天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

さんざし

漢字では山査子あるいは山櫨子と表記する。中国、モンゴル原産のバラ科の落葉低木で、わが国には享保年間に薬用植物として朝鮮から渡来した。四月に梅に似た白色五弁の花が咲き、九月には球形の実が赤塾する。この実は消化吸収薬や果実酒になる。 右の画像は…

鳥居

神社の象徴になっている鳥居の起源には諸説ある。中国やユダヤなどと関係があるとか。日本人としては語源から、天照大御神が天の岩屋にお隠れになった際に、八百万の神々が鶏を鳴せたが、このとき鶏が止まった木を鳥居の起源であるとする説が分りやすい。形…

芭蕉(3)

芭蕉は英語では、ジャパニーズ・バナナとなっているが、原産地は中国という。沖縄地方では、昔から葉鞘の繊維で芭蕉布を織り、衣料などに利用していた。現在でもバショウの繊維を利用した工芸品が作られている。 移し植うる芭蕉運ばれ地のうへに横たへられて…

芭蕉(2)

台風に広い葉が煽られてなびき破れるさまは痛々しく、破(や)れ芭蕉と呼ばれ、俳句では秋の季語になっている。俳人・松尾芭蕉の俳名は、深川の自宅の庭にあった芭蕉からとったという。 刃こぼれの一剣似たり破芭蕉 水原秋櫻子 相隣り合ひて互に破芭蕉 倉田紘…

芭蕉(1)

バショウ科の大形多年草。葉は2mほどにも拡がり長い楕円形。バナナもバショウ科バショウ属の大形多年草である。ただしバナナの実と違い、芭蕉の実は食べられない。 いささめに時待つまにぞ日はへぬる心ばせをば人に見えつつ 古今集・紀 乳母 かぜふけばあだ…

髑髏

ドクロは白骨化したヒトの頭部の頭蓋骨で、しゃれこうべ(「晒され頭(こうべ)」の意)とも言う。髑髏と骨を組み合わせた図柄は、海賊の旗や紋章になった。現代でも危険物の印として使われる。 あるいは髑髏を抱いているだけかもしれない 独り言だけの 舞台…

ポール・セザンヌ

ポスト印象派でキュビスムをはじめとする20世紀の絵画に大きな影響を与えた「近代絵画の父」とされる。しかし彼が評価されたのは死後のことであり、生前は酷評され、幼い頃の親友であった文豪のゾラからも見放された。ただ晩年には若い画家たちが彼を慕って…

磯菊

キク科の多年草で、関東から中部地方の海岸にはえる。葉の裏側が銀白色。10月、11月に黄色の花をつける。野菊の一種。俳句では、季語・野菊の傍題のひとつである。 磯菊の黄の花むれて咲く果(はたて)海無縫にも荒あらと輝る 久方壽満子

野菊

野路菊、野紺菊など野に咲く菊の総称である。花の色はさまざま。各地に自生する野菊は多く、秋の野山を風情あるものにする。 名もしらぬ小草花咲野菊哉 素堂 秋天の下に野菊の花弁欠く 高浜虚子 雨粒のときどき太き野菊かな 中村汀女 よき友にたより吾がせむ…

神奈川の力石16

川崎大師から3kmほど離れたところにある石観音堂は、寛文5年に明長寺の僧弁融によって開かれた寺で、本尊は石造如意輪観音像になっている。境内には、漁師たちが亀たちに手伝ってもらって海から引き揚げ、手洗石として奉納した「霊亀石」や地元の俳人・花鳥…

秋明菊

秋冥菊とも表記するが、キク科ではなくキンポウゲ科の多年草である。八重咲きのものが菊の花に似ているところから、この名がついた。また京都の貴船付近に多く見られたので、貴船菊という名もある。中国伝来とされるが、漢名は「秋牡丹」。 観音の影のさまな…

葛(くず)

秋の七草の一つ。奈良県(大和の国)の国栖(くず)が葛粉の産地であったところからの命名。漢字の「葛」は漢名による。葉が風にひるがえると裏の白さが目立つことから、別名、裏見草。平安時代には裏見を恨みに掛けた和歌が詠まれた。根には多量のでんぷん…

蓮根(続)

「れんこん」あるいは「はすね」は、2011年4月25日に取り上げているが、以下はその続きである。俳句では、「蓮根掘る」が冬の季語になっている。「蓮掘る」は傍題。蓮根の原産地はインドという。昔はおせち料理など縁起の良い日に供したが、穴の多いことが「…

月蝕(2)

10月8日の夜7時前後に、この現象が起きた。残念ながらわが住む横浜市戸塚区の空は雲が覆っていて、観察できなかった。NHKテレビのニューで月蝕を見ることになった次第。 大鱗の鯉月蝕のごと浸る雪の夜はなる半桶(はんぎり)の水 鷲尾酵一 夏の鹽甘し わが目の…

月蝕(1)

周知のように月蝕は、地球が太陽と月の間に入り、満月が欠けて見える現象。食尽の月は、欠け方が最大限に達した状態を指す。皆既月食が典型。 しびれ蔦河に流して鰐を狩る女らの上に月食の月 前田 透 さそりが月を齧じると云いきチモールの月食は暗き 千夜の…

孔雀草

北米原産キク科の一年草。長い茎がたくさん枝分かれして多数の花を咲かせるところから、孔雀の尾っぽの羽根に見立てられた。花の色は白が一般的だが、紫やピンクもある。庭や花壇に植えられる。マンジュギク、ハルシャギク、クジャクシダなどとも呼ばれる。…

神奈川の力石15

村の神社には様々の規模がある。今も季節の節目には盛大な祭を催すところもあれば、地元の人さえ正式な名前を知らない忘れられたようなところもある。まら、それぞれの由来も様々。 数奇な由来を持ち、現在も盛大な祭がある神社の一つに、三浦市三崎の海南神…

茶は亜熱帯東南アジア原産のツバキ科の常緑喬木で、その若葉を摘んで蒸し、冷却しさらに焙って作る。若葉を摘む時期により、一番茶、二番茶、三番茶などの区別がある。湯を注いで飲むのが煎茶、粉にして湯を混ぜるのが抹茶。 茶を飲みて心静まれ長靴の重みが…

杜鵑草(続)

2009年10月8日のブログの続きである。近くの公園を散歩していて「タイワンホトトギス」と名札のついた一群の花杜鵑草を見つけた。「タイワン」とついていることに興味が湧き、この草花の種類を調べてみた。今更ながらわが不明を恥じるのだが、随分と種類が多…

稲妻(5)

俳諧に詠まれた江戸時代の例をいくつかご紹介しよう。 稲妻を手にとる闇の紙燭かな 芭蕉 あの雲は稲妻を待つたより哉 芭蕉 いなづまやきのふは東けふは西 其角 稲妻のかきまぜて行く闇夜かな 去来 いなづまや堅田泊りの宵の空 蕪村 正岡子規は、生涯に百句余…

稲妻(4)

世界には雷の三大多発地帯と呼ばれる地域がある。オーストラリア北部に位置するダーウィン、中央アフリカ、アマゾン である。他にも、メキシコ湾沿岸部、南アメリカ、ヒマラヤ、東南アジア などあり、全世界で毎年約2,000人が落雷で死亡しているという。 黒…

稲妻(3)

雷という時は、対地放電にせよ雲間放電にせよその音と光の放電現象全体を意味するが、稲妻は、光の部分に注目した言葉である。雷検知器には、光音検出型と電磁波検出型とがある。前者は見える範囲、聞える範囲に限界がある。後者は、稲妻から放出される電磁…

稲妻(2)

雷に伴う稲妻は雲と雲の間、雲と地面の間の放電現象。空気中を大量の電気が瞬時に流れるので、数万度の高熱が起きて光を発する。雷光は空気にじゃまされるので直進できず樹の枝のように分岐したり、曲折したりといろいろな形状をなす。 くらき夜の誰に心をあ…

稲妻(1)

古くは「いなつるき」「いなつるび」などの呼び名もあった。古来、秋の歌として詠まれ、俳諧でも秋の季語になっている。稲を実らせると考えられていたからであろう。 秋の田の穂の上をてらす稲妻の光のまにもわれや忘るる 古今集・よみ人しらず 世の中を何に…

グラス

グラスはもともと素材の硝子を意味するが、転じてそこから作られる洋酒用のガラスの盃、眼鏡、双眼鏡などの製品をも含むようになった。ただ日本では、ほとんどの場合、硝子製のコップや洋酒杯を指している。 老の歯にさやるグラスのある時は鈴の音(ね)なせば…

コップ(2)

短歌でコップを比喩に使った例は、ほとんど無いようである。もっぱら物理的容器として詠われている。 戦争なぜ止められぬ。床に落ちしコップ鋭利に突きささる 五喜田正巳 流し台のコツプの水によみがへりパセリ一束が緑なす森 白石トシ子 ピシピシとコップ鳴…

コップ(1)

コップはオランダ語kopからきている。ガラス製の水飲みのことである。英語ではカップcup。コーヒーカップのように陶磁器製のものもある。 人妻のすこし汗ばみ乳をしぼる硝子杯(コツプ)のふちの なつかしきかな 北原白秋 風呂に汲みしあとの冷たき井戸水をコ…

神奈川の力石14

力石は村社に残っている場合が多く、その場所を訪れると、思いのほか華麗な社であったり、境内が広いことに驚かされることがある。今回の例では、茅ヶ崎市浜之郷の鶴嶺八幡である。 海側から入る参道は、その昔流鏑馬が催されたらしい一直線の長大な松並木の…

家鴨(続)

アヒルについては、すでに2009年8月25日でとり上げているが、以下はそこに入れていない作品である。 川の瀬に洗ふ蕪(かぶら)の流れ菜を追ひ争ひてゆく あひるかな 野村望東尼 夜の更けし酒場の路地は家鴨二羽相寄りてゐる黄の 嘴(はし)あはれ 河野愛子

虹(5)

山口誓子は、生涯に虹の句を46句詠んでいる。他の俳人と比べて多いのではないか。特に句集『和服』には35句もあり、大半を占める。次に10句をあげる。 虹がちに虹の柱のきほひ立つ 『遠星』 話途中なれども客に虹を指す 『晩刻』 怒張して虹の柱の立てるかな…