天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

難解歌(1)

 和歌にせよ短歌にせよ読者泣かせは、難解歌である。特に有名歌人の作品が困る。他の評者が名歌・秀歌などと高い評価を下した作品が、こちらに理解できないと感性のなさを悲観して落ち込むことさえある。
 ここは冷静に難解になる理由を考えてみよう。読者側に原因がある場合。作品に現れる言葉の背景を知らない、文法や修辞法に不案内、読みの約束事を知らない 等である。一方、作者側に原因がある場合。言葉にきわめて特殊なあるいは個人的な背景・意味を付加している、言いさしのように省略して読者にゆだねる、意味を理解できるような文法・語法になっていない 等が考えられる。
 現代歌人では岡井隆の難解歌を取上げてみていこう。今日は例をあげるにとどめるが、次のような歌をどう鑑賞するか。


A ひらひらと林檎の皮を剥きたらす実にこのやうに筑紫のをみな
                       『禁色と好色』
B 手をだせばとりこになるぞさらば手を、近江大津のはるのあはゆき
                       『禁色と好色』
C 神聖な領域 それでしかないことが塚本さんを読みながら、来た
                       『E/T』
D 切つ先が或るおびやかしを持つのには遠い厨(くりや)の来歴がある
                       『伊太利亜