天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2013-02-01から1ヶ月間の記事一覧

早春賦(3)

藤沢の遊行寺では、月例の骨董市が開かれていた。元使塚のある常立寺では紅白の梅が七分咲きであった。江ノ島・奥津宮の境内には山田検校の銅像があり、その胸元に白梅が影を落としていた。日蓮上人刑場跡という龍口寺には史跡巡りの人たちが大勢来ていた。…

サンスクリットではナーガという。インドの龍王思想はヒンヅー教や仏教とともに伝播し、東南アジアにも各種の龍神伝説が残る。中国では最古の夏王朝の頃から天子の象徴とされた。 子を去らせ乳腫れたればわが妻もかなしき竜となりに けらずや 石本隆一 阿夫…

地蔵

菩薩の一つで、釈迦入滅後、弥勒が出現するまでの間、現世にとどまって衆生を救う。冥府の救済者でもある。日本では平安時代から信仰が盛んになった。通常、右手に錫杖、左手に宝珠を持つ。毎月24日に地蔵講をする地方が多い。なお六地蔵は、六道において衆…

濠とも書く。敵の侵入を防ぐために城の周囲を掘って水を溜めたもの。水を満たさない空堀もある。周囲に堀をめぐらせた集落を環濠集落という。水稲農耕とともに大陸からもたらされた。佐賀県の吉野ヶ里遺跡を見た時に実感できた。日本の平城には大体、堀がめ…

山葵(わさび)

アブラナ科の多年草で日本特産。渓流に自生するか栽培される。年中採れるらしいが、俳句では春の季語になっている。傍題に山葵田、山葵沢、葉山葵、青茎山葵 など。 山葵田の隙といふ隙水流れ 清崎敏郎 紗のごとき雨来ては去る山葵沢 有馬壽子 ちんばそにさ…

竜の玉

林の中に自生する蛇の髭あるいは竜の髭と呼ぶユリ科の常緑多年草が晩秋から冬につける碧色の実のことである。俳句では冬の季語。 この家の竜の玉ともさやうなら 細川加賀 日当りの土いきいきと龍の玉 山田みづえ 生きものに眠るあはれや竜の玉 岡本 眸 波羅…

早春の熱海

今年の梅の開花は随分遅れているようだ。一方、伊豆や熱海では早咲きの桜が見ごろになっているという。待ちきれずに一泊二日で熱海に出かけた。宿泊は「かんぽの宿(本館)」をインターネットで予約した。熱海駅前はバス停の改築でごたごたしていた。歩いて…

地図

現存する最古の世界地図はバビロニアの地図で、幾何学の出現と同時期であった。最初に科学的測量による地図を作成したのは、1695 年にフランスにおいてであった。日本で最初に作成された地図として記録が残っているのは、大化の改新(645年)で土地の測量を…

白梅

梅はもともと日本には自生せず、古代に中国から漢方薬としてもたらされた。「うめ」は大和言葉でなく、中国語の「梅(メイ)」が訛ったものという。万葉集で梅の歌は多く詠まれた。その場合、「梅」といえば「白梅」をさした。紅色の梅花は「紅梅」と言った。 …

スギ科の常緑針葉樹でわが国の特産。現在ではアジア各地に植林されて分布域が広がっている。長寿命で天然記念物の大木も各地にある。有名な産地の名を冠した吉野杉、秋田杉、屋久杉などがある。杉の古名は「まき」とされるが、古くは優れた用材となる樹木を…

サクラソウ

サクラソウ科の多年草で江戸時代から観賞用に栽培されてきた。自然には、北海道南部、本州、九州の川岸や高原の草地に生える。傍題にプリムラあり。 乳児の瞳に形なすものさくら草 加藤知世子 花びらにかくるる蕾桜草 倉田紘文 鉢植の変種あまたのさくらさう…

スイートピー

シチリア原産のマメ科の一年生つる草。花の色には、紅、ピンク、白、青紫などがある。大きな蝶形の芳香のある花を十数輪つける。俳句では、春の季語だが、グリンピースと共に「豌豆の花」の傍題になっている。 水兵がお茶をもて来ぬスヰートピー 本田あふひ …

早春賦(2)

昔から三寒四温というように、天気の変動が大きい。気象庁の積雪予報がはずれて、腹を立てている人たちもいるようだ。スーパーコンピュータを使ってデータをまとめているが、それを元に予測するのは、あくまで人間なので、匙加減が入ってくる。羹に懲りて鱠…

鑑賞の文学 ―短歌篇(35)―

岡井隆は、短歌の文字配列に関しても試行している。そもそもの始まりは、塚本邦雄と前衛短歌の時代に図形上に配列する試みであった。歌集『E/T』では最後の章だけであったのだが、本格的に歌集全体で横書きを採用し、多段に文字を配列したのが、『伊太利…

断層

広辞苑では、「地層や岩石に割れ目を生じ、これに沿って両側が互いにずれている現象」と説明されている。最近特に原発の安全性を検証するのに活断層が敷地内にあるかどうかがしきりに議論されている。活断層とは、過去百万年ほどの間にずれたことのある断層…

床屋

理髪店。赤、白、青の帯を巻いた棒がくるくる回って、店の表示をしているが、このマークは西欧からきている。中世の西洋では、理髪師は外科医を兼ねて、瀉血や抜歯なども行った。赤・白・青に塗り分けた棒は、瀉血のときの血に染まった握り棒と包帯を象徴し…

早春賦(1)

鎌倉の寺々を訪れると、庭には蝋梅、万作、福寿草などの花を見かける。梅の開花は少し遅れているようだ。 ひらひらと鳩の降り来る寒九かな 潮風に菜の花の黄の揺れ止まず 潮風にほの白梅のつぼみかな 笹子鳴く岡井隆を責むるがに 一心に写経してをり福寿草 …

終着駅

汽車や電車の最終到達駅、ターミナル。そこから先には線路がない。終着駅は始発駅でもある。人生に結びついたロマンチックな情景を連想させるこの言葉は、小説や演歌の題材になることが多いが、短歌ではあまり詠まれない。歌言葉にはなっていない。 終着駅さ…

ウツボ

なんとも暗い響きを持つ呼び名。「ウウオ」と口ごもる母音が3つ続いているからである。ウツボ科の魚で、本州中部からフィリピンの浅海の岩礁に生息する。ナダ、ナマダなどと呼ぶ方言もある。性格が荒く、歯は鋭く、噛まれると大変痛い。皮が厚いので、なめ…

河豚(ふぐ)

フグ科とその近縁種の総称。温熱帯の海の沿岸部に生息する。瞼がある。30種くらいいる。日本に多いクサフグは砂地に棲む。下関のトラフグは食用で知られる。胆や卵巣にテトロドトキシンという悪名高い毒がある。 月星の相触るる夜の河豚づくし 能村登四郎 …

かつて猿楽の能と呼ばれ、猿楽に鎌倉時代の歌謡・舞曲の要素が加わったものとされる。観阿弥・世阿弥父子が先行する諸芸能の長所を取り入れて将軍足利義満の保護のもと、能を芸術的に大成したとされる。 早笛に吹かれて今し歩む床かうかうたりわれに偽りはな…

辞書

広辞苑によると、辞書とは、言葉や漢字を集め、一定の順序に並べてその読み方・意味・語源・用例などを解説した書。辞典。 辞書一冊わが手に遺し南海へ征くと書き来て君の帰らず 山本かね子 笑うとも喜ぶともありわが作る方言辞典の腐るの項には 大島史洋 簡…

ペリカン

ペリカン科の鳥の総称。下くちばしには伸び縮みする袋があり、これで魚をすくいあげて食べる。モモイロペリカン、カッショクペリカン、ハイイロペリカン(伽藍鳥)などの種類がある。 ペリカンの嘴うすら赤くしてねむりけりかたはらの 水光りかも 斎藤茂吉 …

鮫(さめ)

軟骨魚網板鰓類(ばんさいるい)で、エイ目以外のものの総称。温帯・熱帯の海に棲む。肉・ひれは食用になる。皮は乾かして「さめやすり」にしたり、刀剣の装飾用にする。 三億年の歳月海を漕ぎいたる鮫の裸身のかなしき灰色 井辻朱美 迷ひ鮫孤独に泳ぎをるなら…

うどん

私の個人的な経験でうどんが最も旨いと感じたのは、西宮に住んでいた頃、出張で京都や東京へ行く際に、阪急電車の十三駅や新大阪駅で食べた昆布うどんであった。見かけは、素うどんにおぼろ昆布をかけたものに過ぎなかったが、食べる度に旨いと感じた。なお…

鑑賞の文学 ―短歌篇(34)―

見渡せば花も紅葉もなかりけり浦のとま屋の秋の夕暮 藤原定家 新古今和歌集の三夕のひとつである。他の二首は、 さびしさはその色としもなかりけり真木立つ山の 秋の夕暮 寂連 心なき身にもあはれはしられけり鴫立つ沢の秋の夕暮 西行 定家の歌と他の二首と…

パン

メソポタミアが発祥とされ、古代エジプトでも作られた。小麦粉やライムギ粉を主原料とする。イースト菌を加えてこね、発酵膨張させて焼いた食品。日本語のパンはポルトガル語からの転化という。なお、無発酵のチャパーティーというパンもある。また、あんパ…

中に吊るした舌が打って鳴るものと外から打つものとの2種類がある。前者には鐸(たく)、鈴(れい)、ベルが、後者には梵鐘などがある。大形の鐘は中国で作られたのが始まりで、朝鮮半島にきて更に大きな梵鐘が出来た。 はつせ山入相(いりあひ)の鐘をきくたびに…