天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2017-01-01から1ヶ月間の記事一覧

時間を詠む(9)

物理学における時間の定義は大変難しい。ニュートンは、時間は過去から未来へとどの場所でも常に等しく進むものとした。絶対時間である。ニュートン力学においては時間は全宇宙で同一とされた。ところが後のアインシュタインの相対性理論により、これが崩れ…

時間を詠む(8)

小形の電池ができるとゼンマイ式は衰退した。精度面では、振り子、水晶、電波などの活用が図られてきた。ただそれぞれの歴史をたどることは大変なので、ここでは省略する。詳細はwebの「時計の歴史」に譲りたい。 圧縮されし時間がゆるくもどりゆくインター…

時間を詠む(7)

機械式時計は、13世紀後半からイタリアやドイツで作られ始めたという。その動力は錘であった。錘をぶら下げると重力が生まれる。ただこれでは小さな時計にはならない。そこで出てきた動力源がゼンマイである。15世紀後半らしい。これで腕時計が可能になった…

新春の熱海梅園

熱海桜の糸川遊歩道から梅園まで坂道を延々と歩いた。入園の際にもらうパンフレットには、梅園の歴史が簡単に紹介されている。明治の初め、長与専斉が「国民の健康の元をつくるには温泉と自然に親しむことが第一」として、熱海梅園を開くことを提唱した。こ…

新春の熱海桜

閑話休題。 例年は2月になってから訪れていたのだが、今年は1月のうちに晴天続きの日を狙って出かけた。見に行く場所は決まっていて、糸川遊歩道と丹那神社の上の桜並木道の二カ所である。 熱海桜は、明治4年頃にイタリア人によりレモンやナツメヤシとともに…

時間を詠む(6)

砂時計の原理は、小さな穴から砂が一定の速度で落ちることを利用したもの。砂時計は特に船で航海する時に重要だったという。揺れに強いからである。 父や母と一緒にいる時間、恋人と一緒の時間 それぞれに印象が違うものである。 生れたらあともどりせぬ宿命…

時間を詠む(5)

燃焼時計(火時計とも)は、例えば蝋燭や線香に火を点けてその短くなってゆく様子を時間に対応させる仕掛けである。燃える速度が一定であるためには、媒体は均質でなければならない。 紀元前の中国ですでに使用されていたらしい。 時間を意識した時こそ歌を…

時間を詠む(4)

水時計の原理は、容器に水が流入あるいは流出する時の水面の高さの変化で時をはかるものである。わが国の飛鳥奈良時代の水時計を漏刻というが、これは中国に由来する。ちなみに以前に奈良の明日香村に行った時に、『飛鳥水落遺跡』を見たことがある。 次の一…

時間を詠む(3)

日時計の原理は、地面に垂直に棒を立て、その影が変化する様子(影の長さや角度)で一日の移り変わりを見ることである。 小中英之の歌は、読者に死までどれだけの時間が残されているかを考えさせる。 自動改札通した切符胸元へこのうす青き時間を照らす 尾崎…

時間を詠む(2)

時の移り・間隔を測る仕組みが時計である。時計により初めて時間が具体的に認識できる。時計は今から6000年ほど前にエジプトで誕生したという。最初は日時計であった。それから水時計、燃焼時計、砂時計 などと続く。 高瀬一誌さん(故人)は、私が短歌人に…

時間を詠む(1)

「時間」は昔から哲学者、科学者を悩ませてきた。その定義もさまざまであった。歴史をたどるだけでも大変である。人類はその誕生以来、時の移り変りを天体の運行や動物の生と死なの事象から認識していた。天体の運行からは、一定の周期つまり時間の概念を得…

早春の鎌倉長谷

年明けて定番の散策ルートの一つを歩いた。江ノ電で極楽寺に行き、そこから御霊神社、長谷寺、高徳院(鎌倉大仏)とたどった。極楽寺では、ヤブツバキの花弁が散った製薬鉢に氷が張っているのが目についたくらいで、花らしきものは見当らなかった。御霊神社…

空間を詠む(3)

一首目のように「生活空間」となると身近な感じになる。日常的によく出会う熟語だからであろう。二首目以下と比較すると納得できよう。 ところで空間がどんどん縮んで無になる状況を想像してみよう。われわれの宇宙は、この無の状態からビッグバンにより誕生…

空間を詠む(2)

空間とは通常、視覚・触覚にとって物体が存在しないで空いている所を指す。空間を飛び交っている電磁波(光、熱などを含む)や音などは物体ではない。 宇宙空間のことを考え始めると、ダークマターとかダークエネルギーなどまでが出て来て、空間の性質が気に…

空間を詠む(1)

空間という言葉が歌の中に現れると、古典短歌の印象とは全く違って、理知的現代的になる。新しい認識が得られたという感じである。 空間をよく詠んだ女性に真鍋美恵子さん(1906―1994)がいる。岐阜県出身で「心の花」会員。88歳で逝去されたが、発表当時は…

空間と時間

我々の宇宙は、138億年前にビッグバンという爆発によって、誕生し現在も加速膨張しているというが、その外側はどうなっているのか。 そもそも空間や時間の本質は何なのか。こうした素朴な疑問に対する回答は、古来、哲学、物理学などの分野でいろいろ考えら…

寒山拾得

毎年11月の勤労感謝の日に近くなると、建長寺から時頼句会開催の案内状が届く。だが、ここ二年ほどは御無沙汰しているので建長寺に伺うことも無かった。それで今年は松の内に尋ねた。半僧坊にも登ろうと向かったのだが、途中に寒山拾得と「楓橋夜泊」の二つ…

ヒツジグサ

スイレン科スイレン属の水生多年草。6月〜11月に花弁が10枚ほどの白い花を咲かせる。日本全国の池や沼に広く分布している。未の刻(午後2時)頃に花を咲かせることから、ヒツジグサと名付けられたというが、朝から夕方まで咲いている。 漣の吸ひ込まれゆく未…

トキソウ

ラン科の多年草で、日当たりのよい湿原に生える。初夏、茎頂に淡紅色の半開きの花一個横向けにつける。花の色が朱鷺の羽の色に似ているところからの命名。花言葉は、「控えめ」「幻の愛」「届けたい想い」「献身」。 朱鷺草のくれなゐまじる草の原霧のながれ…

ウスユキソウ

キク科の多年草で、北海道、本州の山地に生える。高さは25cm〜55cm。ミヤマウスユキソウ、ハヤチネウスユキソウ、ヒメウスユキソウなどの種類がある。 高嶺うすゆき草の花微(かすか)なる雲の中にまぶた合せて 一夜安かりき 松村英一 ゆきゆくにウスユキ…

首飾り

ネックレスとも言う。素材には真珠、金属、天然石などがある。肩凝り解消用や開運用のものもある。真珠のネックレスは、主に冠婚葬祭で利用される。白真珠は婚礼、黒真珠は葬儀に使う。肩凝り解消用として、ゲルマニウムネックレスという商品があるが、医学…

指輪

婚約指輪、結婚指輪が一般的。素材には金属だけのものと金属に宝石をつけたものとがある。それをどちらの手のどの指にはめるか、で意味を持たせることもある。指それぞれには、男女とも共通だが、次のような意味があるとされる。 ☆親指・・・なんでも望みが…

初春の江ノ島

正月一日は新江ノ島水族館に行き、七日には江ノ島を巡った。水族館の外回廊から眺める初春の富士は神々しいくらいに美しかった。水槽の魚たちや海豚ショーは普段と変わりない。江ノ島では、久しぶりにシーキャンドル(展望灯台)に登って、早春の湘南を見渡…

正月ぼたん

神奈川県の年末年始は晴天が続いて外出には都合がよかった。4日も過ぎれば鶴ケ丘八幡宮の初詣客は少なくなるであろうと考えて出向くことにした。しかし、JR鎌倉駅はごったがえしており、若宮大路の段葛には延々と人の列ができている。八幡宮の正殿までたど…

コケモモ

ツツジ科の常緑低木で、北海道から九州の高山帯に生える。夏に白、淡紅色の鐘形花を開き、のちに赤い球形の果実を結ぶ。生でも食べられるが、塩漬け、果実酒にもできる。塚本邦雄はコケモモの実をどのようにして食べたのだろうか。花言葉は、「冷淡」「反抗…

ワタスゲ

カヤツリグサ科の多年草で、本州中部以北の湿原に生える。初夏、茎頂に花穂を出す。 花言葉は、「揺らぐ想い」「努力する」。 綿すげや強力雲に並び出て 太田蓁樹 わたすげよ孤はよし群れ咲くは更によし山は遠く晴れ風は ひろびろ 小市巳世司 何にむかふ優し…

星のうた(12/12)

星座のうたをあげる。天空に分布する星のいくつかを結ぶと動物や人の形に見える。これらに名前を付けたのが星座である。星座が生まれたのは、古代バビロニア時代だったと言う。以来いくつかの時代に星座がまとめられたが、現在は国際天文学連合により88の…

星のうた(11/12)

今回は太陽系の惑星である火星、木星を詠んだ歌をとり上げる。最初の塚本の歌の「熒惑星(けいこくせい)」は、火星の異名で、和名のもっとも古いもの。聖徳太子の説話を扱った『扶桑略記』,『聖徳太子伝暦』にでてくるという。 熒惑星(けいこくせい)を水に隕…

黒豆

大豆の一品種で、黒大豆、ぶどう豆とも呼ぶ。種皮にアントシアニン系の色素を含むため、外見が黒い。丹波の黒豆が全国的に知られる。生産地の京都府京丹波町周辺の山間は、夏場は日中が蒸し暑く、夜は冷え込むという昼夜の寒暖差が大きい上に、霧も多く発生…

酢茎(すぐき)

京都市上賀茂地区特産のカブの一品種であるスグキナの葉と根を塩漬けにし、室に入れて加温し、強く乳酸発酵させて作った漬物のこと(すぐきづけ)。俳句では冬の季語。京の三大漬物(千枚漬け、しば漬け、酢茎)のひとつになっている。 加茂川の日々に涸れゆ…