天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

二月号から

 今日も雨。インターネットで注文していた本が三冊届いたので気ままに読み始めた。
小泉八雲『明治日本の面影』、塚本邦雄『君が愛せし』、塚本邦雄『源氏五十四帖題詠』。
何故こうも塚本に拘っているのか、って? この際、トータルに塚本の作歌歴・信条をたどって何か見えてくるものがあると思うから。
 今日は外出せず歌を作らなかったので、二月号に掲載された作品を以下に。


「藍生」から    もみぢ(5句)

       白菊に絹のひかりのありにけり
       白鳩のむつめるさくらもみぢかな
       池の面の落葉分けゆく背鰭かな
       焼き芋の声昼時のオフィス街
       銀杏ちつて足裏にやさし九段坂


「かりん」から   晩秋(六首)
 肩に刺すインフルエンザの注射針ちくりともせず効き目うたがふ
 のこる世をここに過ごさばやすからむ光おだしき浜名湖の秋
 ケイタイを見つつしゆくは一本のバナナ握れる猿にかも似る
 小春日の眠たき昼を虫食ひのさくら黄葉(もみぢ)が音たてて散る
 所在なき秋の夜更けをながむれば駅のホームに煙草が点る
 窓外の闇に映れるわが顔に愛想尽きたりカーテンを引く