天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

金沢文庫

称名寺のそり橋

 神奈川県立金沢文庫は、鎌倉幕府中期の武将・北条実時が建設したわが国最初の私設図書館である。鎌倉を中心に金沢家に必要な典籍や記録文書を集め、収集した和漢の書を保管する書庫を金沢郷に創設したのが始まりという。ちなみに現在、小さな閲覧室があり、古典文学の書籍が揃っている。が、あまり長居はできそうにないくらい狭い。
 金沢文庫と隧道を隔てた称名寺境内の浄土式庭園・阿字ケ池にかかる平橋と反橋(そりはし)の改修が、平成19年度から2か年にわたりすすめられていたが、このほど完成し四月四日に渡り初めが行われた。一週間ばかりして訪ねてみた。桜はすでに散り始めていた。


      うぐひすや朱の反橋のあたらしく
      花筏ねむれる鴨の胸に着く   
      たんぽぽの花がはげます山路かな


  隧道をくぐれば見え来池の面に花ちりかかる朱の反橋
  集まりて絨毯なせる花筏池の排水口を隠せり
  草萌ゆる伽藍の跡のさくら木の木蔭に憩ふ空白の時
  たんぽぽの花咲く谷戸に蜜蜂の羽音せはしく春たけにけり
  休みつつ山路のぼればたんぽぽやすみれの花が朝の日を受く
  裏山に実時公の墓地ありて改修なりし朱の反橋
  実時の宝筐印塔下にみて小鳥さへづる若葉の梢
  うぐひすの声をたどりて仰ぎ見る顔にさくらの
  散るはかなしき


  さくら散る山路下れば登りくる女の胸のまぶしかりけり