天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

雲海

山頂や飛行機から見おろした雲の上面が海面のように見える情景。夜や早朝は表面が滑らかだが、日中は上昇気流のため荒く波立つ。 雲海のはたてに浮ぶ焼岳の細き煙を空にしあぐる 窪田空穂 忽然としら雲の上にわが身あり凝りて動かぬ広き雲海 窪田空穂 光なき…

井戸

地下水を得るために地中に掘られた穴。構造上から、開井と管井とがある。前者は直径が0.9m以上、深さは10m以内で人が自由に出入りできるもの。後者は、直径が0.6m以下で側面は竹、木、鉄などからなる。施工法からは、堀井(開井)、打込井、錐もみ井、鑿…

残暑の候(1)

豪雨と旱魃が同じ国内で起きる現象は世界共通であるらしい。わが国でも、例えば秋田県が前代未聞の豪雨なのに山を越えた群馬、埼玉の利根川水系上流にはさっぱり雨が降らず、ダムは水枯れの状態。猛暑の時期は過ぎつつあるが、関東平野の水不足が解消するの…

カレー

インドを中心に中近東から東南アジア一帯で用いられる混合香辛料、またそれで味付けをした料理のこと。タミル語のカリ(スープの具)が語源という。アニス、ウコン、コショウ、メース、トウガラシ、ナツメグ、ニッケイ、カルダモン、オールスパイス等を混合…

 城(続)

2012年3月3日のブログでとり上げた内容の続き。「美の巨人たち」というテレビ番組は、私の好みで毎週見ているが、建築シリーズ「城」の中で、名古屋城の歴史を解説していた。それがなかなか面白く、再び城を詠んだ歌を調べてみた次第。名古屋城は、大名たち…

納豆(なっとう)

糸引納豆は、蒸し大豆をわらで包み40度くらいに保存して納豆菌により発酵させたもの。寝ぢ、からし、醤油などを加え御飯にかけて食べる。塩辛納豆は、コウジカビを作用させ乾燥したもの。 今宵妻にいふこともなく納豆のおほ目の粒を飯にかき混ず 大越一男 納…

茗荷(みょうが)

熱帯アジア原産のショウガ科の多年草。本州以南に自生する。花が開かないうちの若芽を茗荷の子といい、また春に地をぬきでて先が尖る若茎を茗荷竹といって、共に食用に供される。薬味、汁の実、漬物、刺身のつま などにされる。 茗荷掘る市井の寸土愉しめり …

豆腐

大豆の蛋白質を凝固させた食品。中国の淮南王劉安が創始したという。豆乳に凝固剤を加えて固めるが、固まりをくみ豆腐という。木綿布を使って固めるのが木綿豆腐。絹ごしは濃い豆腐を重しをかけずに固めたもの。 ゆれ動く豆腐をとりて食みしかばあな冷たさよ…

猛暑とMLB(続)

ニューヨーク・ヤンキースタジアムで、ブルージェイズとのダブルヘッダーは特に面白かった。第一試合でイチローは二本のヒットを放ち、四千本に後一本とした。第二試合では、スタメンから外れたが、2対2同点の九回裏に代走として出場、二塁から三塁へ盗塁…

キーウィ

マタタビ科マタタビ属の雌雄異株の落葉蔓性植物、またはその果実。日本在来の近縁種にはマタタビ属のサルナシがある。現在普及しているものは、中国中部原産のシナサルナシが1904年にニュージーランドに移入されて栽培され、改良されたものである。耐寒性が…

そば

タデ科の一年草。中央アジア東部の原産。食品の蕎麦は、江戸初期に朝鮮の僧侶・元珍が伝えたという。縁起の良い食品として、引越し蕎麦、年越し蕎麦という風習がある。 手打ち蕎麦大盛りを食ひしづまりし心をはこび神楽坂歩む 山本友一 箸立ての箸抜きながら…

『しづかに逆立ちをする』 (続)

私の好みの歌の続きである。幻想を詠んで魅力ある歌、比喩が巧みで楽しい歌など。 オオオニバスの葉ごと葉ごとに燕尾服の侏儒の道化が正座 してをり コンソメゼリーに閉ぢ込められて花のごとく海老は待ちをり舌 ちかづくを 北アイルランドの寥寥無慚(れうれ…

『しづかに逆立ちをする』

久しぶりに新鮮な感覚の楽しい歌集に出会った。現実と幻想とが混在する歌の数々。中には作者の私的な事情を知らない故の難解な作品もあるが、おおむねよく理解できる。短歌の正調韻律に馴れている人には、読みづらいところがあるかもしれないが、逆にその自…

瀧(2)

俳句と短歌の詩形の特徴に関連することだが、以下の水原秋桜子の句と前登志夫の歌を比べて見るのも興味深い。秋桜子の句は、昭和29年、那智の滝での作。(これは上田三四二に先んずること20年である。)一方、登志夫の歌は、現実の瀧でなく、森林の中に降…

猛暑とMLB

この頃の毎日続く暑さでは、とても日向に出る気がしない。家にいるとどうしてもテレビで野球を見てしまう。特にMLBから目が離せない。ビデオにとっておけば、自分の都合のよい時間帯に見ることができる。日本の選手が活躍するチームの試合に関心が強くな…

瀧(1)

河川の流れが垂直に近い崖を落下する場所。華厳の滝や白糸の滝は、溶岩流がせき止められてできたものという。落下する水の渦流によって滝壁の下部がえぐられて滝が漸次後退する場合もある。その典型がナイアガラの瀧で、年平均1.3mずつ後退しているらしい。…

彗星(2)

長い尾をひく大型の彗星は、古来、箒星と呼ばれ、凶事の前触れとしておそれられた。頭部の核は直径数十km以下で、主成分は、水・アンモニア・メタン・炭酸ガスなどの氷からなり、金属が混入している。彗星が太陽に近づくと表面がとけてガスや微粒子が放出さ…

天女花

天女花と表記して「おおやまれんげ」と読む。大山蓮華のことでモクレン科の落葉低木。本州中部以西の深山に自生する。大峰山・八経ケ岳の群落は有名。朴や泰山木の花に似ているが、蕊の形や色が違う。特に蕊の真紅と白の花弁の対比に惹かれる。夏の季語。 大…

金閣寺

京都市北区北山の鹿苑寺のことで、開山は夢想国師。昭和二十五年に放火により消失したが、三十年に再建された。放火事件は三島由紀夫の小説でよく知られている。 おばしまに手弱女(たわやめ)倚(よ)れる金閣を霧(き)らふに 見れば夢に似るかも 伊藤左千夫 金…

バラ科ナシ属の落葉高木。ニホンナシは、野生種を古くから改良してつくられたもの。果肉に石細胞が多く独特の舌ざわりがある。品種には、二十世紀、長十郎、幸水、菊水などが知られている。 月さすや洋梨の荷の開けられて 川崎展宏 梨食ふてうすむらさきにけ…

白桃

すでにとりあげたように万葉集にも詠まれている(2012年8月22日)。以下にはそれら以外の作品をご紹介しよう。かけがえのないものとして詠まれることが多い。 白桃の柔毛透かして見てゐればすずしく人はもの言ひてくる 百々登美子 白桃の和毛(にこげ)ひかれ…

彗星(1)

太陽系に属する小天体で、今までに約2100個が知られている。太陽を焦点とする楕円軌道と放物線軌道が45%ずつ、双曲線軌道が10%程度あるという。楕円軌道をもつ彗星は、一定の周期で太陽のまわりを公転するが、周期200年以下のものは200個以下。中でもハレ…

風鈴

風鐸(ふうたく)、鉄馬(てつば)ともいう。唐の岐王が竹林に玉片をかけ、その音で風を占い、占風鐸と呼んだ。日本では風鈴売りが江戸時代に親しまれた。また風鈴をつるした蕎麦屋の屋台もあり、風鈴蕎麦と呼ばれた。以前にもご紹介したが、神奈川県では川崎大…

目薬

通常、点眼薬をさす。抗生物資、サルファ剤、ビタミン、収斂剤などの水溶液や油液などで粘膜を刺激しないようにpH,浸透圧、成分の配合などが工夫されている。 目薬の一滴をさししばかりにてわが目は水のかたまりとなる 岡崎康行 目薬のしづくをふかくたた…

ひまわり

今までにとりあげていない短歌を以下にご紹介しよう。アメリカ大リーグ野球MLBを観戦していると、選手や監督が向日葵の種を口に含み、その皮を器用に歯で剥いてぺっぺぺっぺと外に吐き出す情景を頻繁に見かける。野手が守っていてもこれをやる。鳩がこの…

らっきょう

中国、ヒマラヤ地方が原産というユリ科の多年草。排水良好の地を好む。鱗茎は特有のにおいがあり、甘酢漬などの漬物として利用する。 五月なりラッキョウ鳴らし食うときも教師とならむ友を蔑む 寺山修司 らつきようの上に泪のつぶ落ちてらつきようは泣くわた…

ケーキ

西洋風の生菓子。洋菓子。ショートケーキ、ホットケーキ、クリスマスケーキ、バースデイケーキ など。 鋭角に切りしケーキをわかち合ふひととせの瀬に誰も黙して 滝沢 亘 玄人にまけぬ手際と褒められてホットケーキをまた今宵焼く 松村英一 食欲も羞(やさ)し…

地震を詠む

古語では「なゐ」と言った。古い用例としては、日本書記の歌謡「臣の子の八符の柴垣下動(とよ)み地震(なゐ)が揺り来ば破(や)れむ柴垣」がある。ところが、以後の古歌には、勅撰集・私撰集をはじめ国歌大観所収の私家集にも全く出てこないという。 もちろん古…

西瓜

西瓜の歌は既に、2011年8月15日、2012年7月5日のブログでとり上げているので、ここではそれらと重複しない作品をご紹介する。西瓜の西を「スイ」と発音するのは、唐音。スイカの表記には、「水瓜」もある。蔓性で雌雄同株。果肉の色には、淡紅、紅、黄、クリ…

渓流

学生の頃、バスで延々とたどった青森県の奥入瀬渓流は忘れ難い。 芽吹きたる山毛欅のみどりを透しつつ朝の陽は及ぶ渓流のうへ 島本正齎 滾ちつつ渓流は岩を曲りゆく行く先ありて急げるごとく 森 比左志 渓流のたぎちに低く迫り咲く赤き椿は水に散るべし 初井…