代が進むにつれ、羊、狼、狸、鼬、馬、豚 などの毛を使うものも現れた。管の方も凝った彫刻をするものなどが作られた。日本には紙と共に大陸から…

水無瀬離宮址

後鳥羽上皇の水無瀬離宮では、建仁二年九月十三夜の水無瀬殿恋十五首歌合に代表される歌会や白拍子、遊女などを上げての乱交騒ぎまでがあった。後鳥羽院の気ままな振る舞いについては、藤原定家の『明月記』に詳しい。水無瀬殿恋十五首歌合での定家の詠草を…

大山紅葉(続)

2006年12月2日に続いて、という表題なのだが、今回は紅葉全開という情況ではなかった。11月中旬では、大山の紅葉は始まったばかり。なお、わがブログで大山という時は、神奈川県伊勢原市にある大山を指す。 女坂には、二か所に芭蕉句碑がある。一つは、大山…

桜井の駅

桜井の駅における楠木正成・正行父子の今生の別れは、『太平記』の名場面のひとつ。「駅」とは宿場のこと。この駅は現在の大阪府三島郡島本町桜井にあたり、JR島本駅のそばに記念として小さな公園ができている。藤原定家ゆかりの地として水無瀬離宮址を尋ね…

モズ科の鳥。朝鮮半島、中国、日本などで繁殖。日本全国で繁殖するが、北のものは冬に暖地へ渡る。群を作らず、藪に巣を作る。日本の鵙には、夏鳥のアカモズ、チゴモズ、冬鳥のオオモズ、オオカラモズなどがいる。捕えた獲物をとがった枝に刺す習性があるが…

時雨亭の跡

現在、堀田善衛の『定家明月記私抄』を再読している。藤原定家と彼が生きた時代をもう一度思い出したい、と思ったからである。まことに面白い。それで藤原定家に関係ある京都の場所を尋ねてみることにした。時雨亭の跡、定家の墓、冷泉家などである。 時雨亭…

菊の品種は色も大きさも多様である。日本には奈良時代に中国からもたらされたというが、万葉集には詠まれていない。平安時代からは盛んに詠まれた。別名に、翁草、齢草、千代見草、黄金草 などがある。毎年11月3日の文化の日を中心に、各地で菊花展が開か…

U字形の握り鋏の類は紀元前に羊毛を刈るのに用いられたという。現在では8字形の洋鋏が広く使用されている。布地用、料理用、医用、理髪用、植木用、芝刈用など種類が多い。 狼藉の几(つくえ)の上に見あたらぬ鋏をさがす今日も 夜ふけて 木俣 修 錐・鋏光れ…

冬雑詠(1)

立冬も過ぎていよいよ本格的に冬に入るが、晩秋の風物として各地の大きな公園では、菊花展が開催されていた。近場では、大船フラワーセンター、横浜三溪園や小田原城がある。里山では、鳥兜に出会うし、石蕗の黄色い花が目立つ。 笹鳴の尾に笹の葉の揺れにけ…

コスモス

メキシコ原産のキク科の春まき一年草。秋に径5cmから7cmの頭花を開く。八重咲、コラレット咲、大輪咲また舌状花が管状になるもの、更に夏前に開花する早咲きの園芸品種がある。秋桜(アキザクラ)とも呼ぶ。 ゆれかはしゐてコスモスの影もなし 大橋宵…

イノコズチ

ヒユ科の多年草。ヒナタイノコズチとヒカゲイノコズチの2種類がある。季語になっているのは、後者。ただ「いのこ」は「猪の子」のことであり、草丈が猪の膝の高さとみたところから名付けられたという。牛の膝の高さなら、漢字表記の牛膝と適合するのだが。…

時雨(3)

現代の俳句、短歌から例をあげる。次の安住 敦の句を見るにつけて、俳句の詩形と言葉の喚起力とが絶妙に調和する姿にほとほと感心する。俳句の存在意義を実感する。 しぐるるや駅に西口東口 安住 敦 しぐれ来と首ふり立てて三春駒 中村苑子 釣りあげし鮠に水…

竹林

竹の林、竹藪のこと。俳句で、「竹の春」は、秋の季語。「竹の秋」といえば、春の季語。竹の葉が茂る時期と散る時期からきている。竹の葉は通常の広葉樹の葉とは逆の推移をするのだ。 坂かけて夕日美し竹の春 中村汀女 さわらびの皇子の寺なる竹の春 沢木欣…

鑑賞の文学―詩 篇(6)―

島崎藤村の「初恋」は、日本浪漫派の代表的な詩集『若菜集』にある七五調の四連詩である。よく知られた初めの一連を次に引く。 まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり ここまで読むと、同じ七五調の大伴家持の…

天城

静岡県伊豆半島中部の天城山とその麓の地域の略式名称である。湯ケ島町が温泉郷として有名。「あまぎ」という音韻がなんとも美しい。小説では、川端康成の「伊豆の踊子」、井上靖の「しろばんば」、松本清張の「天城こえ」等の舞台になり、演歌「天城越え」…

キクラゲ

キクラゲ科の茸で、世界中に分布する。広葉樹の枯木、倒木上に群生する。漢字では木耳と書く。食用になり、中華料理によくでてくる。俳句では夏の季語。 木耳に色くる蔵王堂の晴 岡井省二 木耳に雨粒あらき結願寺 福島せいぎ 木耳(きくらげ)を剥ぎゆく魔物見…

時雨(2)

近代の俳句、短歌から例をあげよう。 小夜時雨上野を虚子の来つつあらん 正岡子規 山中の巖うるほひて初しぐれ 飯田蛇笏 しぐるるや目鼻もわかず火吹竹 川端茅舎 うしろすがたのしぐれてゆくか 種田山頭火 ゆうされば大根の葉にふる時雨いたく寂しく降りにけ…

セイタカアワダチソウ

北アメリカ原産、キク科アキノキリンソウ属の多年草。日本には、明治時代末期に園芸目的で持ち込まれ、切り花として観賞された。名前の通り、背丈は2,3メートルに達する。杉の様な風媒花では無く、虫媒花なので花粉症を引き起こすわけではないようだ。 背…

時雨(1)

晩秋から初冬にかけて降る雨。晴れていた空がにわかに暗くなり、雨脚軽く降ったり止んだりする雨。文字の表記にこの雨の性質が出ている。古くから京都の時雨はよく知られている。時雨の上にさまざまの言葉がつく。初時雨、朝時雨、磯時雨、片時雨、北時雨、…

トリカブト

キンポウゲ科の多年草で古くから観賞用に栽培されてきた。花の形が伶人の舞楽に用いる烏帽子に似ているところからの命名である。多くの野生種があり、いずれも毒草。漢字では、鳥兜、鳥頭 などと表記する。 鳥かぶと夕日がくらくなりにけり 永作火童 とりか…

秋雑詠(6)

鎌倉湖、横浜市東俣野の田園、真鶴岬などを歩いた。背高泡立草の花が目立ち始めた。また柿の実があちらこちらでたわわに実っている。草叢に分け入ると牛漆がズボンや上着にくっついてきて取り払うのにひと苦労する。 団栗の馬の背小径カクレミノ 園児らのこ…

錦木

ニシキギ科の落葉低木。五、六月に四弁花を開き、十、十一月に赤色の仮種皮に包まれた種を出す。紅葉は際立って美しい。日本全土の山地に自生する。典型的な秋の風情。鬼箭木と表記する場合もある。 錦木に寄りそひ立てば我ゆかし 高浜虚子 火の山のマグマの…

柿の実

甘柿と渋柿がある。渋柿は干柿にする。すべてをとり尽さず、数個を残しておく習慣があり、「木守柿」という。これは冬の季語。 つり鐘の蔕(へた)のところが渋かりき 正岡子規 潰(つ)ゆるまで柿は机上に置かれけり 川端茅舎 これを見て美濃の豊かさ富有柿 山…

菊芋

北米原産のキク科の多年草で根茎を果糖やアルコールの原料にするために栽培される。今では各地に野生化して、特に北海道に多い。茎の高さは2メートル近くにもなり、葉と共に粗い毛が生えている。秋に鮮やかな黄色の花を開く。 バスの腹冷たきに身をさし入れ…

秋雑詠(5)

江ノ島、二宮海岸、吾妻山 などを歩いて、秋の深まりを体感しようとしたのだが、山の紅葉が始まっていないので、晩夏としか思えない。磯釣りの様子を見ていても鯖や鯵がどんどん釣れるといった状況ではないので、やはり物足りない。なお、この記事は、十月半…

人類の祖先がまだ海中に棲んでいた原始時代に最初に獲得した色が青であった。そのはるかなる記憶が、我々が空や海の青を見ると懐かしく癒される気持に繋がっているという。ところが、自然界の生物で青の色素をもつものは極めて少ない。青い蝶などは、構造色…