天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

初秋の湘南平

オニヤンマ(湘南平にて)

 湘南平は標高179メートルの丘陵で、山頂が平らであるところから、「千畳敷」と呼ばれていた。「湘南平」と命名されたのは戦後である。 
JR大磯駅から、旧安田邸の下の道から、楊谷寺(ようこくじ)横穴群の谷をたどり、蝉しぐれがかしましい林の中を歩いて展望台に行く。そこから反対側を下って善兵衛池に降り、藤村旧居、鴫立庵へと歩く。わが定番のルートである。


      葛の花ちりてかなしき山路かな
      生まれきて濡れたる羽根のオニヤンマ
      朝顔や藤村旧居の門を入る
      句碑伝ふ蛇が舌出す夏木立
      澤音の鴫立庵に端居せり
      
  木洩れ陽に蝉鳴きしきるいにしへの横穴墓地は土の匂ひす
  突き刺さる視線避くるか見上ぐればミンミン蝉は鳴きやみて飛ぶ
  生まれきて羽根ひろげたるオニヤンマ花咲く葛の蔓にすがれる
  青白き潮の汀つづきたり東に三浦西に小田原
  俯きて下る山路に葛の花ちりてかなしき秋ふかみかも
  長月の鴫立庵を訪れて山に拾ひし句を投げ入れつ