天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

スーパームーン

日本の9月28日の夜は、スーパームーンということで、テレビで話題になった。スーパームーンは、月が地球に最も接近した時に、たまたま満月あるいは新月になる現象である。地球から見た月の円盤が最大に見える。日本で9月28日に月が最も大きく見えたのは、昼…

うなぎ(2)

奈良時代には、万葉集・大伴家持の歌にあるように、「むなぎ」と呼ばれた。院政期頃になって「うなぎ」という呼称が出て来たという。日本のウナギ養殖は、明治12年に東京深川で、殖産家の服部倉治郎によって初めて試みられた。以降、静岡県、愛知県、三重県…

うなぎ(1)

ウナギ科の魚。各地の河川に分布。特に本州中部以南の太平洋岸に多い。日本うなぎの産卵場は太平洋の沖合といわれる。稚魚のシラスウナギは、2月から5月にかけて、群れをなして川を上る。そこで8年ほどかけて成熟し、産卵のため海にくだる。肉は脂肪とビタ…

海鞘

「ほや」と読む。アカホヤ、マボヤ、スボヤなどが東北、北海道に分布する。 成熟すると球形や卵形になって、海岸の石、海藻、養殖筏などに固着する。入水孔と出水孔があり、その間が消化腔で連絡されて、水と共に微生物を摂取する。 訪ね来しみちのくの街灯…

白魚(2)

白魚の踊り食いは、生きたまま食べること。日本各地の河川の多い地方でみられる料理法で、春の風物詩といえる。食べ方は、白魚を網杓子ですくい、酢醤油の入った小鉢に移し、それを吸い物を吸う要領で、胃の中に流し込む。 七尾より春の白魚ともしきを商(あ…

白魚(1)

「しらうお」、「しろうお」と呼ぶ。紛らわしいことだが、シラウオ科の魚とハゼ科の魚とがある。前者は、全長10センチ。生きているときは、殆んど無色透明。後者は、全長5センチ。淡黄色で透明、うきぶくろが腹部に赤い点として見える。「いさざ」とも。俳句…

谷の歌―前登志夫

吉野下市町に生まれ育った前登志夫の『霊異記抄』には、 以下の15首がある。 谷くらく蜩蝉(かなかな)さやぐ、少年の掌(て)に あやめたる黄金(きん)のかなかな 艶めきて椿の谷を冬わたるこの負債者に沼凍るなり 昼の星さやげる谿をのぼりくる童子を呼…

谷の歌―西行

奥吉野の西行庵跡は、これまでに二回ほど訪ねたことがある。谷(西行谷と呼ばれることも)の途中にある。まことに小さな小屋で、本物には似ていないだろうと思った。 西行の『山家集』には、以下の26首がある。 春しれと谷の下みづもりぞくる岩間の氷ひま…

関東・東北豪雨

9月9日から11日にかけて、茨城県、栃木県、宮城県など関東・東北で大きな被害を出した豪雨を、気象庁は「平成27年9月関東・東北豪雨」と名付けた。連日テレビで被害状況が放映されていたので、つい短歌にしてしまった。ただ、情報が錯綜して誤報など…

月見

陰暦八月十五日(十五夜、中秋の名月)と九月十三日(十三夜、後の月)の月を観賞すること。月を愛でる習慣は、日本では縄文時代頃からあるらしい。名月の日に月を鑑賞する風習の始まりは、唐代の頃からという。 けふの今宵寝る時もなき月見哉 芭蕉 岩はなや…

鎧(よろい)

戦闘の際に、身体を矢や剣などの攻撃から防護する武具のこと。胴や胸を守るのが主な目的である。戦馬や象などの動物を保護するための鎧もあった。素材は、革・青銅・鉄 など様々。鉄であっても板金を加工したり鎖状にしたりと工夫された。日本の鎧には ・短…

葬儀と清酒

この秋は、わが遠い故郷の広島で二度の葬式に出席した。寿命がくれば生きとし生けるもの全て死ぬ定めにあることをあらためて思う。棺に入れられた死体の顔を見ることは忍びない。だがこれもわが時のことを想像するよすがになる。骨揚げまでは、とても参加で…

焼鳥

鳥肉を一口大に切ったものを、玉ねぎやピーマンなどの野菜とともに串に数個刺し通し、調味しつつ炭火やガス火で直火焼きにする。豚の肉や内臓を用いることも。奈良・平安時代には、野鳥は狩猟で食用にしたが、鶏は忌まれたという。「串打ち三年、焼き一生」…

葡萄酒・ワイン(2)

ワインは歴史の古い酒である。グルジアのあるコーカサス山脈の南麓周辺ではBC8000年頃からワインが飲まれていたという。アルメニアでは6000年前のものとされる世界最古のワイン醸造所跡が発見されている。ローマ時代に製造技術が格段に進歩したという。 わが…

葡萄酒・ワイン(1)

ブドウの果汁を発酵させて作る。通常、三種類に分類される。 赤ワイン: 色には赤、濃紫、赤褐色がある。黒ブドウ、 赤ブドウが原料。果実を丸ごと発酵させる。肉料理に 合うとされる。 白ワイン: 無色、緑がかった黄色みを帯びたもの。色の薄い果皮 のブド…

火山を詠む(2)

火山のもたらす恩恵もある。火山の地形・環境から得られる美しい風景、湧水、温泉、黒曜石などの鉱物である。火山のできる場所は、詳細は省くがだいたい次の3種類に分類されるという。 1.プレート発散型境界(リフトバレー、海嶺) 2.プレート収束型境界(海…

火山を詠む(1)

火山は、地球の殻にあるマグマが地表や水中に噴出することによってできる山やカルデラ(凹地)である。その噴火は、時に人間社会に壊滅的な打撃を与える。大噴火は、歴史的な記録や伝承に残されている。太陽系の惑星にも地球以外に火山の噴火が確認されてい…

数のうた

数は、順序や量を表す概念である。その数を表すための記号が数字。数の概念は、必要に迫られて、自然数 → 整数 → 有理数 → 実数 → 複素数 のように拡張された。「無」の概念を数に取り込み、記号「0」を導入して計算の世界を拡張したことも、数の歴史におい…

歌集『ぽんの不思議の』(2/2)

今回特に目立った特徴として、以下の2点をあげたい。アステリスク(*)の部分は、私の註釈である。 □取合せ・転換の妙 短歌の詩情を実現する方法として。 難解になる危険性もある。 庭草の茂りのなかに擬宝珠のむらさきありぬ ぬれぎぬならむ うすやみにウ…

歌集『ぽんの不思議の』(1/2)

小島熱子さん(「短歌人」所属)の第四歌集である。読み終えてから小池光さんの帯文の的確さがよく分る。その確認は、読者におまかせするとして、以下の分析は、私独自の見方である。 表現上の特徴としては、従来と同様に直喩、オノマトペが多い。 □比喩[直…

秋出水(あきでみず)

今年も台風がきて集中豪雨や洪水に見舞われている。山の麓の川では、急流と氾濫が起きる。 俳句では、単に出水といえば五月雨の頃の洪水で、夏の季語になっている。特に秋の洪水が多いことから、秋出水の季語もできた。 くちなはも流れ着くなり秋出水 中村苑…

波の歌(9)

波を用いた慣用表現がいくつかある。 波に乗る: 時勢にうまく合って進展する。調子にのる。 波を切る: 船などが、水をかき分けて進む。 波にも磯にもつかず: 中途半端である。 浅瀬に仇波: 思慮深くない者ほど、おしゃべりで騒ぎ 立てることが多いという…

波の歌(8)

さざなみは、風速5m/秒以下の弱い風が吹くときにできるしわのような小さな波で表面張力波。漢字では、漣,細波,小波などを当てる。 氷りゐし志賀の唐崎うちとけてささなみ寄する春風ぞ吹く 詞花集・大江匡房 秋潮のなみがしら皆われに向き瞬間の静止あり…

田螺(たにし)(2)

世界的に見れば、南米・南極を除いた大陸の淡水に棲息しており、アジアには特に種類が多く、稲作文化によりタニシと人との関係が生じ、人はタニシを食用にするようになった。日本でも「ツブ」、「田つぶ」などと呼び、味噌汁の具にするなど食用にしてきた。 …

田螺(たにし)(1)

タニシ科の淡水産巻貝の総称。北海道南部から九州までに分布。冬の間は池や田の泥中に棲息。春には道を作りながら泥の表面を這う。夏に幼貝を産む。春の季語で、傍題に田螺鳴く、田螺取がある。 田螺鳴く二条御門の裏手かな 河東碧梧桐 晩年や田螺つぶやき蜷…

波の歌(7)

土用波は、晩夏の土用の時期に、発生する大波である。遠洋に存在する台風の影響で起きる波で、正体は、うねり。 幾重にもうちあふごとく波さわぎ湧きたつ海を日は 照らしたり 佐藤佐太郎 あたらしき風涛三百六十の日々を凌がん健やかにして 佐藤佐太郎 押し…

波の歌(6)

筒状の波をサーフィンでは、チューブと呼ぶ。チューブの中をサーフボードに乗ってくぐりぬける快感は、昔アメリカの映画をみて初めて知った。 大き波たふれんとしてかたむける躊躇(ためらひ)の間も ひた寄りによる 木下利玄 のびあがり倒れむとする潮波蒼々…

炎暑に湯豆腐

八月二十二日、二十三日と暑いさ中を京都に出かけた。母の三回忌に出席するためだが、喪服すがたで歩くのは、上着、ネクタイをはずしていても汗だくになってしまった。ついでに泉涌寺、南禅寺、清水寺、霊山護国神社などを訪ねた。清水寺近辺は、東南アジア…

波の歌(5)

冬型の気圧配置となり風が強まると、岩で砕けた波の白い泡の様子が、花が群がっているように見える。これを「波の花」という。能登半島の曽々木海岸や鴨ケ浦海岸、越前海岸などでよく見られる。 草も木も色かはれどもわたつうみの波の花にぞ秋 なかりける 古…

波の歌(4)

浦波は、海岸に打ち寄せる波。いそ波は、磯に寄せる波。波の特性として、「立つ」「寄る」「返る」「越す」などが詠まれた。 海人小舟帆かも張れると見るまでに鞆の浦みに浪 立てり見ゆ 万葉集・作者未詳 いくたびかいく田の浦に立ちかへる波に我が身をうち …