天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

量の威力

 「短歌研究」六月号を拾い読みしていたら、量の面から偉い仕事をしている人がいることを知った。久保田淳著『藤原定家全歌集』上巻・下巻は、定家の『拾遺愚草』の「正編」「外編」「補遺編」に加えて、発見された歌を補い、合計四六0八首の全てに訳注を加えたもの。従来の研究成果を取り入れた完璧な全歌集という。
 千勝三喜男という人は、六十歳後半からの十二年間を費やして『現代短歌分類集成 20世紀うたの万華鏡』という三万首からなる二十世紀の秀歌アンソロジーを独りで編集した。鉄幹、子規に始まり吉川宏志、梅内美華子にいたる歌人三一六名の全歌集を読み、彼自身で選んだ秀歌を大・中・小の項目に分類した大著である。A5判・厚さ7cm、重さ1.85kgという。
いずれにせよ不退転の覚悟を要する仕事である。うらやましい。