天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

馬酔木

「あせび」は、日本に自生するツツジ科の常緑低木。アセボトキシンを含む有毒植物。葉を煎じて殺虫剤とする。馬がこの枝葉を食べれば酔って足がなえることから「足痺(あししび)」と呼ばれ、次第に変化して「あしび」そして「あせび」となった。そこから馬…

ムスカリ

ユリ科の多年生球根植物で、40,50種もある。地中海沿岸・西アジアが原産。ベル状の花を穂の形にたくさんつける。花の色には紫が濃いものと、青が濃いものとある。ブドウヒアシンスの別名がある。葉は細長く少し肉厚。植えたままにすると暖かい時期に葉…

海老根

えびねは日本各地の山林に生えるラン科の多年草。数珠の偽球茎を海老に見立てて名がついた。漢字では化偸草を当てることも。春の季語で、えびね蘭、花えびね などが傍題にある。 隠者には隠のたのしみ花えびね 林 翔 みちのくの山に掘りたるえびねとぞ花弁を…

紫雲英(げんげ)

マメ科の越年草の蓮華草のことで中国原産。かつては緑肥として稲の収穫が終わった田んぼで広く栽培されたものだが、化学肥料の普及と共に栽培されることは少なくなった。 指ゆるめ紫雲英の束を寛(くつろ)がす 橋本美代子 どの道も家路とおもふげんげかな 田…

葉桜の季(とき)(2)

葉桜を詠んだ俳句や短歌は多い。葉桜には、花が散ったことの残念さ・虚しさとその後に湧き立つ生命力のたくましさ・暗さと両方の感情が伴う。 葉桜や又おそろしき道となり 暁台 葉桜の影ひろがり来深まり来 星野立子 葉桜や忘れし傘を取りに来ず 安住 敦 葉…

お玉杓子

カエルの幼生。魚類によく似た生理的機能をもち、水中で常に鰓呼吸している。2、3カ月で変態し、先ず後肢が、次いで前肢が生えて、尾は次第に体内に吸収され消失する。俳句では、季語「蝌蚪(かと)」の傍題で、他に蛙子、蛙生る、蝌蚪生る、蝌蚪の紐 などが…

鑑賞の文学 ―短歌篇(27)―

日盛りを歩める黒衣グレゴール・メンデル一八六六年 モラヴィアの夏 永田和宏『やぐるま』 今年の2月25日に、角川学芸出版から小池 光『うたの人物記』が刊行された。元は角川『短歌』に平成十八年八月号から二十年九月号まで、「短歌人物誌」として連載…

葉桜の季(とき)(1)

里山ではところどころに桜の白や紅の花群が残っているが、緑の葉が目立つ季節になった。新緑の初夏にうつる前の晩春である。鶯の声もしたたるように美しく滑らかになってきた。横浜市の舞岡公園では、春田に蛙の鳴き声がこころよく、水中にはお玉杓子の黒い…

花韮(はなにら)

ハナニラ属の多年草。原産地はアルゼンチンで、日本には明治時代に観賞用に導入された。球根植物。葉にニラやネギのような匂いがあるので、ハナニラの名がある。繁殖力旺盛で、植えたままでも広がる。野菜のニラは同じ科の植物だが、属が違う。 韮の花ひとか…

木蓮

モクレン科の落葉低木。紫木蓮(しもくれん)とも言う。中国原産で古く日本に渡来した。小枝の先に、葉に先だって、暗紫色の六弁花をひとつずつつける。ハクモクレンは近縁種で、やはり中国原産。 木蓮の風のなげきはただ高く 中村草田男 紫木蓮くらき生家に靴…

東一華

アズマイチゲは、キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。花期は3月から5月。別名「雨降花」。わが国では北海道、本州、四国、九州の山地の日当たりの良い所に生える。アジアでは樺太、朝鮮、ウスリー地方に分布する。 谷を行き明るきに心あそびたりあづま一華…

桜狩(5)

桜はもう散り始めていることを承知で、大磯の高来(たかく)神社から地獄沢を経て湘南平へと山路を歩いた。山桜はもとより、ムラサキケマン (紫華鬘)、山吹の花、著莪の花、花大根、タチツボスミレなど多彩な花に出会えた。高来神社では、春の大祭の準備らし…

イヌフグリ

ゴマノハクサ科の二年草。ふぐりの名はその実の形からきている。ヒョウタングサ、テンニンカラクサとも。漢名は地錦。春の季語。川崎展宏にはイヌフグリの句が七句もある。次に全句をあげよう。 いぬふぐり兼好さんの森は其処 川崎展宏 コートのひと其処此処…

桜狩(4)

横須賀市の衣笠山は、正しくは「鞍掛山」という。山の姿が馬の背に鞍を置いたように見えるところからついた名前らしい。紅葉の時期に訪れて桜木の多いことに驚き、春に来てみたいと思ったものだが、やっと実現した。でも残念ながら雨が降ったり他の場所に行…

水菜

各種あるが、京都ではアブラナ科の蔬菜をさし、これを関東では京菜と呼ぶ。漬物や煮物にして食べる。壬生菜は近縁種。春の季語。傍題に京菜。 水菜採る畦の十字に朝日満ち 飯田龍太 夕空の晴れて京菜の洗ひたて きくちつねこ 一束の水菜うつくし旅の町 鳥羽…

桜狩(3)

わが住いの近くには、東海道・鉄砲宿があり、桜並木が花盛りになっている。それで鎌倉の花の情況はいかにと様子を見に出かけた。春まつりは8日から始まっていて15日まで続く。若宮大路の段葛は桜の満開であった。両側に近くの店の名前を書いた雪洞が吊る…

鑑賞の文学 ―短歌篇(26)―

政宗の追腹(おひはら)きりし侍(さむらひ)に少年(せうねん) らしきものは居らじか 斎藤茂吉『石泉』 [塚本邦雄] 「少年(せうねん)らしきものは居らじか」とは、一体いかなる「真意」を秘めてゐるのか。已むを得ず腹を切らされたとて、それは武士としての本…

桜狩(2)

浜松城公園の桜を見に行ってきた。浜松城は徳川家康と深い因縁がある。三河から東進を開始した徳川家康は、駿府に攻め込んでくる武田信玄の侵攻に備え、遠州一帯を見渡せる三方ヶ原の丘に着目。元亀元年(1570)、岡崎城を長男の信康に譲り、三方原台地の東…

アネモネ

キンポウゲ科イチリンソウ属の多年草。和名はボタンイチゲ(牡丹一華)、ハナイチゲ(花一華)、ベニバナオキナグサ(紅花翁草)など。語源はギリシア語で「風」を意味するアネモスから。ギリシア神話に、美少年アドニスが流した血よりこの植物が産まれたと…

ハクモクレン

通常、モクレンといえば紫木蓮を指す。ハクモクレンは、この紫木蓮の近縁種で共に中国が原産地。古く日本に渡来した。 声あげむばかりに揺れて白木蓮 西嶋あさ子 はくれんの花の占めたる夜空あり 千代田葛彦 雷はしる刹那刹那を神の手の白きはのびるはくれん…

椿

ツバキ科の常緑高木で日本の代表的な花木でう。五百余りの園芸品種がある。日本に自生するのは、ヤブツバキ、ユキツバキ、ヤクシマツバキの3系統が知られている。花期は普通、2月から4月。 鵯の嘴入るる椿かな 浪化 椿落ちてきのふの雨をこぼしけり 蕪村 …

ムクドリ

日本全国に分布する。シベリア、樺太、中国でも繁殖。木の穴や屋根の隙間に巣をつくり、青い卵を産む。繁殖期以外は群生し、数千羽の大群になることがある。昆虫、木の実を食べるが、都市では糞や鳴き声の被害に遭うことも多い。ムク、白頭翁とも。俳句では…

桜狩(1)

神奈川県でも桜が咲き始めた。強風のなごりがある晴天の日に小田原に出かけて、桜の咲き具合を見て来た。毎年でかけるのは、入生田長興山の名木・枝垂れ桜、小田原城の桜そして西海子(さいかち)小路の桜並木である。いずれも七分咲きといったところ。三四…

コブシ

モクレン科モクレン属の落葉高木。北海道から九州、朝鮮の山野に生える。春、新葉より早く梢に香気ある白花をつける。花弁は6枚で、雄蕊雌蘂が多数ある。秋には実が熟して裂け、赤色の種子が白糸で垂れさがる。シデコブシ、タムシバ(ニオイコブシ)など。 …

かたくり

ユリ科の多年草。北海道や本州中北部の山野に生える。朝鮮半島やアムールなどにも分布。地下茎は多肉・白色棍棒状で、澱粉を貯える。カタコ。古名は、かたかご。万葉集にある大伴家持の歌は、あまりにも有名。2009年4月5日、2011年4月11日のブログに引いたの…

菫(すみれ)

スミレ科の多年草。スミレ属には、日本だけで約50種ある。花言葉は「思慮、思い」。 万葉集・山部赤人の歌「春の野に菫つみにと来し我そ野をなつかしみ一夜寝にける」や野ざらし紀行の芭蕉句「山路きてなにやらゆかし菫草」は、過去のブログで紹介したように…

連翹(れんぎょう)

中国原産のモクセイ科の落葉低木。3月から4月にかけて、葉の出る前に、腋芽に2.5cmの花をつける。さし木や株分けにより増やす。古名は「いたちぐさ」「いたちはぜ」。 連翹の縄をほどけば八方に 山口青邨 連翹や朝のひかりのまつしぐら 福永耕二 見ゆる…

城山かたくりの里

神奈川県相模原市緑区川尻にある個人所有の丘陵地である。30万株のかたくりが群生している。他にも、雪割草、節分草、東一華、菊咲一華、玄海躑躅、木五倍子、オオイアウチワ、シロガネソウ、三椏 などが見られる。毎年訪れているが、今年は梅と同様に、開…

春寒

三寒四温といえど今年はいつまでも寒さがぶりかえした。でも、さすがに梅の花の時期は過ぎて桜の開花宣言を待つばかりとなった。江ノ島や円覚寺あたりを歩いて、桜の梢を見上げている。 藪陰の鋭き笹鳴や鳶の空 春潮の渚を駈くる子犬かな 沈丁のかをりがとど…

雪割草

桜草の一種。高山帯の岩場に生える。キンポウゲ科の三角草やその変種の洲浜草(すはまそう)の別称でもある。 雪割草垂水の滝は巌つたふ 山口草堂 洲浜草鞍馬はけふも雪降ると 後藤比奈夫 雪割草庭に咲きいで去年の春地におろししこと思ひ出づ 半田良平 三つ葉…