天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

荒磯

二宮町・梅沢海岸

 梅沢海岸にぼんやり時をすごして、吾妻山に登った。この海岸は、海神の怒りを鎮る
ため、浦賀水道の走水に投身した弟橘媛の袖や笄(こうがい)が流れ着いたと伝えるところである。この笄が吾妻神社に祭られた。山頂には、はや葉の花が満開であった。ここは日本でもっとも早く菜の花が咲く場所という。斜面には水仙の花も咲いていた。


      廃屋の庭に今年も木守柿
      菜の花も水仙も咲く師走かな
      煤払小学生が窓に立つ    
      山頂にあはれ躑躅の返り花


  ゆたかなる空をつくりし黄葉のちり果てにけり銀杏の古木
  黒潮の浪と見まがふ釣舟の四、五艘が浮く二宮の海
  みどりなすうしほ寄せきて黒ずめり砂巻き上ぐる荒磯の波
  ときをりにもつれて何をあらそへる鳶が二羽舞ふ荒磯の空
  時すぎて鳶去りにけり荒磯にはしり寄せくる波音ばかり
  うち寄する波の白さを映せるか荒磯の空をとぶユリカモメ
  橋桁に棲みつき数を増やしたる鳩うとましき荒磯の朝
  昨夜吹きし風の強さを思ひけり参道にちる青葉の梢
  賀陽宮(かやのみや)お手植の松」とふ碑(いしぶみ)の
  たたづむあたり松なかりけり


  潮風にさそはれて咲く菜の花の師走穏しき山の頂
  あらたまの年を迎へむ山頂の若き榎も枯葉落せり
  海抜136.2米吾妻山には師走菜の花
  たたなづく丹沢の峰かがやきて師走下界の不況を知らず
  あたらしきベンチあつらへあらたまの年を迎へむ山の頂
  朽ちなむとする桜木の幹に生ふ白き茸の悪の形相