天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ニンニク

ユリ科の多年草。中央アジアが原産地と言われ、日本には十世紀以前に伝わったとされる。当初は薬に使われた。現在では各種の料理に用いられる。俳句では春の季語。「ひる」とも言い、漢字では、蒜、葫などを当てる。 蔵王背に蒜洗ふ夕まぐれ 蓬田紀枝子 恋の…

海胆(2)

俳句では春の季語になっている。なお雲丹と書くのは、卵巣を塩辛にしたものを差す時というが、そんな区別をしている人は稀のようだ。 海底は魂の遊び場雲丹の花 丸山海道 子負ひ漁婦小石に座り雲丹洗ふ 岡田日郎 海胆採りにかたむき迫る利尻富士 澤田緑生 海…

海胆(1)

「うに」は漢字で他に、海栗、雲丹などとも表記する。棘皮動物綱の一群の総称。浅瀬から深海までの領域に860種もが棲息しているというから驚く。古生代のオルドビス紀に出現したらしい。バフンウニ、ムラサキウニ、アカウニなどが一般的。その卵巣を生食…

波の歌(3)

和歌には、「浅瀬白浪」「荒浪」「沖つ白浪」「川浪」「ささ浪」「ささら波」「白浪」など、様々な形で詠まれた。 須磨の関夢をとほさぬ波の音を思ひもよらで宿を かりけり 新古今集・慈円 底ひなき淵やはさわぐ山川の浅き瀬にこそあだ波はたて 古今集・素性…

波の歌(2)

英語にもなっている津波は、地震や火山活動による海底地形の急変で海洋に生じる大規模な波である。高波、高潮、異常潮位などとは区別される。 君をおきてあだし心をわが持たば末の松山浪も越えなむ 古今集・読人しらず 秋の海にうつれる月をたちかへり波はあ…

波の歌(1)

波には、水面に起きるもの、地面を伝わるもの(地震波)、電磁波などの物理現象から、藤波、稲の波といった比喩的なものまで、様々ある。今回の一連でとり上げる波は、水面の波を主体とする。 それは風や振動などによって水面に生じる上下運動。また、その運…

海驢(あしか)

食肉目アシカ科の獣。主として太平洋中部に分布する。日本では、本州以南。烏賊、タコ、魚などを食べる。ハーレムを作る。人に慣れやすく、教えれば曲芸もできる。 億年の眠りむさぼる海驢(あしか)ゐて起きよ起きよと 幼らのこゑ 大野誠夫 アシカの仔抱きて…

海豹(あざらし)

食肉目アザラシ科の獣。北洋と南極周辺に多く群生する。魚貝、甲殻類を食べる。あまり回遊はせず、ハーレムを作らない。日本付近には、フイリアザラシ、ゴマフアザラシなど数種類が棲む。南極には、カニクイアザラシやヒョウアザラシなどが棲息。 胡麻斑(ご…

御輿(2)

俳句では神輿は夏の季語である祭の傍題のひとつである。 色町にしばらくやすむ神輿かな 小路智壽子 踏切に神輿せかれてしまふなり 宗田安正 いくそたび強訴(がうそ)の神輿下りたる叡山けふを雪 いだく谷 下村百合江 ぬばたまの闇を発ちきて暁の浜辺に神輿の…

御輿(1)

もとは天皇の乗り物を総称したものだが、のちに一般の祭礼において御神体や御霊代が乗る輿になった。おみこし。西行の歌の御輿長(みこしおさ)とは、付添人のリーダ。 御輿長(みこしおさ)の声先立てて下りますをとかしこまる 神の宮人 山家集・西行 夏まつり…

終戦記念日(3)

『日本のいちばん長い日』は、昭和42年に公開されたモノクロの映画。大宅壮一の名で発表されたノンフィクション『日本のいちばん長い日』を、東宝創立35周年記念作品のひとつとして映画化された。昭和天皇は、この映画を公開年の12月29日に鑑賞されていた(…

終戦記念日(2)

安倍総理の戦後七十年談話は、世界史にのこるものになるのではないか。今後は自衛に徹するのが精いっぱい。ただ、自衛のための戦争という不安は大きい。 終戦記念日になると戦争反対の声が一段と高くなるが、根本の問題についての思考が停止しているように思…

終戦記念日(1)

昭和二十年八月十五日、日本がポツダム宣言を受諾した。これにより第二次世界大戦が終結した。以降、毎年八月十五日には、戦没者を追悼する行事が各地で行われる。お盆と一緒の行事になることが多い。俳句では、敗戦忌、終戦日、八月十五日などとも。 終戦日…

盆(3)

芋殻(をから)は、皮をはいだ麻の茎で、盂蘭盆の門火をたくときなどに用いる。俳句では秋の季語。 玄関先でおがらを燃やしご先祖が道に迷わないように明るくする。その火で提灯のろうそくに火をつけて、家に迎え入れる。 子をつれて夜風のさやぐ芋殻買ふ 大野…

盆(2)

13日夕刻の野火を迎え火とし、16日の野火を送り火とする。川へ送る風習が灯籠流しである。お盆には精霊棚をしつらえて野菜などを供える。野菜に牛や馬の形を作ることも。盆花には、キキョウやハギなどが用いられる。 家の外に焚ける迎へ火燃ゆとすれば雨ふり…

盆(1)

日本古来の祖霊信仰と仏教が融合した行事。仏教用語の「盂蘭盆」の省略形である。七月十五日か八月十五日にあたる。お盆休みとして、十三日から十六日の四日間をとる習わしである。 俳句の季語は、盂蘭盆会であり、傍題に、盆、新盆、精霊祭、霊棚、瓜の牛、…

ヘルメット

頭を衝撃から守るために、作業場やスポーツの試合などでかぶる兜形の金属またはプラスチック製の帽子。 夜に入りて配り来し軍手ヘルメットあはれ封鎖排除用われら の装備 清水房雄 ヘルメットの下に尖れるあごのさきあげてばら撒く不信の ことば 武川忠一 君…

虫干し

夏の土用の晴天にカビや虫の害を防ぐため、書籍やめったに着ない衣服などを日に干したり、風に曝したりすること。土用干、虫払い、風入れなどとも。特に書画の場合には、曝書という。 うすじめる書(ふみ)もちいだしさ庭べの隅(すみ)のひかりに 書(ふみ)なめ…

新米

当年に収穫した米。今年米とも。水分が多いので水加減に注意して炊く。 新米を詰められ袋立ちあがる 江川千代八 新米といふよろこびのかすかなり 飯田龍太 花嫁のヴェールに撒けり今年米 堀口星眠 新米や百の倉の戸みな開く 仲田やゑ たきたての塩のむすびを…

打ち水(2)

打ち水の文化は、日本独特の風情のように思えるが、中国や韓国でも見られるのであろうか。欧米には、家々で打ち水をする習慣は考えにくい。 水打てば青鬼灯(あをほほづき)の袋にもしたたりぬらむ たそがれにけり 長塚 節 水やり日にあて或(ある)はかげに入れ…

打ち水(1)

夏の昼あるいは夕方、涼風を呼ぶためやほこりをしずめるために、庭先、道、店先などに水を打つこと。水打つ、水撒く、水遣り などとも。 打水に夕べせはしき木挽(こびき)町 武原はん 駅長の打ちたる水を踏みにけり 上野たかし 立山のかぶさる町や水を打つ 前…

ヒマラヤ

インド亜大陸とチベット高原を隔てる多数の山脈(カラコルム山脈、ヒンドゥークシュ山脈、天山山脈、崑崙山脈など)群から構成される。西はパキスタン北部インダス川上流域から、東はブラマプトラ川大屈曲部まで続き、ブータン、中国、インド、ネパール、パ…

鯰(なまず)

俳句では夏の季語。肉食夜行性の淡水魚。北海道南部〜九州。中国東部、朝鮮半島西岸、台湾などに分布する。湖沼や河川の中、下流域に棲む。古来から親しまれてきた魚で、絵の題材にもなっている。例えば大津絵の瓢箪鯰。現在、鯰は食用としてはあまり流通し…

アホウドリ

漢字では、信天翁と表記する。アホウドリ科アホウドリ属の鳥の種類。アルバトロス。翼を広げた際の大きさが2メートルを超える大型の海鳥である。かつては大量に生息していたが、羽毛をとるために乱獲され、1902年に鳥島が大噴火するなどして数が激減。わが国…

イチロー41歳

マイアミ・マーリンズに移籍してからも、イチローが先発出場する頻度は少ない。球団との契約でそうなっているのだろうが、安打数も打率もめっきり下がってしまった。ついに三十四打席ノーヒットという無惨な記録まで作ってしまった。イチローの当面の目標は…

夏木立(2)

都会の大きな公園には、森や林があるので、夏の時期には木立に憩う人達を見かける。明治神宮、新宿御苑、小石川植物園などは、近所に住む人には、絶好の避暑地ともなろう。これほど大規模な公園でなくとも、お寺や神社の庭、裏山には夏木立が見られる。 花は…

夏木立(1)

夏の青葉の生い茂った木立。落葉樹の青葉が似合う。「夏木立」は数本をさし、一本の木のときは「夏木」という。和歌にも俳句にも多く詠まれてきた。 先づ頼む椎の木も有り夏木立 芭蕉 木啄も庵は破らず夏木立 芭蕉 動く葉もなくておそろし夏木立 蕪村 いづこ…

熱海にて

春、梅まつりの頃に泊りがけで熱海に遊んで以来である。猛暑の時期に来たのは、海水浴が目的ではなく、花火を見に来たのである。熱海の海上花火大会は、春夏秋冬を通じて見ることができるが、中でも夏季の頻度が最多で7回、次が冬季で3日、春、秋が2回ほどで…

ヤドカリ

ヤドカリ科とオカヤドカリ科の総称。古くは、寄居虫(がうな)と呼んだ。エビやカニと同じ十脚目。多くは巻貝の貝殻に体を収め、貝殻を背負って生活する。そのため体型が変形した。成長するに伴い、大きな殻に引越しをする。蛸や肉食魚が天敵。なお、タラバガ…

サビタ

のりうつぎ。2010年6月14日の補足である。日本全土の山野に生える。七、八月に枝先に円錐形の花序を出し、白色のアジサイに似た花をつける。原田康子の小説『サビタの記憶』で有名になった。 花さびた草にかくれて水ゆくも 辻 桃子 さびた咲く一谿うすきあか…