天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

花大根

諸葛菜(瑞泉寺にて)

 今頃、野辺路を歩くと、紫色の草花が群れて咲いているのに出会う。花大根である。諸葛菜、紫花菜、大アラセイトウなどとも。以前にも書いたが、初めてこの花の名前を知ったのは、鎌倉・瑞泉寺の庭にいっぱい咲いていたので、受付の人に尋ねた時であった。この花を遊行寺坂でみかけたので、今年もわざわざ瑞泉寺に出かけて、右の写真を撮ってきた。別にどこで撮ろうと変わりはないのだが。


  この春の花大根は株ふえて庭一面はそれのむらさき
                   宮 柊二
  洗剤の泡がおし寄せてくる岸に花だいこんの紫並ぶ
                   久保田登

 若宮大路の段葛の桜は早散り始め、葉桜もすこし目立ってきた。


       永福寺旧蹟を掘る花ふぶき
       発掘の手を休めたる花ふぶき
       つつじ咲く荏柄天神絵筆塚


  去年(こぞ)に見し花大根は今年また石灯籠のそばに咲きたり
  気ぜはしき羽音はすれど蜜蜂の姿は見えず花大根に
  気味悪き植物と言ふ人もゐて葉の無きままの三椏の花
  丈高きつつじの花の咲き出でて桜のちりし後のくれなゐ
  あらためて発掘すらし茅刈りて土掘り起こす永福寺跡   
  天神のさくら枝垂れて咲きにけり菅公一千年記念碑に
  うぐひすの声たからかになめらかに桜花ちる鎌倉の谷戸
  板塀の古りて傾く川喜多邸庭の桜の今花ざかり


4月13日から20日まで鎌倉春まつりが開催され、流鏑馬や静の舞が見られる。