天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2016-08-01から1ヶ月間の記事一覧

雲のうた(7)

遣新羅使は、倭国が新羅に派遣した使節。特に668年以降の統一新羅に対して派遣されたものをいう。779年を最後に正規の遣新羅使は停止された。万葉集には、遣新羅使の歌が合わせて145首載っている。あとの四首は防人の歌である。防人に行く人達の出身地氏姓は…

雲のうた(6)

「雲居」は、(1)空の高い所、雲のある天空 (2)雲(3)はるか遠い所 (4)皇居・宮中 などの意味がある。「雲の上」も同様の意味を持つ。「雲井」とも書くが、「井」は当て字。 最後の歌は、防人の作。 巻向の穴師(あなし)の山に雲居つつ雨は降れども濡れ…

雲のうた(5)

「天雲の」は、雲が浮かび漂うところから、「たゆたふ」「ゆくらゆくら」「別る」などにかかる枕詞。ただし一首目と四首目の天雲は、単に空の雲の意。 天雲の八重(やへ)雲隠(くもがく)り鳴る神の音のみにやも 聞きわたりなむ 作者未詳『万葉集』 ひさかたの…

雲のうた(4)

万葉集には、作者未詳歌が二千数百首もある。「作者未詳」は、平安時代の「読人知らず」に同じである。作者が実際にわからない、下賤の者である、歌詞に支障ある、勅勘の身であった などの場合に「読人知らず」としてある。 まそ鏡照るべき月を白栲の雲か隠…

炎帝の見下ろす大地

台風が去った後の晴天は、まさに炎帝の支配する灼熱の大地となる。緑あふれる野山ではあるが、木陰のない野道を歩くと目がくらむばかりである。出水のひいた野川にそって稲田の周辺を歩いたが、熱中症を怖れて一時間ほどで帰ってきた。 なお炎帝とは、古代中…

雲のうた(3)

万葉集中に引かれている「柿本人麿歌集」は、もともと万葉集成立以前の和歌集で、人麻呂が2巻に編集したものと思われているが、後世の編纂という説もある。ただ、そのうち少なからぬ歌は人麻呂自身の作と推測されている。雲の入った歌も以下のようにかなり多…

雲のうた(2)

万葉集には「雲」の詠まれた歌は、200首くらいある。 一首目の「隠口(こもりく)」は、「泊瀬」にかかる枕詞。「く」は所の意味。「こもり」は、中に入って出ないこと。隠れて現れないこと。大和の泊瀬は山に囲まれた所からきている。また四首目の「百伝ふ…

雲のうた(1)

「雲」の語源は「こもる(隠・籠)」から。天空に雨の元になる水蒸気が渦巻いて籠っている状態のもの、ということになる。青雲は青みを帯びた灰色の雲、また青空。「白雲の」は「立つた山・立ち別れ・絶ゆ・斯かる・遠」にかかる枕詞。「青雲の」も、雲の色…

島さるすべり

近所の俣野別邸庭園を午後四時過ぎに散策した。夏の夕陽がぎらぎら輝いて暑い。咲き残っている白い紫陽花を見かけるのみで、夏の花は少ない。ただ、山百合がぽつぽつと咲き始めている。 木立の中に背の高い白サルスベリを見つけた。幹に括られているプレート…

ICHI-METER (7)

ついにコロラドにおいて対ロッキーズ3戦の試合でMLB3000安打を達成することができた。日本中の野球ファンと全米のMLBファンが熱狂した瞬間であった。これでエイミーさんもしばらくはシアトルでゆっくり生活できることだろう。彼女の年齢は、8月時点で45歳ら…

ICHI-METER (6)

いつの頃からかイチローTシャツの腹部を丸抜きの白地にしたものが現れた。3000本までの残り数を書き込むようになっている。マーカスさんという人の考案らしく、Tシャツを作るマーリンズ球団庶務には、無償でアイディアを提供したとのこと。 イチローがバッタ…

ICHI-METER (5)

MLB3000安打まで、10本を切った。イチローは四番目の外野手としての契約なので、代打主体であり、先発になる試合は5試合に一回あるか無いかである。代打でヒットが出ない試合が続くと、ファンはいらいらする。エイミーさんにもファンがいるらしく、イチロー…

ICHI-METER (4)

今回からフロリダ・マーリンズ時代(2015― )に入る。ICHI-METERの目標値は、MLB3000安打になる。シアトル在住のエイミーさんは、イチローを追って米国各地の球場をとび廻るので、旅費も時間も大変である。 イチローと不思議なえにし感ずると取材に話すエ…

ICHI-METER (3)

今回もヤンキース時代のこと。日米通算4000本安打達成の前後が中心。ピート・ローズは、日米通算の安打数は認められない、という考え方だが、米国の野球ファンは大いに評価している。 やつと出た内野安打に小踊りしICHI-METERを高く掲げし あと三本 バントヒ…

ICHI-METER (2)

ヤンキース時代の情景である。ICHI-METERの目標値は日米通算安打数になった。ヤンキースに移籍してからも、シアトルのセーフコフィールドでマリナーズとの試合があると、昨日の画像のように、エイミーさんは右翼観客席最前線に「AREA 51」「ICHI-METER」を掲…

ICHI-METER (1)

リオ五輪の話題でMLBのイチローの話題が霞んでしまったが、このシリーズでは、イチローの技量と人格に惚れ込み、追っかけに十数年を費やしたアメリカ人主婦Amy(エイミー) Franz(フランツ)さんを年代を遡って詠んでみたい。 エイミーさんは、まずICHI-METER(…

雷のうた(5/5)

西村尚の歌に出てくる「鰤おこし」は、12〜1月,ブリのとれる時期に鳴る雷のことで、日本海側の地方でいう言葉である。 一輪の朱をのこして実となりし柘榴の闇を雷照らし過ぐ 富小路禎子 雷ながく聞こえてゐしが音もなく風に乱れて雪の降り出づ 樫井礼子 落…

雷のうた(4/5)

雷予測のシステムに気象庁の「雷ナウキャスト」がある。 http://www.jma.go.jp/jp/radnowc/index.html?areaCode=000&contentType=1 雷の激しさや雷の可能性を1km格子単位で解析し、その10分〜60分先までの予測を行うもので、10分毎に更新して提供している。 …

雷のうた(3/5)

専門的には、熱雷、界雷、熱界雷、渦雷、放電、幕電、超高層雷放電などの種類がある。ところで年間に雷日数の多い地方として、順に石川県金沢市、福井県福井市、新潟県新潟市、富山県富山市、秋田県秋田市・・・などとなっている。逆に雷日数の少ない地方は…

雷のうた(2/5)

雷は周知のように、雲と雲との間、あるいは雲と地上との間の放電によって,光と音を発生する自然現象のことだが、音の伝わる速度は、毎秒約340mなので、稲光から雷鳴までの時間により、雷の遠近を知ることができる。落雷を避ける時の重要な目安になる。 雷…

雷のうた(1/5)

「かみなり」は音を中心にした呼び名。「なるかみ」、「はたた神」などとも。古くは「いかづち」と言った。光を主体にする時は「いなづま」という。ちなみに「鳴る神の」は、音にかかる枕詞。 雷は夏に多いが、春や冬にも発生し、それぞれ春雷、寒雷という呼…

イチローを詠う

現役のスポーツ選手で最も短歌に詠まれているのは、イチローであろう。2001年にアメリカに渡ってからの活躍で、日本のオリックスに所属していた時以上に、一般のマスコミに乗り話題が広まった。今では、全世界の野球ファンの注目の的になっている。記録達成…

鎌倉八幡宮ぼんぼり祭

ずいぶん以前に見に行ったことがある。当時は鎌倉在住の漫画家・横山隆一が健在で彼の描いたぼんぼりの絵が見られた。今回は、8月6日から9日(9:00〜20:30)まで開催された。イチロー3000安打祈念の絵のぼんぼりや、養老猛司のヒメシロコブゾウムシの絵の…

MLB3000安打達成!!

8月6日(日本時間)から、コロラド・ロッキーズとの三回戦が始った。初日の一回戦は、代打で無安打。7日の二回戦で、8回から4番のスタントンの代りに立ち、三塁へツーバウンドのヒットを打った。その後、右翼の守備につくと、幸運にも九回に二打席目が廻っ…

風の詩情(15)

風を詠んだ和歌(短歌)を調べていて気付いたことがある。「嵐」は万葉集(785年頃成立)、から以降の和歌集で共通して詠まれているが、「木枯し」は万葉集にも古今集(913-14年成立)にも詠まれていない。二十一代集では、後拾遺和歌集(1086年成立)になっ…

風の詩情(14)

風の歌語について。大変多いが、代表的なもののみあげる。 *風のたより: 風がしらせてくること。風の使者。風のつて。 花の香を風のたよりにたぐへてぞ鶯さそふしるべにはやる 紀友則『古今集』 さつきやみ花橘のありかをば風のつてにぞ空に知りける 藤原…

MLB3000本安打へ(4)

8月4日の対カブス第3戦においても代打に立ったイチローにヒットは出なかった。MLB2998本安打からの足踏みは、対カーディナル第二戦から第四戦、続いて対カブス第一戦から第三戦まで続いている。無安打の時は、似たような状況が続くもの。 あと二本マッ…

風の詩情(13)

風の俳句には、和歌を本歌にしたものがかなりある。最も有名な本歌は次の和歌。 秋立つ日、よめる 秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞ おどろかれぬる 藤原敏行『古今集』 藤原敏行は、平安時代前期の歌人・書家・貴族。三十六歌仙の一人。 この歌…

風の詩情(12)

嵐の続きである。 *台風 明治以降に使われ始めた気象用語。語源は、ギリシア神話の 巨大な怪物テュポンに由来する「typhoon」という説が有力。 夜ひと夜(よ)家(や)なりどよめく颱風のそのなかにしも 虫の鳴きゐる 茅野雅子 吹きつのる颱風のなかに鵙が来て…

風の詩情(11)

嵐にはいくつか別の呼び名がある。 *嵐 「あ(荒)―あるーあらす」ときて、連用形名詞 「あらし」となった。参考(車上荒らし) ぬばたまの夜さり来れば巻向の川音高しもあらしかも疾き 柿本人麿『万葉集』 大海にあらしな吹きそしなが鳥猪名の港に舟泊つる…