天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

2022-04-01から1ヶ月間の記事一覧

わが句集からー秋(1/11)

平成四年 「獅子頭」 初物の梨むく皮の長からず 骨董の競りの声飛び蓮の実飛ぶ 指さすを見れば瓢箪青きかな 虫すだく夜道の二人言葉なし 病室のベッドかたづき冷まじき 平成五年 「原生林」 稲の波いにしへよりのうねりかな 谷おほふ葡萄畑の夕陽かな 秋深し…

わが句集からー夏(14/14)

平成三十年 「円位堂」 近況のメモ添へてある新茶かな 見るほどに蕾ふくらむアマリリス いただきし新茶に今日を始めんと バスを待つ人影いくつ木下闇 梅雨明けの前触れなるかつむじ風 バス待つや右手にメロンぶら下げて 青天の西につらなる雲の峰 うな重をう…

わが句集からー夏(13/ 14)

平成二十六年 「団栗」 若葉してくぬぎ根を張る岩畳 本堂に足投げ出して涼みけり 子と並びザリガニを釣る日傘かな 紫陽花や孔雀啼く声恐ろしき 梅雨晴れの入江をめぐるカヌーかな 炎帝がからから笑ふ力石 汗ぬぐふ伏見稲荷の一の峯 龍の吐く水に両腕冷しけり…

わが句集からー夏(12/ 14)

平成二十三年 「彼岸花」 朝顔や藤村旧居の門を入る 魚跳ねて川面裂きたり炎天下 夏逝くや帆綱帆柱鳴りやまず 二歳児のことば愉快や鯉のぼり 東海のまほろばに満つ新樹光 夕陽没る山の滝口赤く染め 潮騒やビーチバレーの夏来る うかびきて鯉が口開く杜若 バ…

わが句集からー夏(11/ 14)

平成二十一年 「花芒」 山頂の神の依代楠若葉 薄闇の子恋の森のほととぎす 実桜を踏みて無残や極楽寺 新緑を杖つきのぼる塔ノ沢 草に寝て空に吸はるる五月かな 青田中東武鉄道日光線 足柄の水田吹く風花あふひ 列なしてうちは太鼓や月見草 参道に道をしへ出…

わが句集からー夏(10/14 )

平成十九年 「日の斑」 石垣は野面積みとふ著莪の花 葦切の声にいらだつ雀かな 石仏はさとりすますや著莪の花 黒猫がくるとささやく立葵 砂浜の足を引き込む青葉潮 道の辺に猪の皮干す栗の花 佇めば直ぐに啼き止む行々子 仏焔の白きはまれり水芭蕉 河骨に身…

わが句集からー夏(9/ 14)

平成十八年 「滝口」 若葉萌ゆ地酒も売れる陶器市 合格のお礼の絵馬や梅若葉 早苗田の夕日がまぶし関ヶ原 宮ヶ瀬の吊橋あふぐ鯉のぼり 汗ばむやビルの谷間の本能寺 薔薇香るガールスカウト銅像に ハマナスに白き花あり走り梅雨 鎌倉の海毛羽立(けばだ)つや青…

わが句集からー夏(8/14 )

平成十六年 「雪螢」 目白来て寒緋桜にぶら下がる 英文の絵馬も掛かれり楠若葉 草なびく十国峠青嵐 護摩行の声に抗ふ青嵐 わたつみの水面傾く青嵐 竹の子の皮の脂や谷戸の風 桐の花かなたに青き武道館 もじやもじやとなんじやもんじやの花盛り 谷戸若葉僧一…

わが句集からー夏(7/ 14)

平成十五年 「古城趾」 白雲の影に明るむ植田かな 山門に寝て待つ果報蟻地獄 新緑の木々がざわめく歓喜天 身投げせし采女想へり夏の月 薬師寺の朝うるはしき五月かな 若僧が病葉を掃く御影堂 牛蛙鑑真和上をなつかしむ 風孕むほたる袋や蜂が出づ 池の面の空…

わが句集からー夏(6/ 14)

平成十三年 「静粛に」 江ノ電や花火の海へ切符買ふ 蔓薔薇の咲きのぼり立つ炎かな 螢の光の川となりにけり 托鉢の僧が手を振る若葉かな 真珠島五月の波のいそなげき 結界の竹垣あをし著莪の花 味醂干の鰯肴に冷酒酌む 鯉幟自転車置き場に尾を垂らす よしき…

わが句集からー夏(5/ 14)

平成十一年 「沢桔梗」 孔雀啼き七面鳥の和せり夏 薬師寺の塔千年の雲雀かな 雀来て鸚鵡と話す立夏かな 初夏の風摩文仁の丘を徘徊(たもとほ)る 読みとれる文字なき石碑青嵐 泡盛に焼霜造り初鰹 ほのかなる日焼や乳首そむき合ふ エリザベス・サンダース・ホー…

わが句集からー夏(4/14)

平成九年 「ゴンドラ」 新緑に白き花嫁出で立てり サッフォーといふ石楠花の悪女めく 沼津港船出待ちゐる昼寝かな 筍が出でしと騒ぐ垣根かな 代掻くや壬生(みぶ)田楽の飾り牛 くるたびに藪蚊に刺され鴫立庵 水玉を遊ばす蓮の浮葉かな 葉はエツに生れ変はると…

わが句集からー夏(3/14 )

平成七年 「機関車」 蝸牛ディズニーランドの灯を背負ひ 妻ときて薮蚊にくはる沢の音 木下闇祠もらひし道祖神 ブラームスの生家真白し風薫る 寝たきりの床の母にも更衣 万緑の三四郎池の石に座す 番台の芸妓鑑札夏来る 菖蒲湯をありがたがりてのぼせけり 梅…

わが句集からー夏(2/ 14)

平成六年 「化野」 濁流の吊橋渡る日傘かな 鮎掛けてたもに引抜く早瀬かな 青鷺の抜き足差し足潮溜り 若宮の若葉の陰の野点かな 吹流はためく湖の「海賊船」 風を呼ぶビル屋上の鯉幟 仙人掌の花丑三つの居間を染む 鮑獲り磯笛鳴らぬ海女もゐて 滝壷や石に座…

わが句集からー夏(1/ 14)

平成四年 「獅子頭」 水位計赤く点滅梅雨の川 夏の木の命の音よ聴診器 週末の畑仕事の西瓜冷ゆ 舎利殿は座禅道場蝉時雨 平成五年 「原生林」 身ごもれり夏草刈れば土匂ふ 番傘の下の緋牡丹雨を聞く 吊橋や家族総出の初茶摘み 寸刻の彼岸を見しか尾瀬の虹 天…

わが句集からー春(21/21)

平成三十一年(令和元年) あらたまの元号待つやあきつ島 鉄砲宿さくら並木の東海道 銭洗ふ妻を見てをり初詣 梅まつり梯子にあるく小猿かな たらの芽をてんぷらにしてラム酒かな 春きたる大島航路の白き船 老人と老犬がくる夕桜 新元号「令和」ことほぐ花見…

わが句集からー春(20/21)

平成二十八年 菜の花や路傍に夢のあるごとく 江ノ電や七里ケ浜に風光る 鎌倉や春日をこばむ牢格子 犬猫の慰霊碑かこみ梅真白 うららかや束子供養の小天神 春雪のかがやく富士を目の当たり かたくりの花にはらばふ山路かな ひき当てし大吉むすぶ柳かな 倒壊の…

わが句集からー春(19/21)

平成二十五年 ひこばえや村社にふたつ力石 見上ぐれば花の回廊西行墳 薄氷の田の面まぶしむぬかり道 初春の庭に飛び立つ竹トンボ 白梅や老いたる幹の芯は洞 白梅の枝垂るる先に元使塚 咲き満ちて沈黙ふかき桜かな 春の日の水琴窟にあそびけり うぐひすのこゑ…

わが句集からー春(18/21)

平成二十三年 大楠の精もらひたる御慶かな 梅白くゴンドラの唄真愛しく 雉子啼いてひこばえの田を低く飛び 里山の古民家に住む享保雛 園児らをあそばす花の湘南平 一月の赤き手が割く穴子かな 初春の鮪喰らはむ三崎港 ぎんなんを炒る音高し初詣 柏槇の大きね…

わが句集からー春(17/21)

平成二十一年 たたなはる山の奥まで初御空 深き山西行庵は花の中 菜の花やマグマ秘めたる雪の富士 古民家の七草粥のかまどかな 俳句詠む虚子の声する弥生かな 梅の花十郎五郎それぞれに 黒鳥の池に枝垂るるさくらかな 花筏ねむれる鴨の胸に着く 沈丁花辻ノ薬…

わが句集からー春(16/21)

平成二十年 初春の光の海の片帆かな 突堤に添ひて高まる春の潮 うららかや葉山の沖の真帆片帆 夜桜や山を出でたるタランチュラ 初春や砥ぎ師が座る長谷の露地 風奔る空の高みに春の鳶 花水木遊行通りに正午告ぐ 発掘の手を休めたる花ふぶき 砲撃の演習聞こゆ…

わが句集からー春(15/21)

平成十九年 菜の花や潮目たひらぐ相模灘 蚤の市のぼりはためき春たちぬ あらたまの富士に白雲巻き立てり わが影の伸ぶる菜の花畑かな 菜の花や浮世はるけき不二の峰 朝戸出の淡き影ふむさくらかな 発掘の安土城跡春の雪 下曽我やここも車座梅見酒 山門の屋根…

わが句集からー春(14/21)

平成十八年 うららかや日ざしに変る海の色 天地の吹き払はれて淑気かな 菜の花や雲湧き出づる富士の峰 立春の光あふるる伊豆の海 春雨やお百度参りの碑は古りて 薄氷の下に色あり命あり 日出づる国初春の神楽かな 春一番毛羽立つ波の由比ヶ浜 節分会みな頬張…

わが句集からー春(13/21)

平成十七年 春潮の飛び石わたる和賀江かな 残雪にわが靴の跡薬師堂 きさらぎや仏手柑といふ触れてみる 山頂に胸の早鐘風光る 風光る西行戻しの松木立 丹沢の稜線春の空を裁(た)つ 筑波嶺のふもとより見る春の富士 春風や昼を眠れるアライグマ 竹筒に蝋燭点す…

わが句集からー春(12/21)

平成十六年 初弁天乗合舟に客あふれ 大楠のひもろぎ神社初明り 舞ひ終り芸妓が配る梅小枝 矢筋読み弓手定まる木瓜の花 春浅き月影ヶ谷極楽寺 金縷梅の花にぎやかに寺さみし 検校の墓いかめしや藪椿 観梅や茶釜の尻を炎(ほ)が舐むる 書初の半紙が並ぶ福禄寿 …

わが句集からー春(11/21)

平成十五年 水温む笊(ざる)新しき銭洗 新春や骨董市にあぶな絵も 伊豆の海波の白馬の御慶かな 島駈くる郵便かばん年賀状 川沿ひに歩くが日課蕗の薹 大試験校舎の時計狂ひたる 白梅にあからむ稲荷大明神 早春の帷子川(かたびらがは)を訪ねけり 方丈に禅の闇あ…

わが句集からー春(10/21)

平成十四年 人垣の箱根駅伝湖の風 年迎ふ鎌倉街道西の道 あらたまの御賦算右の手のひらに 初湯浴ぶ不況の巳我和利不動尊 獅子舞の後からおかめ踊かな 初御空振ればいななく午土鈴 静かなる宴なりけり梅の花 花つみて春の入日を送りけり 山越えて地に吹きつく…

わが句集からー春(9/21)

平成十三年 新世紀虚子の墓にも初詣 大鐘に注連飾巻く谷戸の暮 向き合はずはすかいにゐる梅の庭 初富士を離るる雲や日は西に 遊行寺の坂に背負へる破魔矢かな 四日まだ開かず市立博物館 石牛が梅の香を嗅ぐ北野かな 群泳ぐさまに連なる目刺かな ミス熱海挨拶…