天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

身体の部分を詠むー骨(4/4)

骨くらいせめて綺麗にしておかむ今日は為朝百合がひらきぬ 石田比呂志 *上句は情景がわからないので不気味。 音たてて頸骨まはすそのかみの恐竜たちが風きくさまに 井辻朱美 おそらくはつひに視ざらむみづからの骨ありて「涙骨(オス・ラクリマーレ)」 塚本…

身体の部分を詠むー骨(3/4)

長雨によみがえるいかりいんぱあるのくさむら中の骨の集積 加藤克己 *いんぱある: インパール作戦が実行された土地。1944年(昭和19年)3月に[帝国陸軍により開始、7月初旬まで継続された。作戦に参加したほとんどの日本兵が死亡した。 耐へ難くひびき来る…

身体の部分を詠むー骨(2/4)

唯一なるねがひにみ骨わかち埋む信濃の村の親のおくつき 窪田章一郎 *おくつき: 奥津城と書き、神道のお墓を意味する。仏教では「○○家之墓」と書くが、神道では「○○家奥津城」「○○家奥都城」と書かれる。 頭(かうべ)無きみ骨を持ちてかへり来ぬ君が妻子に…

身体の部分を詠むー骨(1/4)

骨とは、脊椎動物において骨格を構成する、リン酸カルシウムやコラーゲンなどに富んだ硬い組織のこと。骨には、「人がら」「気質」の意味もあり、また芸道の神髄・要領などを意味することもある。 人の骨を詠んだ作品には、身に染みるものが多い。 ほねより…

身体の部分を詠むー爪(2/2)

わが切りし二十の爪がしんしんとピースの罐に冷えてゆくらし 寺山修司 *二十の爪とは、両手足の爪。 九箇月ぶりの退院のわがよそほひは燈のもとに爪切りしのみ 五味保義 ふかづめの手をポケットにづんといれ みづのしたたるやうなゆふぐれ 村木道彦 *「づ…

身体の部分を詠むー爪(1/2)

爪は、表皮の角質が変化・硬化して出来た皮膚の付属物だが、指先を保護して おり、動物にとって重要なもの。爪に関連することわざ・慣用句が多い。 爪に火を灯す、(能ある鷹は)爪を隠す、爪を研ぐ 等々。 それもいさ爪に藍しむ物張りのしばしとりおくたす…

身体の部分を詠むー舌(2/2)

巴旦杏を食(は)みたる舌のくれないのひと恋しさは術(すべ)なかりしを 佐伯裕子 *巴旦杏: スモモの一品種。実は大形で先がとがる。 鉛の毒に舌もつれおりて戦後を基地の塗装工たりしと聞けり 永塚恒夫 夜のたたみ月明りして二人子はほのじろき舌見せ合ひ遊…

身体の部分を詠むー舌(1/2)

舌(した)は俗語でベロとも呼ぶが、動物の口の中にある器官で、食物を飲み込む時、言葉をしゃべる時などに使われる。舌は喋ることの象徴であり、「二枚舌」、「舌が回る」などの表現がある。 猫の舌のうすらに紅(あか)き手ざはりのこの悲しさを知りそめにけり…

身体の部分を詠むー歯(3/3)

桃よりも梨の歯ざはり愛するを時代は桃にちかき歯ざはり 荻原裕幸 わが朽ち歯治しくれたる老医いふ来りてなほもわれを頼めと 北沢郁子 なきがらの歯の美しと悲しみしことありしかど誰が歯なりけむ 竹山 広 *長崎で原爆死した人たちを見た時の思い出であろう…

身体の部分を詠むー歯(2/3)

苗代の泥濘の中にひと日ゐて日の沈むころ虫歯が痛む 板宮清治 白き糸 糸切歯に糸きる姉のうつむくは首討つにたやすきすがた 水城春房 *糸切歯: 糸をかみ切るのに用いるところからきている。犬歯とも言う。 抜けし歯をつぐなふこともなき月日ものぐさはまた…

身体の部分を詠むー歯(1/3)

歯は多くの高等動物が持つ咀嚼するための器官で、生命維持には欠かせない。 歯の状態によって我々は、人生の進み具合に思いをはせる。また幼子のかわいさが歯に象徴されることもある。 うつせみの生(いき)のまにまにおとろへし歯を抜きしかば吾はさびしゑ 斎…

短歌における表記の効用(8/8)

◆漢字の成り立ち・分解 右左(みぎひだり)対象文字の例として木口小平は記憶せらるべし 『日々の思い出』 「讒(ざん)」の字の二十四掻画を数へつつ白紙のうへに書くことのなし 『草の庭』 月見草見むとひとりの言ひたれば笛吹く川の川原に出でつ 『静物』 *…

短歌における表記の効用(7/8)

◆漢字の読み・ふりがな 3/3 *この表記の効果は、やはり読者の注目を集めるところにある。一瞬、そこで立ち止まり、背景を探ろうとする。納得すると感心し、勉強になった気分になる。 覿面(てきめん)にまたたび効(き)いてころがれる猫のひとみは気泡のごとし…

短歌における表記の効用(6/8)

◆漢字の読み・ふりがな 2/3 什麼生(そもさん)といふが如くに青蛙芋の葉に居るゆふまぐれどき 『静物』 伸びあがりバケツのなかに没したり渠(かれ)のあたまの小さくもあるか *渠(かれ)=この歌では、指示代名詞。それ、かれ(第三人称の代名詞)。 だらしな…

短歌における表記の効用(5/8)

◆漢字の読み・ふりがな 1/3 くらぐらと赤(せき)大輪の花火散り忘れむことをつよく忘れよ 『バルサの翼』 四月みなけぶれる花冠われら生きわれらまづしき棲家(いへ)かへてゆく しのび入るはじめの夏の夜に献(おく)るどの髪切蟲(かみきり)もピンに刺されて 植…

短歌における表記の効用(4/8)

◆ひらがな、カタカナ 4/4 今までの例で見てきたように、通常散文では漢字表記する言葉をひらがなやカタカナにすろと読者の注目を集める。あらためてその言葉の原義まで考えてしまう。そこが作者の狙いのひとつである。作品に奥ゆかしさと謎を付加する効果が…

短歌における表記の効用(3/8)

◆ひらがな、カタカナ 3/4 部分義歯の装填をしてわがからだ冬晴れの中をあゆまむとする 『梨の花』 久しぶりにぱちんこすれどわづかなる高揚もすでになくなりてをり 処方箋もらひて帰るみちのべに枝垂れざくらはさそふがごとし 春宵一刻値千金のいまなれど消…

短歌における表記の効用(2/8)

◆ひらがな、カタカナ 2/4 通常、散文では漢字表記する言葉がひらがなで出てくると、読者は一瞬立ち止まり、言葉を理解するために漢字をあてはめようとする。軽い謎解きの過程が入ってくるのである。 うつぶせにをりあをだたみいまははや遠いところにある土ふ…

短歌における表記の効用(1/8)

小池光の短歌―ユーモア のところで指摘したことだが、小池光の短歌を読んでいてすぐに気づくのは、表記である。近現代の短歌で彼ほど表記に工夫をこらした歌人は稀ではないか。 短歌は耳で聞いて楽しむだけでは不十分であり、文字の配列や表記を視覚で楽しむ…

Shohei Ohtani(13)

大谷翔平が2021年7月12日(日本時間13日)、ロッキーズの本拠地、クアーズ・フィールドで行われたホームランダービーに出場。1回戦で対戦したナショナルズのソトに延長戦の末、敗れた。翌日は、リアル二刀流でオールスターゲームに出た。 MLBの…