天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

歌の原郷(3)

石川啄木の後に、新短歌論を提唱・実践した歌人に、理論物理学者の石原純がいる。例えば、次のような三首の歌。三行書き、四行書きがある。短歌の韻律から完全に外れている。 暴風雨のあとの 火のやうに焼けたゆふ空。 世界はなぜ燃えあがらないのだ。 ほん…

歌の原郷(2)

さらに例を三つあげておこう。 うぬ惚(ぼ)るる友に 合(あひ)鎚(づち)うちてゐぬ 施与(ほどこし)をするごとき心に 短歌韻律: うぬ惚るる|友に合鎚|うちてゐぬ| 施与をする|ごとき心に| 啄木流: うぬ惚るる友に■合鎚うちてゐぬ■ 施与をするごとき心に …

歌の原郷(1)

先月の12月16、17日でとり上げた小池光さんの『石川啄木の百首』の続きである。「歌の原郷」とは、小池さんが、解説として巻末につけた題名である。解説の終りの部分に、小池さんはつぎのように書いている。 「(啄木の歌は)短歌という制限された文学の伝統…

鴫立庵の力石

力石の調査研究で高名な高島先生から、大磯鴫立庵にも力石があることを教えて頂いた。今まで先生の著書『神奈川の力石』を見て、各地を巡っていたのだが、大磯は馴染みの土地であり、うかつにも見過ごしていた。改めて著書の該当箇所を見ると、高来神社の力…

源氏物語

500名近くの人物が登場し、70年余りの出来事と800首近い和歌が書かれた雅な王朝物語だが、この平安時代の長編小説の名は、古写本などでは使われていなかった。つまり、書かれた当時の題名が何であったのかは明らかでない、という。「源氏の物語」、「紫の物…

「鴫立庵」

大磯に遊んだ時には、帰り際に鴫立庵に寄って投句箱に、その日の嘱目詠を入れてくることが多い。選者は、第二十二世庵主・鍵和田釉子さんである。今年の入選句が載っているパンフレット「鴫立庵」平成27年11月号が送られてきた。わが入選句は次のもの。 アオ…

つるばみ

どんぐりの古名で、漢字では橡と表記(「くぬぎ」と同じ)。辞書を見ると、次のような説明がある。 どんぐりの実またはそのかさを煮た汁で染めた色。灰汁(あく)媒染して薄茶色、鉄媒染して焦げ茶色や黒色に染める。また、その色の衣服。 A 奈良時代、家人・…

くぬぎ(続2)

クヌギと間違いやすい樹にコナラがある。両者ともにブナ目ブナ科コナラ属の落葉広葉樹で、どんぐりの実がなる。日本の雑木林に多く自生しており、樹液にカブトムシや蝶などの昆虫が集まる。違いは、樹皮、葉、実などの形や色つやで見分ける。多分、どんぐり…

くぬぎ(続1)

2008年1月10日に少し書いているが、今回はもっと多くの歌をあげる。なお、漢字の表記には、檪、椚、椡、橡、栩、椢、椪 など様々ある。 たかせさすさほの河原のくぬぎ原色づくみれば秋のくれかも 藤原家良 春きてもは山がすそのくぬぎ原まだ冬がれの色ぞのこ…

里山の黄葉(2)

里山となれば、横浜市の舞岡公園のもみじも気に懸る。もう遅いだろうな、と思いつつ出向いた。案の定、紅葉はほとんど無く、黄葉のかたまりが山のところどころに残っている。できるだけ近くに行ってみることにした。師走のせいか、溜池の周辺にはバードウォ…

里山の黄葉(1)

藤沢の新林公園には、檪(くぬぎ)の多いことが、今回の散策であらためて分った。紅葉は少なく黄葉が目立つ。漢字では櫟、椚、橡、栩などと表記する。花は雌雄別の風媒花で4,5月頃に咲く。実は他のブナ科の樹木の実とともにドングリとよばれる。檪は持続的に利…

大磯地獄沢のもみじ

JRの東海道線で平塚から大磯を通るたびに、山の紅葉の見ごろが気になっていた。電車では海側からしか見えないので裏側の情況はわからない。十二月も半ばになったので、もう見頃だろうとわが定番のルートをたどることにした。 大磯駅から旧東海道沿いに化粧…

樅(もみ)(続2)

樅の木は、調湿性に優れ、抗菌性があるにも関わらず特別な匂いがないため、おひつ、寿司桶、そうめんの箱、かまぼこの板、米櫃、割箸など食品関係の材にも用いられる。木目が真っ直ぐで切削などの加工が容易。精油成分には、さまざまな効果があることが、最…

樅(もみ)(続1)

2008年3月19日の続きである。わが国では、北は秋田県から南は屋久島の山地に生える常緑高木である。円柱形の球果は黄緑色え、熟すと中軸を残して飛散する。材は古くから卒塔婆や棺桶に使われた。 日常の視界のかなた何ゆらぎつつあらん ひと群の 樅そよげる…

鑑賞の文学―短歌編(40)―

『石川啄木の百首』の続きであるが、ここでは、小池さんが深くは言及していない啄木の歌の表記について、課題を喚起しておきたい。それは、多彩な三行分かち書きの意図、についてである。詩人の北川透が『詩的レトリック入門』(思潮社)で余白論を試みてい…

鑑賞の文学―短歌編(39)―

小池光さんの『石川啄木の百首』(ふらんす堂)がやっと手に入った。アマゾンで探したら、「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です」とのメッセージがあった。直接ふらんす堂に発注する手もあったのだが、アマゾンだと送料無料になるので、入手時期未定のま…

人参(3)

ビタミンAの前駆体となるプロビタミンAであるカロテン類が豊富で、緑黄色野菜に分類される。カロテノイドを含む黄色や橙色のものや、黒人参などアントシアニンを含む濃紫色や紅紫色のものがある。 なお薬草として用いられているオタネニンジン(朝鮮人参ある…

人参(2)

夏に種を撒いて秋から冬に収穫する方法が容易である。東洋系ニンジンは、各地で作られるようになった。赤色の金時にんじんが代表的。甘味が強くてニンジン特有の臭みが少なく、煮ても形が崩れにくいので和風の料理に重宝される。西洋系ニンジンは、オランダ…

人参(1)

欧州、北アフリカ、中央アジアが原産地といわれるセリ科の一、二年草で、花は小形・白色。胡蘿蔔(にんじん)とも書くが、胡は外来種を意味し、蘿蔔は大根やスズシロのことである。わが国には、十六世紀に中国から渡来した。食用にされるものには、長根(東洋…

箱根湯本のもみじ

Webでこの時期の神奈川県の紅葉の見どころを探したところ、箱根湯本があった。だいぶ前に早雲寺や阿弥陀寺に行ったことがあるので、久しぶりに訪ねることにした。ところが、以前に通った道が通行禁止になっていたり、徒歩ではきつすぎるなどあって、結局現地…

源氏山のもみじ

円覚寺や東慶寺の紅葉が見応えがあったので、源氏山にも行ってみることにした。寿福寺の墓地の裏山を登るコースをとった。紅葉は裏葉を見上げるのが最も美しい。黄葉は大木であるほど見栄えがする。頼朝像を見て化粧坂を下ってまた寿福寺に戻ってきた。化粧…

鑑賞の文学―俳句編(44)―

長谷川櫂さんの新刊句集『沖縄』(青磁社)を読んだ。句集名は「沖縄」であるが、他に「夏の死」と「火車」の二章が入っている。「沖縄」の章は、沖縄の自然環境と現状並びに太平洋戦争で受けた戦禍を対比させて、沖縄にあらためて注目している。 句集を読ん…

北鎌倉の紅葉

藤沢・遊行寺境内の大銀杏が完全に黄葉したので、北鎌倉の紅葉はいかにと、円覚寺と東慶寺に行ってみた。いずれも満足のいく状態だけに、観光客で混み合っていた。風の強い日で、円覚寺裏山の紅葉はみな裏返っていた。あまり見かけない風景なので感動した。 …

酒の歌(9)

日本酒の製造・販売数量の多い県は、2010年度(平成22年度)時点で、兵庫県(約30%)、京都府(約20%)、新潟県(約7%)、埼玉県(約4%)、愛知県(約4%)の順となっている。但し、旨い酒の順位となると別。例えば、山口県産の「獺祭」は近年、大変な人…

大雄山の紅葉

今年は紅葉を見損ねた思いをしている。例年、大山寺とか鎌倉の紅葉谷を訪れて満足するのだが、今年はいずれも逃している。駄目もとで小田原経由大雄山(最乗寺)に行ってみた。参道沿いの森は大杉の木立であり、紅葉する樹木は極めて少ない。隣の「丸太の森…

酒の歌(8)

大吟醸酒とは、吟醸酒のうち、精米歩合50%以下の白米を原料として製造し、固有の香味及び色沢が特に良好なものに用いることができる名称。 純米大吟醸酒とは、大吟醸酒のうち、醸造アルコールを添加せず、米、米こうじ及び水のみを原料として製造したものに…

酒の歌(7)

清酒の要件を満たしたものうち、原料や製法が一定の基準を満たすものを特定名称酒という。原料や精米歩合により、本醸造酒・純米酒・吟醸酒に分類される。 本醸造酒: 米、米こうじ、水、醸造アルコール を原料とし、 精米歩合が70%以下。 純米酒: 米、米こ…

酒の歌(6)

酒造りに使われる水は酒造用水と呼ばれ、ほとんどが伏流水や地下水などの井戸水である。醸造所によって専用の水源を確保することが多い。水の硬度は、酒の味に影響する要素の一つ。軟水で造れば醗酵の緩いソフトな酒、硬水で造れば醗酵の進んだハードな酒に…

冬青(そよご)

冬になっても青々としているモチノキ科の常緑小高木で、本州中部から九州の山地にはえる。庭にも植えられる。葉は卵状楕円形でやや光沢がある。風で葉がザワザワ音をたてそよぐところから命名された。雌雄異株で、雌株は六、七月に白色の小花をつける。十、…

マユミ(続)

2012年2月11日の続きであるが、少し詳しく調べてみた。山野にはえるニシキギ科の落葉樹で、庭木にもされ、材は緻密、光沢があって象牙の感じを与える。 枝は緑色で白い筋があり、初夏に緑白色の四弁花を開く。四角形に近い実は、秋に淡紅色に熟して裂け、赤…