天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

松毬(まつかさ)

松の果実で松ぼっくり、マツフグリ、マツダンゴ などとも。松脂を含み燃えやすい形状なので天然の着火剤としても利用される。日本の高山帯に分布するハイマツは、ホシガラスが松毬を運んで広まった。 松毬もおつるかぎりは落ちはててこの冬の日に 音一つなき…

ハイタカ

小形の鷹の一種。「ハシタカ」の音便形。雌が「ハイタカ」、雄は「コノリ」という。漢字で鷂。 ユーラシア大陸の温帯から亜寒帯にかけての広い地域に分布。日本では本州以北に棲む。繁殖期には。「キィキィキィ」あるいは「キョキョキョ」と鳴く。次の歌では…

カヤクグリ

イワヒバリ科カヤクグリ属の鳥。日本や南千島に分布する漂鳥で日本特産種。雀ほどの大きさで目立たない。亜高山帯から高山帯にかけてのハイマツなどの林や岩場に生息する。雑食性。チリリッと鈴を振るような声を出す。次の歌で「すずろに鳴き」と表現。 茅潜…

ハイマツ

マメ科の常緑低木。幹が地上を這うように伸びる。漢字では這松あるいは偃松と表記。日本では北海道から中部地方の高山帯に分布する。 はひ松のかげ深みつつなほ照れる光寂しも入日のなごり 島木赤彦 瑠璃鶲(るりびたき)鳴く偃松のかさなりのしげみは暗し 日…

佛日庵の白木蓮

街路樹の辛夷の花が、桜に先立って満開になっている。辛夷の別名は「田打ち桜」。近所の辛夷の花を見ると現在の住所に移って来た昔を思い出す。 先に遊行寺の白木蓮を見たので、円覚寺佛日庵の白木蓮の状況が知りたくなった。毎年の習慣になっている。北鎌倉…

ふるさとの富士ー開聞岳

通称「薩摩富士」。鹿児島県薩摩半島の南端に位置する標高924mの火山。日本百名山のひとつ。薩摩半島の最南端に位置し、海上交通の重要な目印とされた。太平洋戦争では、知覧の陸軍飛行場から飛び立った特攻隊機は、まず開聞岳へと進路をとり、富士山に似た…

ふるさとの富士ー桜島

通称「筑紫富士」。標高1117m。かつては文字通り島であったが、大正3年の噴火により、鹿児島市の対岸の大隅半島と陸続きとなった。 熔岩に秋風の吹きわたりけり 高濱虚子 桜島とどろき噴けり旧端午 水原秋桜子 春潮のまぶしき小手を噴煙に 白谷文城 黒い桜…

ふるさとの富士ー由布岳

通称「豊後富士」。大分県由布市にある標高1,583mの活火山。万葉集の頃は、木綿山(ゆふやま)と呼んだ。 古来より信仰の対象で、『古事記』や『豊後国風土記』にその名がでてくる。『豊後国風土記』では「柚冨峯」となっている。 娘子らが放りの髪を由布の山…

ふるさとの富士ー大山

ここの大山は「だいせん」と読む。通称「伯耆富士」。鳥取県西部にある標高1729mの火山で、西日本火山帯に属している。最高点は剣ヶ峰、第二峰が弥山である。弥山では古くから祭事が行われていた。なお富士山そっくりに見えるのは西(伯耆町)から見上げた…

遊行寺のハクモクレン

藤沢遊行寺放生池のほとりの白木蓮が今年も満開になった。樹齢は約40年という。つぼみが必ず北を向くことから「コンパス・フラワー」という別名がある。この花により遊行寺は、「東国花の寺百ヶ寺」に登録されている。 ちなみにこの放生池については、元禄7…

ふるさとの富士ー利尻山

通称「利尻富士」。標高1721mの成層火山。日本百名山のひとつ。登山道(鴛泊コース)の途中にある甘露泉水は、水温が年中約5.5度で、昭和60年に環境省から、名水百選に選定された。 海の上に真向ふ高き利尻富士尖れる峰に今日は雲居ず 大悟法 進 登りつつ時…

ふるさとの富士ー白山

通称「加賀富士」。標高2702mの白山はランクCの活火山で、山頂部には約15個の爆裂火口がある。白山を霊峰とする白山信仰は古くからあり、白山比�刧(ひめ)神社は日本各地の約2,700社にとっての総本社となっている。 白山の頂上に立つ午前四時出でて来る日…

クロッカス(2/2)

クロッカスの原産地は地中海沿岸から小アジアで、早春に咲き観賞用のみに栽培される。花はほとんど地上すれすれのところに咲き、黄色・白・薄紫・紅紫色・白に藤色の絞りなどがある。 むらさきの花弁つぼめてクロッカスささやかにて 春風にゆるる 北見志保子…

クロッカス(1/2)

閑話休題。 三月中旬は、菜の花以外は目立つ花がない。いつものように近所の俣野別邸庭園を歩いていたら、辛夷の花が咲き始めていた。驚いたことにその根方の地面に、クロッカスの群が白い花を開いていた。クロッカスの花をまともに見たのは初めてなので、感…

ふるさとの富士ー鳥海山

通称「出羽富士」「秋田富士」。山形県と秋田県に跨がる標高2,236mの活火山。日本百名山のひとつで、鳥海国定公園に属する。昭和49年3月に噴煙をあげたため全山入山禁止となった。 遊ぶ時いたりにけらしみちのくの鳥海山に雪のふるころ 島木赤彦 しづかなる…

ふるさとの富士ー岩手山

通称「南部富士」。奥羽山脈北部にあり二つの外輪山からなる標高2,038mの成層火山。岩手県の最高峰で日本百名山のひとつ。1998年に火山活動が活発化し、気象庁が臨時火山情報を出した。 思へともいはての山に年をへてくちやはてなん谷の うもれ木 左京大夫顕…

ふるさとの富士ー蓼科山

通称「諏訪富士」。八ヶ岳連峰の北端に位置する標高2,531mの火山。日本百名山のひとつで、八ヶ岳中信高原国定公園に含まれる。さまざまの興味ある伝承があるが、ここでは省略する。 草枯丘いくつも越えて来つれども蓼科山はなほ丘の 上にあり 島木赤彦 蓼科…

ふるさとの富士ー妙高山

通称「越後富士」。北信五岳のの中の最高峰で標高2,454mの成層火山。 山頂部は北峰と南峰に分かれている。妙高戸隠連山国立公園に属していて日本百名山の一つ。 雪見酒酌まんか亡父(ちち)よ妙高に吹雪(ちーぷー) 吹くと便り届きぬ 山本かね子

ふるさとの富士ー磐梯山

通称「会津富士」。標高1819mの火山で、現在も沼ノ平火口内と1888年の火口壁と数か所で小規模な噴気活動は継続している。 会津嶺(あひづね)の国をさ遠み逢はなはば偲(しの)ひに せもと紐結ばさね 万葉集・陸奥国の歌 削がれたる妻の片乳 磐梯の山に重ねて去…

ふるさとの富士ー男体山

NHKテレビ番組で、各地にある富士山に似た山の特集を見た。とり上げられた山々は、富士山と同様全て火山である。富士山は万葉集を初め古典和歌集に数多く詠まれているが、「ふるさとの富士」はどの程度詠まれているか調べてみた。本家の富士山に比べると大変…

みごとな覚悟の老年

俳句結社「古志」の同人・木村泉洋さんの句集『泉』が、青磁社から刊行された。読んでみて俳句の一つのあり方を考えさせられた。 この句集の作品には、特段の目新しい技法はない。凝った工夫も感じられない。珍しい経験を踏まえているわけでもない。だが、句…

蟾蜍(ひきがえる)(3/3)

蝦蟇(がま)の油という傷薬がある。江戸時代に用いられていたワセリンなどを成分とする軟膏である。筑波山の名物になったが、それには歴史的由来がある。大坂の陣に徳川方として従軍した筑波山・中禅寺の住職・光誉上人が持っていた陣中薬の効果が評判になっ…

蟾蜍(ひきがえる)(2/3)

日本に棲むヒキガエルには、アジアヒキガエル、ニホンヒキガエル、ナガレヒキガエルと外来種のオオヒキガエルの1属4種があるという。世界的に見れば、50属約590種というから驚く。 今年も啓蟄になった。蛇や蛙が地上に現れる。 谷ぐくを久しく聞かず雨ふかき…

蟾蜍(ひきがえる)(1/3)

蝦蟇(がま)、蟇(ひき)などとも言うが、古名は谷蟇(たにぐく)(谷蟆とも表記)であった。ちなみに漢名は蟾蜍(せんじょ)。両生類ヒキガエル科。蛙の仲で一番大きい。動作が鈍いので道路で車に轢き殺された姿をたまに見かける。蚊、みみず、沢蟹などを捕食する…

駒鳥

ヒタキ科の鳥で、日本の特産種。夏、亜高山帯の笹などの下生えの多い林で繁殖し、冬は中国南部に渡って越冬する。昆虫類を食べる。鳴き声が馬の嘶きに似ているので、この名がついた。鶯、大瑠璃とともに古来三鳴鳥のひとつであった。 駒鳥のこゑきこゆ、誰が…

アカゲラ

キツツキ科の鳥で、本州以北の山地の落葉広葉樹林に棲む留鳥。樹皮の割れ目にひそむ昆虫や幼虫を食べ、秋冬には木の実をついばむ。木の幹に穴を掘って巣を作る。 助走より脱出できぬ一生(ひとよ)とも杼(ひ)の形な し赤啄木(げら)が飛ぶ 内田紀満 赤げらの尾…

アオゲラ

キツツキ目キツツキ科アオゲラ属に分類される鳥で日本固有種。平地から山地にかけての森林に棲む。雑食性で昆虫や果実を食べる。「ピョー ピョー ピョー ピョー」と大きな声で鳴く。 キツツキの仲間は、「○○ゲラ」という和名になっているが、お寺などの古い…

ミソサザイ

燕雀目の小鳥で、古名は巧婦鳥(たくみどり)。山地の谷川沿いの藪、苔むす岩の暗い林で繁殖し、冬に山麓に下りる。日本で最小の留鳥(全長11cm)。昆虫類を食べる。 みそさざい来しとし見えて影もなし凍りあがりて 久しき庭土 島木赤彦 葉は落ちてこずゑさ…

探梅―幕山

幕山のふもとに湯河原梅林がある。天気予報とwebの開花情報を見比べながら、尋ねる時期を見計らっていた。探梅の客はみんなが同じことを考えるらしく、湯河原駅で乗る幕山公園行きのバスは満杯であった。「梅の宴」の期間中なので入場料は200円。 幕山に…

ハリネズミ

食虫目ハリネズミ科。欧州、中国、朝鮮に分布するが、日本には野生のものはいない。夜行性で草の嶺、果実、昆虫ミミズ、蛇などを食べる。敵に出逢うと毬栗のように丸まって身を守る。 針鼠とく奔りけり人の世の鬼才といふは さびしかりけり 前 登志夫