天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

うさぎ

吾妻山にて

 毛を採るにはアンゴラ種、毛皮を取るにはチンチラ種、肉用にペルシアン種、愛玩用にはイングリッシュ種、ヒマラヤン種 など種類が豊富である。日本の白色兎は、毛皮・肉用になるという。万葉集には、「をさぎ」として次の一首が載っている。なんとも不思議な状況の歌であるが。


  等夜の野に兎狙はりをさをさも寝なへ児ゆゑに母に嘖はえ
  (とやののにをさぎねらはりをさをさもいなへこゆゑにはは
   にころはえ
  *等夜の野に兎を狙ったことだ。おさおさも寝ない子のくせに
   母親に叱られて。(中西進万葉集』の訳による)

 現代短歌には、なかなか佳い作品がある。

  朝々に霜にうたるる水芥子となりの兎と土屋とが食ふ
                      土屋文明
  白きうさぎ雪の山より出でて来て殺されたれば眼を開き居り
                      斉藤 史
  採血の終りしウサギが量感のほのぼのとして窓辺にありし
                      永田和宏
  ほのぼのとうさぎのみみの立ちをればくれなゐさせる耳の穴あはれ
                      小池 光


  耳立てて鼻先濡らす黒き兎 白き兎は耳伏せて寝る