天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

寒雀(横浜東俣野の街路樹)

 街中の木陰におどろくほど多数群れてかしましく鳴いている情景をよく見かける。
 ハタオリドリ科の鳥。人家付近に四季を通じて見られる留鳥である。『枕草子』には雀の子が出てくるが、万葉集にも新古今集にも出てこない。和歌に初めて詠まれたのは何時のことであろう。北原白秋は、詩歌に好んで雀を詠んだ。歌集に『雀の卵』がある。
俳句では稲雀、寒雀、ふくら雀などが出てくる。寒雀は薬用になると言われてきた。山崎方代の歌はそのことを思わせる。


      菜畠に花見皃(がほ)なる雀哉    芭蕉
      寒雀身を細うして闘へり     前田普羅
      ネクタイの黒が集ひぬ寒雀    鈴木鷹夫


  飛びあがり宙にためらふ雀の子羽たたきて見をりその揺るる枝を
                      北原白秋
  寒雀丸焼にしてぎしぎしと頭も骨もかみしめておる
                      山崎方代
  銃眼の中の一羽の雀かな溌剌として天を呼びおり
                      佐佐木幸綱