天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

イチローを詠む(2)

11年連続して200安打が達成できるか、はらはらいらいらしながらテレビ画面に見入った。 イチローのデザインといふ淡青のユニフォーム着る観客あはれ 打てざれば食事も咽喉を通らざる日のありしことイチロー語る イチローのベンチの横に誰もゐずゲーム見てゐ…

ロベリア

南アフリカ原産のキキョウ科の二年草。春から夏に開花する。花言葉は悪意、敵意というから凄まじい。 空いろのつゆのいのちのそれとなく消なましものを ロベリアのさく 北原白秋 ロベリアの紫いろがしつかりとその位置占めて咲ける くもり日 木下利玄 一束(…

イチローを詠む(1)

今年もMLBが始まって日本人選手たちの活躍に目が離せない。以前のことになるが、イチローのマリナーズ時代の終りからヤンキースに移籍するあたりのことを短歌に詠んだ。10回に分けて、とびとびになるが、ご紹介してみたい。 ヒット打つ毎に一たすICH…

素粒子

昨年以来、一般紙でもヒッグス粒子のことが話題になった。そして最近は暗黒物質。宇宙の構成要素は、暗黒エネルギー(68.3%)、暗黒物質(26.8%)、原子からなる通常の物質(4.9%)とされる。前二者は謎のままである。うち暗黒物質は、目に見えず、電気的…

つばめ

漢字で、燕、乙鳥、玄鳥などと書く。春に南から日本に渡って来て、秋に南に去る。燕にとって最近の日本の都会は、まことに住みにくい。一軒家であっても軒先に巣をかけると、汚れることから除去されてしまう。 蔵並ぶ裏は燕の通ひ道 凡兆 人住んで燕すみなす…

藤の花のうた

今年は、桜の開花が例年になく早かったが、藤の花も一か月くらい早く咲いた。毎年、藤の花を詠んだ俳句、短歌を紹介しているが、時に重複する。今回はそれを避けたつもりである。 藤の花顔へ落ちくる鞍馬道 川崎展宏 常盤木を金縛りして藤の房 川崎展宏 下町…

藤の季節(2)

大磯の裏山を歩いて、毎年この時期に見かける藤の花をいつもの場所に見ることができた。 谷渡る青葉若葉の息の中 里近き山になだるる藤の花 何鳥かルルリリと啼く若葉風 こでまりの旧東海道化粧(けはひ)坂 大磯の裏山に咲き風に揺るむらさき淡き山藤の花 若…

藤の季節(1)

葉桜の頃になると藤の花が目立ち始める。大船フラワ−センターに行って感じたことだが、公園や家の藤棚で育てている藤の色は、紫がはっきりしているのに、野生の山藤は色が淡い。藤沢新林公園の藤を見に行ったら初燕を見かけた。二羽が溜池の辺の泥を啄んでい…

牡丹(ぼたん)

中国原産、薬用として栽培されていた。根が血行障害や鎮痛に効果がある。唐代以降に観賞用になり、日本には8世紀に渡来した。 牡丹咲くすこし不安の水藻草 飯田龍太 ぼうたんに腰をうづめて老夫婦 川崎展宏 年齢の牡丹へかたむくにやあらん 川崎展宏 動きゆ…

メダカ

半世紀前までは、日本各地の小川や水路でよく見かけたものだが、現在はめっきり少なくなり、絶滅危惧種になっている。夏の季語だが、たまたま池で見かけたので、取り上げた。 水底の明るさ目高みごもれり 橋本多佳子 笹の葉に目高の鼻の流れよる 石橋秀野 緋…

葉桜

桜の花が散り始めると若葉が出てくる。花が残っている頃の風情が印象に残る。 葉桜や又おそろしき道となり 暁台 葉桜や忘れし傘を取りに来ず 安住 敦 葉ざくらやしづかにも終る日のあらん 石橋秀野 「風よりも火だね」と我を呼びし人葉桜のした火を抱かず行…

八重桜

他の桜に遅れて咲くサトザクラの品種群。厚ぼったい花房と葉が同時に現れる。平安時代から知られているが、江戸時代に多くの品種が育成された。塩漬けにした花を熱湯に入れ飲用に供する。 八重桜日輪すこしあつきかな 山口誓子 山に出て山に入る日や八重桜 …

高遠(2)

高遠には、文学碑がいくつもある。多くの文人たちが訪れたことを示している。高遠城址に立つ大きな碑(例:河東碧梧桐)は目につくが、町の通りの縁にさりげなく置かれている碑(例:窪田空穂)は、案内図がなければ見つけるのは難しい。有名な俳人、歌人に…

高遠(1)

全国的に知られた桜の名所・高遠城址公園までは、JR伊那市駅からバスで行けるのだが、間隔が空いていたので、タクシーに乗った。公園のグランドゲートまで乗って4500円かかった。 高遠は古くから諏訪氏の勢力圏にあり、南北朝のころから支族の高遠氏が…

駒ケ根

今年の桜の見納めに一泊二日で信州・伊那市に出かけた。駒ケ根にホテルを予約しておいた。初日は、午後から僅かの時間しかないので、光前寺を訪ねるにとどめた。木曽駒ケ岳ロープウェイに乗ってみたいと思ったが、ちょうど工事中で休止。もっとも町中でもか…

山桜(3)

最後に現代短歌から。俳句もあげておく。 山又山山桜又山桜 阿波野青畝 山ざくら陶師夫妻の遠会釈 飯田龍太 花の中太き一樹は山ざくら 桂 信子 日のありしところに月や山ざくら 鷹羽狩行 山桜青淵に舟すべらせて 長谷川櫂 植ゑつぐや老木若木の山ざくら空に…

山桜(2)

次に近代短歌から。 緋縅(ひをどし)の鎧を着けて太刀佩きて見ばやとぞ思ふ 山ざくら花 落合直文 うすべにに葉はいちはやく萌えいでて咲かむとすなり山桜花 若山牧水 山ざくら咲きたるところとほり行き心はきよし言ひがてなくに 斎藤茂吉 夕づきて渓間の風の…

山桜(1)

葉が出ると同時に開花する。江戸末期にソメイヨシノが出て来るまでの桜は、この山桜が主体であった。奈良の吉野山、京都の嵐山は、古くから花見の名所であった。先ず和歌に詠まれた例をあげる。 あしひきの山桜花日並べてかく咲きたらばいた恋ひめやも 万葉…

葱坊主

ネギの花。球状の花を坊主頭に見立てていう。四月頃に中心から太い花茎を伸ばして頂きに細かい白い花の集まった球をつける。 葱坊主子を憂ふればきりもなし 安住 敦 一本の道のはじめの葱の花 鈴木節子 ゆふ日てる向うのぼりの浜畑(はまばたけ)葱の坊主の 立…

石仏

石造りの仏像。岩壁に彫られたものを磨崖仏という。 石仏の裾くろく濡れ人間の生きつぎて来しそのくらき意味 坪野哲久 見るためのまなこならねば一本の線に彫られて笑む石の像 造酒廣秋 米栂を水楢を天にいただきてくらぐら並ぶ地の石ぼとけ 小山 豊 石仏は…

道祖神

村にとって外来の悪霊をさえぎる神で、辻、村境、峠などにおかれた。旅の安全、縁結び、子づくり といった願いも込められた。形としては、石碑、男女和合の神像、陰陽の形の石や自然石 などがある。道陸神(どうろくじん)、さえの神とも。 双体に岐神(くなと)…

鱈(たら)

タラ科の魚。日本海から北太平洋に分布、北にゆくほど浅海にすむ。ちり鍋、棒ダラ、塩ダラなどにして食べる。スケトウダラの卵巣を塩漬けにしたものが、たらこ。 藁苞や在所にもどる鱈のあご 室生犀星 北十字かかげて荒るる鱈場かな 小野寺勗子 春寒(はるさ…

桜の季節(3)

近くの林や遠くの山には、山桜が咲いているのが見える。山桜といえば、東逗子の神武寺までの山路が見どころと決めているので、出かけてみたが花は既に散った後であった。それなら、三浦半島随一の桜の名所、衣笠山は如何に、とタクシーで乗り付けたが、後の…

牡蠣(かき)

イタボガキ科の二枚貝の総称。日本近海には約25種が棲息し、なかでもマガキは古くから食用にされてきた。岩に付着して生活するので、形状は一定でない。 松島の松に雪ふり牡蠣育つ 山口青邨 牡蠣の口もし開かば月さし入らむ 加藤楸邨 橙の灯いろしぼれり牡…

一華草(いちげそう)

キンポウゲ科の多年草で、山地や小川の辺りにはえる。東(あずま)一華、白山(はくさん)一華、四国一華、菊咲一華などの種類あり。 谷るりを行き明るきに心あそびたりあづま一華を一握りほど 松村英一 にんじんは明日(あす)蒔けばよし帰らむよ東一華の花も…

片栗

北海道、本州の山林にはえるユリ科の多年草。早春に二葉を出し、花茎の先に淡い紫色の六弁花を下向きに開く。古名は堅香子(かたかご)。万葉集の大伴家持の歌は有名だが、すでに本ブログで紹介しているので、今回は省略。 かたくりは耳のうしろを見せる花 川…

城山かたくりの里

相模原市緑区川尻にある個人所有の山林にかたくりが群生しており、この季節になると一般公開される。毎年出かけて見に行っている。かたくりだけでなく、雪割草、岩うちわ、猩々袴、ミツバツツジ、箒桃、キブシ、一華、辛夷 などが咲いていて見栄えがする。今…

節分草

キンポウゲ科の多年草。節分のころ開花するのでこの名がある。右の画像は、キバナセツブンソウ。 節分草つばらなる蕊もちゐたる 加藤三七子 咲くだけのひかり集めて節分草 高橋悦男 屈まりてこゑ絡み合ふ節分草 細井三千代 節分草の雄蘂が紫にけぶるとふ「け…