下句の収め方
万葉集や藤原定家、斉藤茂吉らの名歌を読んでいて気づくのは、短歌下句七七の成り立ちである。「3434」や「4343」などにきっちり収まっているのだ。このあたりの機微は、すでに茂吉自身が考察していたので、贅言は無用。便宜上、上句と下句に別けて二行に書いておく。
「3434」の構成
田児の浦ゆうち出でて見ればま白にぞ
ふじの高嶺に雪はふりける 赤人
駒とめて袖うちはらふかげもなし
佐野のわたりの雪の夕ぐれ 定家
ゆふされば大根の葉にふる時雨
いたく寂しく降りにけるかも 茂吉
「4343」の構成
春の園紅にほふ桃の花
下照る道に出で立つをとめ 家持
かりがねも既にわたらずあまの原
かぎりも知らに雪ふりみだる 茂吉
春の鳥な鳴きそ鳴きそあかあかと
外の面の草に日の入る夕 白秋