天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

藤袴

鎌倉・円覚寺にて

 キク科の多年草秋の七草のひとつ。全体に芳香がある。乾かすとさらによい香がする。漢名は、蘭草、香草、香水蘭など。わが国には、古く薬用として伝来した帰化植物と考えられているが、万葉集では山上憶良秋の七草を詠んだ歌に現れているように、その頃には定着していた。
 次にあげる古今集の歌では、「藤袴」から連想する着物に焦点をおいた詠い方にしている。実際に持つ芳香が着物やその主の匂いとして扱われている。掛詞を駆使した古今集の特徴的な技巧である。


  やどりせし人のかたみか藤ばかま忘られがたき香に匂ひつつ
                   古今集紀貫之
  ぬししらぬ香こそ匂へれ秋の野にたがぬぎかけし藤袴ぞも
                   古今集・素性
  秋かぜにほころびぬらし藤袴つづりさせてふきりぎりす鳴く
                   古今集在原棟梁