2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧
あたらしきよろこびのごと光さし根方あかるし冬の林は 上田三四二 正確に何かを掴みひきしまる拳殖(こぶしふ)えゆき冬に入る視野 岡井 隆 冬のゆくゆふべ茜の雲吹きあげ街歩む人に悲しみもなし 鹿児島寿蔵 木鋏を鳴らして冬の枝を断つ芽ぐめる枝も容赦なく断…
喨々(りやうりやう)とひとすぢの水吹きいでたり冬の日比谷の鶴(つる)のくちばし 北原白秋 街をゆき子供の傍を通る時蜜柑の香せり冬がまた来る 木下利玄 ひめうづの葉のあをあをと茂るとき荒れたる庭に冬は来むかふ 柴生田稔 嶺の雪の林のうへにかがやきてこ…
おき明かす秋のわかれの袖のつゆ霜こそむすべ冬や来ぬらむ 新古今集・藤原俊成 冬深くなりにけらしな難波江の青葉まじらぬ蘆のむらだち 新古今集・藤原成通 うちはへて冬はさばかりながき夜になほ残りける有明の月 新勅撰集・二条院讃岐 窓の外(と)に白き八…
蘆の葉に隠れて住みし津の国のこやもあらはに冬は来にけり 拾遺集・源重之 冬されば嵐の声も高砂の松につけてぞ聞くべかりける 拾遺集・大中臣能宣 はつ雪はまきの葉白くふりにけりこや小野山の冬のさびしさ 金葉集・源経信 冬くれば谷の小川の音絶て峰の嵐…
冬の語源は、「ひゆ(冷)」。日本では、新暦で12月から翌年2月までの期間を差す。 秋の田のわが刈りばかの過ぎぬれば雁が音聞ゆ冬かたまけて 万葉集・作者未詳 冬過ぎて春来るらし朝日さす春日の山に霞たなびく 万葉集・作者未詳 霜枯れの冬の柳は見る人の…
怯懦とも悔いつつ吾の日々あれば或る宵やさし涙ぐむまで 扇畑忠雄 この椅子に涙ぐみつつゐしことも老いてののちにわれは思はな 上田三四二 ほほゑみ多き少女なりしがただ一度かすかなる涙見しことありき 吉田正俊 かかる世に涙を持ちて生れしがわが過失(あや…
涙ぐむ母に訣(わか)れの言(こと)述べて出で立つ朝よ青く晴れたる 渡辺直己 幾度か逆襲せる敵をしりぞけて夜が明けゆけば涙流れぬ 渡辺直己 ゆふぐれに何を泣くこどもよ 汝が涙汝を抱ける父に溢れぬ 葛原妙子 塩甕(しほがめ)にいっぱいの塩を充たすとて溢るる…
涙、涙、つかれし脳よりまぶたへ、流るるみちのはつきりとみゆ。 土岐善麿 頬(ほ)につたふなみだのごはず一握(いちあく)の砂を示しし人を忘れず 石川啄木 べにばなのすぎなむとして土乾く庭すみにしてわが涙いづ 五味保義 わが心君に近づくこの日まづ悔の涙…
袖のうへに人の涙のこぼるるはわがなくよりも悲しかりけり 香川景樹 かの人の目より落ちなばいつはりの涙も我れは嬉しと思はむ 落合直文 野に生ふる、草にも物を、言はせばや。涙もあらむ、歌もあるらむ。 与謝野鉄幹 ふるさとを恋ふるそれよりややあつき涙…
夜もすがらちぎりしことを忘れずは恋ひむ涙の色ぞゆかしき 後拾遺集・定子皇后 こぞよりも色こそこけれ萩の花涙の雨のかかる秋には 後拾遺集・麗景殿前女御 くれなゐの濃染(こぞめ)の衣うへに着む恋の涙の色隠るやと 詞花集・藤原顕綱 五月雨の空だに澄める…
涙川おなじ身よりは流るれど恋をばけたぬものにぞありける 後拾遺集・和泉式部 涙川そでのゐぜきも朽ちはててよどむかたなき恋もするかな 金葉集・皇后宮右衛門佐 なみだがはその水上をたづぬれば世のうきめより出づるなりけり 詞花集・賢智 涙川たぎつここ…
あさみこそ袖はひづらめ涙川身さへ流るときかばたのまむ 古今集。在原業平 つれづれのながめにまさる涙川袖のみぬれて逢ふよしもなし 古今集・藤原敏行 世とともにながれてぞゆく涙川ふゆも氷らぬみなわなりけり 古今集・紀 貫之 なみだがはまくら流るるうき…
くれなゐに涙の色のなり行くを幾しほまでと君にとはばや 新古今集・道因 忍ぶるに心のひまはなけれどもなほ漏るものは涙なりけり 新古今集・藤原兼実 わが恋はしる人もなしせく床の涙もらすなつげのをまくら 新古今集・式子内親王 恋ひわぶる涙や空にくもる…
忍びねの袂は色に出でにけりこころにも似ぬわが涙かな 千載集・皇嘉門院別当 ころも手におつる涙のいろなくば露とも人にいはましものを 千載集・二条院内侍参河 つつめども枕は恋を知りぬらむ涙かからぬ夜半しなければ 千載集・源 雅通 年ふれどあはれにたえ…
つつめども袖にたまらぬしら玉は人をみぬめの涙なりけり 古今集・安倍清行 おろかなる涙ぞ袖に玉はなす我はせきあへずたきつ瀬なれば 古今集・小野小町 おとなしの河とぞ遂に流れ出づるいはで物思ふ人のなみだは 拾遺集・清原元輔 人知れず落つる涙のつもり…
「なみだ」の語源は、「なきみずだり(泣水垂)」の略「なみだ(泣水垂)」。古くは清音だったが、奈良時代には濁音化していたという。玉や露にたとえられ、古来和歌の主要な題のひとつであった。 朝日照る佐(さ)太(だ)の岡辺(をかべ)に群れ居つつわが泣く涙…
いつとなく親しむとなく寄るとなく馴れし情も忘られなくに 北原白秋 とこしへに、泣きてわかるる雨の日のいとけなき子を忘れたまふな 平野万里 忘却の彼方より湧きをりをりに悲し彼ひとり沖縄に死す 山本友一 物忘れしたるがごとくひろびろとせる思ひもて昼…
哀れさらば忘れて見ばやあやにくに我が慕へばぞ人は思はぬ 風雅集・進子内親王 忘るなよさすが契りをかはしまに隔つる年の波は越ゆとも 新続古今集・尭孝 かへらむと我がせし時にわが紐を結びし姿いつかわすれむ 田安宗武 鶯の鳴く一声にわすれけりいづこに…
身にそへるその面影も消えななむ夢なりけりと忘るばかりに 新古今集・藤原良経 わすれじの行末まではかたければ今日をかぎりの命ともがな 新古今集・儀同三司母 わすれじの言の葉いかになりにけむ頼めしくれは秋風ぞ吹く 新古今集・宣秋門院丹後 いまぞ知る…
忘るるは憂世のつねと思ふにも身をやるかたのなきぞ侘しき 千載集・紫式部 思ふをもわするる人はさもあらばあれ憂きを忍ばぬ心ともがな 千載集・源 有房 嬉しくば忘るることもありなましつらきぞ長きかたみなりける 新古今集・清原深養父 忘れじと言ひしばか…
忘るとは恨みざらなむはしたかのとかへる山の椎はもみぢず 後撰集・読人しらず 皆人の老をわするといふ菊は百年をやる花にぞありける 古今和歌六帖・読人しらず 人よりはわれこそさきに忘れなめつれなきをしも何か頼まん 古今和歌六帖・読人しらず 忘るなよ…
物事の記憶がなくなる症状である。「わすれる」の語源は、「う(失)」の音転から。「う・わ(失)―わすーわするーわすれる」と発展した。 人はよし思ひやむとも玉鬘影に見えつつ忘らえぬかも 万葉集・倭大后 庭に立つ麻手刈(あさでか)り干し布さらす東女(あ…
西行の雲の歌については、過去のこのブログ(2016年9月5日、6日)で取り上げている。ここでは、さらに詳細を調べてみたい。 出家した西行は、仏教に何を期待し、何を学んだのであろうか。和歌における精進業績は、よく語られているが、仏道での足跡はほとん…
鎌倉駅から寿福寺に向かい、墓地の裏山の道をたどって源氏山公園に入った。鎌倉の山々が黄や赤に染まるには、まだ少し時間を要するようだが、所々に見事な紅葉の木々が見られた。 頼朝像の前の桜並木はすでに落葉してしまっていてがっかりした。日野俊基の墓…
「古志」同人の山田洋さんの遺句集『一草』(花神社)が、奥様から送られてきた。山田洋さんとは全く面識もないので驚いた。この遺句集の行き届いた作られ方と奥様のあとがきに感動した。 奥様の書かれた在りし日の山田洋さんの俳句への取り組みに、我が身を…
神杉の直ぐなる幹に晩秋の海より反る光があそぶ 八重嶋勲 せせらぎは水の合唱か森林をいま神渡り木も紅葉せり 阿部洋子 ちちははの声を聴かんと神(み)渡(わた)りの亀裂するどき氷湖に来たり 田村三好 遣りがたきかなしみ持たば聞きに来よ日向の国の大鳴(おほ…
神の世の遠き言葉聞ゆると思はるるまで男鹿の落日 阿部正路 神持たぬわれは歩みゆく吾が上に日輪がある雲雀のこゑがある 小暮政次 青葉濃き五月みちのく若やかに能をみている神涼しけれ 馬場あき子 霧晴れて頂あをし神様はそんなに高くおいででしたか 大寺瀧…
われの神なるやもしれぬ冬の鳩を撃ちて硝煙あげつつ帰る 寺山修司 捨つるべき捨てよといふは神のこゑ生命(いのち)は二つあるものならず 木俣 修 わが神(しん)の嘆きのすゑの薄明り一(いち)瀧(ろう)落ちて羊歯を濡せり 小中英之 わがごときさへ神の意を忖度す…
いけにえに少女をもとめし古代より神は刃ものの冷たさを持つ 香川 進 酔へば喧嘩作品のほか何もなし幼き妻は神のごとしも 大野誠夫 娶りはとほき奇蹟なれども帆柱を神として若き漁夫ねむるなり 塚本邦雄 神田の一隅にゐて神をおもふ軽くはなやぎて世紀終らむ…
未だ知らぬ野みち山みちいづれにか神のめすらむ方に行かばや 片山広子 あをぞら の ひる の うつつ に あらはれて われ に こたへよ いにしへの かみ 会津八一 われはここに神はいづこにましますや星のまたたき寂しき夜なり 柳原白蓮 さびしあな神は虚空の右…