天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雲の峰

大磯湘南平にて

 俳句では、夏の季語。傍題に入道雲、積乱雲、雷雲があるので分かりやすい。
 
      雲の峰いくつ崩れて月の山   芭蕉
      雲の峰風なき海を渡りけり   夏目漱石


芭蕉の句は、「奥の細道」月山での詠。漱石の句は、英国留学途上の詠。
今年の雲の峰の写真をとるべく、大磯の湘南平に登った。垂直にもりもり立ち上がって輝く白雲ではなかったが、その下では大雨や雷をもたらすに十分な大きさであった。現に、帰宅してオリンピック放映を見ている時に、群馬県や千葉県の大雨洪水警報がテロップで何回も流れた。


      木下闇人の屍を横たへし
      雲の峰色鉛筆をならべたり
      大山をくみ敷き立てり雲の峰
      打ち水の庭をしたふや黒揚羽
      油蝉歌碑にとりつき鳴きはじむ


  かなかなの死骸かかれる蜘蛛の囲が風にゆれたり揚谷寺谷戸
  鳥の糞けものの糞にむらがれる蠅の羽音の揚谷寺谷戸
  白波のサザンビーチの奥に見ゆもやにかげらふ江ノ島の影
  無防備に羽根ひろげたり木漏れ日のカメラの前の大黒揚羽
  鳴り出づる午(ひる)のチャイムに和して鳴く鴉は暑き電柱の先
  打ち水の鴫立庵の庭砂に黒揚羽二頭きたりはばたく
  デパートのドア開くたびに冷房の風吹ききたる夏のバス停