天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

走り根

地上に出て広がっている木の根のことであるが、解説している国語辞書は少ない。現在では、盆栽用語として扱われている。 走り根の起って丹波の時雨かな 鷲谷七菜子 走り根の韋駄天走り木下闇 鷹羽狩行 林中や走り根からも秋の声 鷹羽狩行 走り根のがんじがら…

早春賦2

鎌倉の大塔宮、瑞泉寺、護良親王墓、荏柄神社、頼朝の墓、鶴ケ丘八幡宮を巡って梅の花を探った。まだまだ花の時期には早い。頼朝の墓が壊されたというニュースが気になったので訪ねたのだが、燈籠の頭の部分が倒れかけているだけで、中央の墓石は無事であっ…

金縷梅

「まんさく」と読む。万作あるいは満作とも書くのは、豊年万作を祈る心からきた当て字であろう。マンサク科の落葉小高木で春を告げる花。山野に自生する。葉の出る前に花を開く。 金縷梅や帽を目深に中学生 川崎展宏 金縷梅の大木といふべかりける 川崎展宏 …

啄木鳥(きつつき)

キツツキ科の鳥の総称。スズメ大からカラス大のものまで世界には約210種が分布する。留鳥が多い。日本には、アオゲラ、アカゲラ、ヤマゲラ、コゲラ、クマゲラ、キタタキ、アリスイなどが棲息する。秋の季語。 庭かげの林檎の幹をあさりゐる啄木鳥は縞の背…

早春賦1

横浜市の舞岡公園は里山なので、バードウォッチングが盛んである。時期にもよるがシギやジョウビタキなども見ることができる。よく見かけるのは、翡翠や鷺である。 何度も書いて恐縮だが、今年の梅の開花は本当に遅い。このままだと桜の開花と重なる場所もあ…

河馬

偶蹄目カバ科。サハラ以南のアフリカに分布する。日中は水の中で過ごし、夜になると陸に上がって草を食べる。体重は2トンから3トンにもなる。一腹一子。皮膚から赤い粘液を分泌するので、血の汗を出すといわれる。 ぽつかりと水に浮きゐる河馬の顔郷愁(ノ…

古くは勇魚(いさな)と言った。クジラ目に属する水生哺乳類の総称。イルカとの間に分類学的な違いはなく、単に体長の違いである。即ち、5m以上の大型のものをクジラという。大まかに分類すると、 ヒゲクジラ類: シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシク…

コウノトリ目サギ科の鳥の総称。世界に約60種。日本には18種が棲息する。雪客(せつかく)ともいう。巣を木の枝の上に作るものとヨシ原に作るものとがある。種類によっては、集団繁殖する。アオサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、ゴイサギ、ササゴイ、…

オオカミ

狼はイヌ科の哺乳類。昔は山の神の使い「大神」として恐れられた。古名は「真神(まかみ)」で、枕詞が「大口の」である。日本にはエゾオオカミとニホンオオカミの二種がいたが、明治時代に絶滅した。原因は、狂犬病、ジステンパーなど家畜伝染病と人間によ…

弓張の滝

久しぶりに訪れた下曽我の梅林は、いまだ莟であった。満開を待ち切れず大勢の人々が梅見にきていた。咲き誇る梅の花の間から見る雪の富士を写真に撮るのが例年の習わしになっているのだが、今年はあきらめた。 下曽我は古来多くの旅人が通った里山であった。…

寒椿

ツバキ科の常緑低木。十一月から二月まで八重咲き紅色の花をつける。冬の季語。 天険に一輪赤き寒椿 吉澤卯一 古への道のこと問ふ寒椿 道山昭爾 寒つばき深紅に咲ける小さき花冬木の庭の瞳のごとき 窪田空穂 寒椿を生垣とする路地の家いつしか異る表札の文字…

鹿

偶蹄目シカ科の哺乳類の総称。欧州、北アフリカ、アジア、南北アメリカに分布。13属41種が知られている。雄の角は毎年春に落ち、すぐに柔らかい袋角が生える。秋の初めに皮がはげ落ちて硬い角が現れる。 いにしえより和歌には多く詠まれた。呼び名として…

汽車

BS―TBS「ふるさと うたの細道」の「鉄道唱歌」編を見た。映像は鎌倉が中心に紹介されていた。よく知られた一番と鎌倉を詠んだ六から九番の歌詞を以下に引用しよう。 一 汽笛一声新橋を はや我汽車は離れたり 愛宕の山に入りのこる 月を旅路の友として …

春告魚

なんとも奥ゆかしい名前の魚だが、鰊(にしん)のことである。寒流性回遊魚。北海道近海に春大群で産卵に来る現象を鰊群来(にしんくき)という。明治大正の頃は鰊御殿が出来るほど大漁に獲れたが、現在は往時の二十分の一以下になってしまったという。身欠き…

探梅(たんばい)

早梅を探って山野を歩きまわること。俳句では冬の季語で、傍題に「梅探る」「探梅行」がある。なんとも王朝風の優雅な行為である。ただ、名所の梅林を訪れるのとは、少し趣が異なる。名所の開花情報はインターネットで調べることができるので、探梅の雅は薄…

短歌甲子園・随想

「甲子園」の名のつくイベントは、高校野球をはじめとして数多い。短歌甲子園の正式名称は「全国高校生短歌大会」で、平成十八年に啄木生誕一二0周年を記念して始められた。毎年盛岡市で開催されている。2011年は、東日本大震災が起きた後だけに開催が危ぶ…

鮟鱇(あんこう)

アンコウ目アンコウ科。世界に広く分布し、日本各地の沿岸に棲むが、海底に静止していることが多い。英語ではアングラー・フィッシュ(釣人魚)というが、餌とする他の魚を頭付近についている誘起突起でおびき寄せてたべるところからきている。冬の季語。 鮟…

澤田政廣

熱海梅園に行ってきた。今年は開花がかなり遅れている。それでも2月初旬には冬至梅、紅冬至、八重野梅、八重寒紅 が咲き始めていた。従ってまだ入場無料で澤田政廣記念美術館も只で入館できた。珍しくも寒咲あやめを見た。熱海桜は三分咲きといったところ。…

マユミ

漢字で真弓あるいは檀と表記する。ニシキギ科の落葉低小木。 みこもかる しなののまゆみ わがひかば うまひとさびて いなといはむかも 万葉集・石川郎女 みなぶちの 細川山に たつ檀 弓束(ゆづか)まくまで 人に知らえじ 万葉集・大伴家持 てもふれで月日へに…

横須賀軍港めぐり

以前に横須賀の米軍基地構内を見学した。その時の目玉は、空母ジョージ・ワシントンの甲板などを歩いて戦闘機やカタパルトを見られたことであった。今回は、横須賀港を船で巡って停泊中の各種艦船の役割を知ることができた。周知のように横須賀は、米国海軍…

哺乳類霊長目のうち、人類を除いた動物の総称。熱帯・亜熱帯に棲む。北限は日本の下北半島。一般に、(1)原猿類 (2)メガネザル科 (3)広鼻猿類 (4)狭鼻猿類 (5)類人猿類 の5種に分類される。 世の人は四国猿とぞ笑ふなる四国の猿の子猿ぞ われ…

水仙

広義にはヒガンバナ科のスイセン属の植物の総称。スイセンをはじめ約30種ある。いわゆる水仙は、関東から九州の海岸近くにはえるが、自生ではなく、古く中国から渡ってきたとされる。地中海沿岸が原産。ラッパズイセン、キズイセン、クチベニズイセンなど…

しらかし

ブナ科の常緑高木。高さは9メートル、直径は60センチ以上にもなる。秋には団栗ができる。材は固く、器具や薪炭用に使われる。漢字で白橿、白樫と表記する。 あしひきの山道(やまぢ)も知らず白橿の枝もとををに 雪の降れれば 万葉集・柿本人麿歌集 紅葉ち…

ゆずりは

トウダイグサ科の常緑高木。高さは六、八メートルになる。新葉の生長とともに旧葉が譲り落葉するところから、この名前がついた。楕円形の葉は正月の飾りにする。万葉名は「ゆづるは」。 いにしへに恋ふる鳥かも弓絃葉の御井の上より鳴き 渡り行く 万葉集・弓…

乾鮭(からざけ)

鮭に塩をまぶし、水洗いしてから日陰に数十日干したもの。北海道や青森、秋田など寒い地方の保存食になる。干鮭とも言い、冬の季語。塩に漬けた鮭(塩引)とは違う。 干鮭(からさけ)も空也の痩(やせ)も寒の中(うち) 芭蕉 砂はじく音して乾ぶ市の鮭 臼田亜浪 …

鶫(つぐみ)

ヒタキ科の渡り鳥。平野部の林や耕地に群棲する。秋に群をなしてシベリヤから日本へ来る。 かつては霞網で大量に捕獲され、食用にされた。現在は狩猟が禁止されている。 雪降ればおのがね山やあれぬらん宿の梢につぐみ鳴くなり 紫禁和歌集・順徳院 となみは…

温室

厳冬の植物園は荒涼として見るべき花がない。ただ温室に入って熱帯性の花々を愛でるのみ。 一月の温室にきて汗を拭くブーゲンビリア、 極楽鳥花 温室のみどりの中に空を向き笑ふがごとし 極楽鳥花 名にし負ふきつねのまご科こえびそう植物園に 食欲覚ゆ 蔓に…

マツ科マツ属の常緑高木の総称。古くから神のよりしろとして尊ばれた。「住吉(住の江)の松」「高砂の松」などは長寿や慶賀の象徴であった。和歌では、しばしば「待つ」に重ねた掛詞になる。 標(しめ)結ひてわが定めてし住吉(すみのえ)の浜の 小松は後もわ…

富士

駿河と甲斐の国の歌枕。富士の語源は、「ほで(火出)」あるいは「フチ(火の神)」という。いずれにせよ火が元にある。記録に残る火山活動としては、781年から1707年まで十数回あった。特に800年、864年、1707年の噴火が有名。今でも活火…