天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鈴虫

多摩動物園にて

 コオロギ科の昆虫。リーンリーンと鳴く。シーズンの終りには共食いするというから恐ろしい。



      鈴虫のいつか遠のく眠りかな
                阿部みどり女
      一病のあとや鈴虫野へ返す
                井上 雪

  秋風にこゑよわりゆく鈴虫のつひにはいかが
  ならむとすらむ     後拾遺集大江匡衡
                     
  しのびかに遊女が飼へるすず虫を殺してひとり
  かへる朝明け           若山牧水       
                       
  夏はさびしコロロホルムに痺れゆくわがこころにも
  啼ける鈴虫            北原白秋
                       
  それぞれの部屋に子は去り夜の部屋に波よするごと
  鈴虫の鳴く            田谷 鋭
                       
  鈴虫の最後の雄の喰われゆく夜頃と思えば四囲より
  気配す              中野照子