天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

梅雨明けて

大雄山にて

 大雄山の大杉木立は、梅雨明けの空の下、清々しい大気に包まれていた。最乗寺に行くと方丈の座敷に坐り柱に背をあずけて、しばし瞑想、山の息吹に耳をすますのを常とする。
 なお、最乗寺には小田原駅から大雄山線に乗り終点下車、そこからバスで道了尊まで行き、杉木立の参道を少し歩けばよい。


      参道に道をしへ出づ大雄山
      講の碑のあまた古りたり木下闇
      滝音にうすく口開く木魚かな
      涼しさは大雄山の息吹とも
      方丈に独り坐るや滝の風
      絵筆とる大雄山の夏木立
      せせらぎの谷川に降る蝉の声
      山百合の咲き爛れたる受精かな
      梅雨明や白バイ二台駆けきたる

            
  方丈の太き柱に背をあづけ畳に坐る夏 大雄山
  岩走る水音高き方丈の畳に坐して如来に向ふ
  方丈の畳座敷にふく風は大雄山の息吹なりけり
  この山の抱ける水のゆたかさを滝音に知る方丈の内
  紫陽花の色のあせたる参道に夏ふかみゆく大杉の森
  山百合の紅き雄蕊が風に揺れ雌蕊の先を紅く染めたり