天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ドクダミ

江ノ島にて

 毒を矯めるというところから、この名がついたという。また十の薬の効能があるので、十薬ともいう。ドクダミ科の多年草。本州以南に分布する。十字に開いた四枚の白い総苞片が目立つが花ではない。その中にある穂に見えるものが花である。だが、多くの人はこの白い部分を花と見ている。
      どくだみや真昼の闇に白十字   川端茅舎
      十薬を抜きすてし香につきあたる 中村汀女

 どちらの句もこの植物の本性を詠んでいる。類句が山とできるので要注意。


  どくだみの花のにほひを思ふとき青みて迫る君がまなざし
                      北原白秋
  てのひらの傷いたみつつ裏切りの季節にひらく十字科の花
                      塚本邦雄

 これら二首、それぞれ白秋と塚本の作風をよく表している。


  軒先にさはぐ雀を見上げては白猫はまたまどろみに入る
  江ノ島に棲みて幾年孕みたる猫が分け入る雨後の草むら
  注連縄の公孫樹ふた本両脇に鳥居の奥の児玉神社は
  石段をのぼりてゆけば金文字の「児玉神社」の額縁まぶし
  爾霊山高地の礫を持ち帰り児玉神社の境内に置く
  色うすき沢蟹這へる石段を観光客の足が越えゆく